テラーノベル
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訓練場に、静かな時間が流れていた。
玲は自分の右手を見つめていた。
さっきまで確かに感じていた、あの異様な感覚。
血が熱くなって、身体の奥から何かが溢れ出してくるような感覚。
「……これが、俺の力」
玲が小さく呟く。
隣では、四季が腕を組みながら玲を見ていた。
「さっきの、すげぇな」
「……全然すごくない」
「なんで?」
「自分で制御できなかった」
玲は拳を握る。
「もし誰かを傷つけてたら……」
「傷ついてねぇじゃん」
「結果論だろ」
「でも結果は結果だろ」
四季はあっさり言った。
玲は少し驚いた顔をする。
「……お前、もっと考えて喋れよ」
「考えてるって」
「絶対考えてない」
「ひでぇ!」
四季が不満そうに声を上げる。
その様子を見て、玲は少しだけ笑った。
その日の放課後。
玲は一人で訓練場に残っていた。
「……もう一回」
右手を前に出す。
意識を集中させる。
血を操る。
しかし――。
「……出ない」
何度試しても、何も起こらない。
「くそ……」
焦れば焦るほど、力は遠ざかっていく。
玲は額の汗を拭った。
「俺には、無理なのか……?」
その瞬間。
「何してんだ?」
背後から声がした。
「……四季」
「まだ残ってたのかよ」
「お前こそ」
「俺は忘れ物」
四季はそう言いながら、玲の隣まで歩いてくる。
#ちょい死ネタ
綾音
12
𝚈𝚄𝙼𝙴𝙽𝙾
158
317
アウラウラ
519
「で?」
「……力の練習」
「一人で?」
「うん」
「なんで?」
「自分で使えるようになりたいから」
四季は少し黙った。
そして玲の前に立つ。
「じゃあ、俺が付き合う」
「……いい」
「なんでだよ」
「迷惑だろ」
「別に」
「でも――」
「玲」
四季が真っ直ぐ玲を見る。
「一人でやる必要ないだろ」
その言葉に、玲は黙り込んだ。
「……分かった」
「よし!」
二人で訓練を始める。
しかし、何度やっても玲の力は安定しない。
「……っ!」
また血が暴れる。
玲の表情が苦しそうに歪む。
「玲!」
四季が近づく。
「来るな!」
「でも!」
「危ない!」
玲の血が一気に広がる。
床を這うように伸び、周囲の物を弾き飛ばす。
「玲!」
四季が玲の名前を叫ぶ。
玲にはもう、四季の声すら遠く聞こえていた。
「止まれ……!」
自分自身に言い聞かせる。
「止まれよ……!」
しかし、力は止まらない。
――怖い。
このまま自分が自分じゃなくなる。
そう思った瞬間。
四季が玲の前に立った。
「四季……!」
「玲!」
「逃げろ!」
「嫌だ!」
「危ないって言ってるだろ!」
「だから嫌だ!」
四季は一歩も退かなかった。
「お前が止まるまで、俺もここにいる!」
「……!」
「怖いなら怖いって言え!」
玲の目が揺れる。
「……怖い」
初めて口にした。
「自分の力が……怖い」
四季は黙って玲を見る。
そして、ゆっくり手を伸ばした。
「じゃあ、一緒に止めよう」
「……どうやって」
「知らねぇ!」
「……は?」
「俺だって分かんねぇよ!」
四季は笑った。
「でも、二人ならなんとかなるだろ!」
「……めちゃくちゃだな、お前」
「よく言われる!」
玲は思わず笑ってしまった。
その瞬間だった。
暴れていた血が、少しずつ玲の手元へ戻っていく。
「……止まった」
「ほら!」
四季が嬉しそうに笑う。
「やっぱできるじゃん!」
「……お前のおかげかも」
「じゃあ俺、すげぇじゃん!」
「調子乗るな」
「なんでだよ!」
いつものように言い合う二人。
けれど玲の中には、一つの変化があった。
自分の力は怖い。
まだ完全には扱えない。
それでも――。
一人で向き合う必要はない。
そう思えるようになった。
帰り道。
四季が隣を歩きながら言った。
「なぁ、玲」
「何?」
「これからも一緒に訓練しようぜ」
「……うん」
「約束な」
「ああ」
玲は前を向いた。
その横で、四季が笑っている。
昨日まで知らなかった相手。
それなのに今では――。
少しずつ、特別な存在になり始めていた。
コメント
1件
うわあああ第4話読んだよ…!!😭💕 玲くんが「怖い」って認めるシーン、マジで胸にきた…四季くんの「じゃあ一緒に止めよう」→「知らねぇ!」の流れ、不器用だけど存在がデカすぎて泣く。力が暴れてる時に一歩も引かないって最高の漢じゃない?✨ 最初は一人で抱え込もうとしてたのに「一人でやる必要ない」って気づけて、最後の帰り道の約束が尊すぎる…。2人の距離感がじわじわ縮んでるの見てるだけでエモくて胸いっぱいになりました!続きまで走り抜ける準備できてるよ!🔥