テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
173
K「あー…部活行くのやだなー」
別の部とはいえ、同じグラウンドにあの先輩がいる。 サッカー部の練習をチラチラと横目で見ながらグラウンドへ向うと、ふと見覚えのある姿に目が留まる。
K「…え…るいくん?!」
R「あ、おつかれ〜」
花壇の縁に座り、長い足を組んで、柄にもなく教科書を手にしている。
K「…何してるの?」
R「監視 」
まさか、
K「あの人の?」
R「うん」
まるで当たり前の事のように淡々と答えるるいくん。
R「あいつバラしてなかった?」
K「…うん」
緊張しながら学校に来たけど、クラスも友達もいつもと変わりなかった。
R「ふーん、口硬いのなー」
口硬いというか、るいくんの最後の脅しが怖かったんじゃ…。
R「あ、こっち見た」
るいくんの視線の先を見ると表情を無くした先輩が俺たちを見ている。
それに対してニコニコ手を振るるいくん。
その満面の笑みは俺に向けられたものじゃないのに、背筋がヒヤリとする。
R「なんか大丈夫そうだな、また来るけど」
そんなに噂が立つことが気になる?
K「…徹底、してるね…」
R「するよ………お前、そうゆうの弱そうだし」
K「え?!俺のため?!」
驚いて変な声が出てしまう。
るいくんは顔を少し赤くしたと思うとそっぽを向いてしまう。
K「ごめん…ありがと…」
気にしてくれてたんだ…。
るいくんの優しさに、どういう気持ちでいていいのか、分からなくなる。
もう俺の事は興味無いと思ってたから。
R「あ、その代わりまた勉強教えて」
K「…うん」
るいくんは結局、週末まで監視を続け…、 先輩はというと、可哀想なことにみるみる元気がなくなって、笑っていた顔もいつの間にか見なくなった。
R「ふっ、あんな元気なくなって笑える」
るいくんがしてやったという顔で立ち上がる。
そこは前と変わらず冷血だ。
K「…バイトも勉強もあるのに、ありがと」
先輩の事は可哀想だけど、もう噂が立つのを心配しなくてよさそうだ。
R「別に…。かのん、明日空いてる?」
K「あ、勉強?大丈夫だよ」
R「じゃあ、またあとで連絡する」
K「うん…」
るいくんのお家での出来事がふいに思い出される。 でも、るいくんから触れてくる事は、もう、無いと思う。安心していいはずなのに、寂しさが心に染みていく感じがした。
K「お邪魔しまーす」
階段の方に進もうとすると、 るいくんがリビングに入っていく。
何か持ってくるのかな?
立ち止まって待っていると、
R「こっち」
少し面倒くさそうに呼ばれる。
K「?」
R「上、散らかってるから」
K「…そっか」
この間来た時は綺麗に整頓されていたるいくんの部屋、散らかってる想像ができないなと思いながらリビングに入る。
ここは大きな窓と天窓から光がたっぷり入るから、気持ちが良い。小さい頃大好きだった場所。
何も変わらなくて静かに喜んでいると、るいくんがお茶を運んで来てくれる。
K「えっ?」
いつの間にかお菓子も用意してあって、似つかわしくないその様子に声が出てしまった。
R「…っ、母親が、かのん来るならお茶と菓子くらい出せってうるさいから…」
るいくんが口をとがらせながらテーブルにお茶を置いてくれる。
K「あっ、このゼリー」
見覚えのある懐かしいパッケージが目に入る。
おばちゃんのスーパーにしか売ってないゼリーだ。すでに、口の中で爽やかなぶどうの味が広がっている。
R「かのん好きだったからって…」
K「ありがと!おばちゃんにも言っておいて」
R「うん…」
るいくんは、喜ぶ俺を照れくさそうに見ながらローテーブルの前に座る。
K「今日はー?」
R「えっとー…ここ」
K「うーん…頑張ってみる…」
また苦手な所だ。るいくんと俺って苦手なもの似てるんだな…。
顎に手を当てて、教科書とにらめっこをする。
R「…あんま悩まなくても大丈夫」
K「ん?」
R「かのんさ、教えるの上手い」
るいくんが、柔らかく笑う。
懐かしい、大好きだった笑顔。
K「…あ、ありがと…///」
この頃優しくなったと思ったら、次から次へと違う一面を見せてくるから、戸惑ってしまう。
でも…元々のるいくんはこうゆう子だった。思い出して、胸がキュッとなる。
K「るいくん、分かって…る…?」
俺の解説に、 相変わらず反応がないからやっぱり不安になる。
R「ん?分かった分かった。解いてみる」
それなら、いいんだけど…。
るいくんが答えを導き出してる合間、手持ち無沙汰になる。他の事をしていればいいんだろうけど、るいくんの指や唇に視線がいってしまう。
K「…///」
火照りそうになった身体を誤魔化すように、ゼリーを食べながら待つ。でも、るいくんの、この透き通った白い手に、形の良い桜色の唇に、あのとき触れられていた事。身体の熱さと共に蘇る。 口に運んでいるゼリーの味がもう分からない。
R「…ここの公式忘れた…」
K「っ…///」
ふとこっちを見たるいくんとばっちり目が合う。
一瞬驚いたように目を丸くしたけど、それはすぐに変化する。すべてを見透かしているような、憂いを帯びた瞳。
これ以上表情を読み取られたくなくて、慌てて顔を下に向ける。
R「今、 何考えてた…? 」
るいくんの静かで低い声が頭の上で聞こえる。
そんなこと、…言えない。
K「…」
R「かのん?」
促されるように呼ばれて、逃れられないと思った俺は俯いたままそっとるいくんを見上げる。
K「何も…っ」
R「噓」
にやりと笑うと、 顎をゆっくり持ち上げられ、るいくんの唇が重なる。
K「っ…」
何でキスするの…。
疑問を抱くけど、忘れられなかった感触を与えられて、抗えない。
ッチュッ…ッ
K「ッん…ッ…」
R「…かのんの唇…甘い… 」
溜まっていた熱が一気に溢れる。
るいくんに触れたい。少し前のめりになって、膝の上に手を置く。
…クチュッ…ピチャ…ッ
るいくんの舌が口の中を味わうように動く。
堪らなく気持ち良い。頭の中がふわふわする。
K「ッぁ…ッ…」
R「…美味し…」
もっと…
こちらから体を寄せると唇が離れて、見つめ合う時間が少しできる。
そして、またこの先には進めないんだ。そう思う。
るいくんの表情に迷いを感じたから。
K「好きな子いるから…?」
考えるよりも先に言葉が出た。
好きな子という言葉に喉の奥が詰まる。
R「は?いねーよ」
K「…じゃあ、なんで…」
そう言いかけて言葉が続かない。
R「何?」
K「…」
R「ちゃんと言えって」
それでも黙ってると、るいくんが深く溜め息をつく。
R「…お前何考えてんのか、全然分かんない… 」
呆れたように言われて胸が苦しくなる。
でも、それはるいくんも一緒だよね?
我慢が続いていたせいか、苛立つ気持ちも湧き出てきて。
K「それは…それはるいくんも同じじゃんっ」
自分が思ってるよりも怒ってることを、声にして初めて気づく。
るいくんは驚いて何も言えなくなっている。
K「じゃあ言うけど、なんでキスまで?」
R「…?」
K「俺のこと、…もう…興味なくなった…? 」
自分で口にしておいて苦しくなる。
R「…違う…」
何が違うの。
るいくんはそれ以上は言わない。
ここまで言っても本心を出してくれないのが苦しい。
K「このままじゃ…つらい…」
気付いた時には、涙が出ていた。
感情的になるのが恥ずかしい、るいくんを困らせるだけなのに。
肩を震わせていると、るいくんにそっと身体を引き寄せられる。
R「…ごめん…怖かった…」
少し間があって、
R「また…かのんに酷い事しそうで…」
…やっと聞けた。
優しい、るいくんらしい理由だった。
K「…それでもいい」
身体が、早くと急かす。
R「…だめでしょ」
耳元で、笑い混じりに優しく諭される。
R「今度は間違えない」
背中に回された腕に力がこもる。
R「…ちゃんと触るから」
片頬を包んだるいくんの手、親指で肌を柔らかく撫でられる。
触れ方が前と、違う。
身体から力が抜けた。
再び近づいてくる唇に、
静かに、目を閉じた。
(おわり)
(読んでいただき、ありがとうございました🩷ここで終わるのか…という声も聞こえますが笑、個人的に、甘々?になったるいくんがどんな風にかのんを愛でるのか気になるので、また番外編にて…🙇♀🩷)
コメント
4件
あぁー!終わってしまった😭最高でした😭👏✨終わり方もめっちゃいいです‼️番外編がこんなに楽しみなこと初めてです笑 また楽しみにしてます🥰
わあああ終わったの悲しいけど終わり方最高すぎる😭❤️❤️❤️❤️❤️ だいすきです‼️‼️‼️‼️‼️‼️