テラーノベル
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西独×東独
地雷の方はブラウザバック推奨!!
西ベルリンに壁を建てた。
ほんとうだ。ほんとうにやったんだ。
ひどいなんて言わないでほしい。僕の為にやったんだ。大人がみんな口をそろえて「自分の身は自分で守る」と言うように、僕だって自分の身を自分で守ったまでだ。
シュタージとか、…僕の国は残虐だなんて言う人もいるけど、僕は国民を愛してた。本当だ。ベルリンの壁を建てたのは、国民の為でもあるから。うん、嘘じゃない。
…西ドイツ、という悪魔から国民を守るための、大事な大事な壁なんだ。
西ドイツは悪魔みたいなヤツだった。
恐怖とか、非道だとか、そんな言葉で片付けられないくらいに、僕にとって恐怖の対象だった。
周りの国には笑顔を振りまいて、僕の国民を吸収して、優しいような素振りを見せて、僕には、僕だけには狂気的な目でにちゃぁと笑って舌なめずりをするんだ。僕はそんな西ドイツのすべてが僕を陥れる為の”計画通り”に見えて気持ち悪くて怖かった。
どこへ行っても、何をしていても、西ドイツは僕の全てを奪っていく。
最後にはきっと僕ごと食べてしまうつもりなのだ。
僕は震えた。
僕はあいつから逃げなければいけない。
僕はあいつから国民を守らなければならない。
僕はあいつから東欧を、東側を守らなければならない。
僕はあいつから欧州を守らなければならない。
僕はそんな錯覚をするほどに、アイツを憎悪して、アイツを恐怖していた。
「…東ドイツ。」
低く、でも落ち着いた口調でソ連はそういう。
「…なん、ですか」
僕は苦虫を嚙み潰したような顔で答えた。
「…お前は、何にそんな嫌悪しているんだ。」
僕はソビエトを内心嘲笑うように言った。
「…何を、今更。
僕が西ドイツ嫌いなのは知ったことでしょう。」
「貴方だって、西側は嫌いな筈―――」
そう言ったところで、ソビエトの顔を見上げた。
ソビエトはぎこちなく目を逸らしながら言った。
「それはそうだ。西側のことを良く思っているわけでもないし、お前の西ドイツ嫌いは重々承知している。
だが、…яが言いたいのはそれじゃない。」
僕は小首をかしげた。ソビエトは続ける。
「…яの、я達の”嫌い”とお前の”嫌い”じゃ、訳が違うって話だ。
お前は”西側”とか関係なく、もっと深く、もっと心底から彼を嫌っている感じがするんだ。」
「お前は何故そこまで西ドイツを忌み嫌っているんだ?」
僕は目を大きく見開いた。
僕は頭の中で西ドイツを思い浮かべた。
僕が西ドイツを嫌う理由?
僕は西ドイツの色々なことを思い出した。
あの真っ黒にとろけて僕だけを舐めて覆い隠すような気味の悪い目、僕の脈まで全てを聞き取っているかのように振動する彼の鼓膜、耳。僕に飢えたように唾を溜めこみ僕を噛んでは離さないような鋭い歯、口。
僕の身体から汗が噴き出てくる。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
目がぐるぐるしてどうしようもない。脳が溶ける。手がピクピクと痙攣する。口がパクパクと開閉する。
「…東ドイツ、?」
ソビエトの言葉さえ、”彼”によってすぐに消されてしまう。
彼を思い出しては、僕は彼に独占されてしまったかのように、頭が彼だけになる。
「ドイツ民主共和国!!」
ソビエトに肩をゆすられて、はっと自我を取り戻す。
「すいません、僕….。」
ソビエトは僕の目を見た後、静かに横を向いて指を指す。僕もそれにつられて、指を指した方に目を向ける。
「……は」
そこには、再会を果たし抱き合うハンガリーとオーストリアの姿があった。
「なんで、っあいつ…国境は….!?」
ハンガリーとオーストリアの国境には鉄条網が設けられていたはずだ。
「…一つ目の、窓が開けた。それだけだ」
ソビエトは静かに言った。
僕は怒りに震えた。
当時、東ドイツから西ドイツに行くのは簡単なことじゃなかった。しかし、ハンガリーの所の”鉄のカーテン”が破られたことにより、東ドイツ国民は東ドイツ→ハンガリー→オーストリア→西ドイツという道を使えるようになってしまったのだ。
…僕の、僕だけの国民が、
……また、あいつに、西ドイツに飲み込まれてしまう。
「っふざけるなっ、ハンガリーのクソ野郎ッ….!!」
僕はソビエトの方を見やった。
「…яは何もできない。
お前らの問題であろう。」
ソビエトはそう言ってどこかへ歩いて行ってしまう。
…みんな、僕を貶めるように、うごいてゆく。
(…ぜんぶ、全部、
……あいつの、西ドイツのせいだ)
西ドイツの狂気は僕だけにしかわからない。
だから、止めようがない。
(…大丈夫だ、僕には、まだ、…”壁”が。
まだ、壁があるじゃないか。)
僕は壁に閉じこもった。もうこれでしか僕を守れない、僕だけの壁。僕と僕の国民だけの、壁。
どうか、壊れないで、壁を、…僕を壊さないで。
死ぬ気で願った。
僕の絶望と恐怖は、誰にも、何にもわからないだろう。
…僕の頭に、ノイズの混じったラジオが流れる。
―――――――――――
___私の認識では、
”直ちに、遅滞なく” ということです。
―――――――――――
「…あぁ」
壁が、壊れる。
国民が、出ていく。
僕は目を閉じて、すうっと息を吸った。
胸はどっくんどっくんと意思とは反対に鼓動を早めるばかり。
僕は腕に伏せていた顔を上げて、正面を向いた。
「……あ、」
目の前には、にちゃあと不敵に笑みを浮かべた彼、…西ドイツが居た。
…東ドイツ、
…いっしょに、なろう?
なんか終盤意味わかんなくなりましたすみません。
Wikipediaさんに大変お世話になりました、脱帽。
自分の所の西東ドイツは西独→→→→→→→→→→(表せないほどのたくさんの→)東独という設定なんですよね。
自分的にこの設定相当気に入っているので他サイトで書こうか迷ってます。
最近は東ドイツとスペインポルトガルに沼りつつあります。学びたいものが多すぎてかないませんわ…🙃🙃
日々勉強に励むつもりですので皆さんもレッツ欧州史です。
一緒に沼ってくれる方募集中です。
ちなみに「直ちに、遅滞なく」の下りは自分がこの名言が好きすぎて無理やりねじ込みました。
ググれば出てくると思います。難しいですが面白いのでぜひぜひ調べてみてください。
みんなもっと戦後ヨーロッパにも触ろう。 東側諸国がテラーになさすぎる…(ノД`)・゜・。
コメント
1件
一方的な愛最高だし関係性が良過ぎます…!💕😭えんそ様の小説は唯一無二でめっちゃ好きです!💖😻知的というか、その国が大好きでとても詳しく書かれているところとか、国に対しての尊敬が感じられて凄いなぁっていつも思ってます!💖✨たまに面白い話とかもあって大好きです!✨夏休みたくさん休んで遊んでくださいね!☺️💖毎回長文申し訳ないです…!😭