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2泊3日の修学旅行、2日目の夜。
観光を終えて宿に戻り、もうすぐ就寝となる時間。
kn「疲れたな…」
br「ね〜、めっちゃ歩いた…。明日もまた歩くの〜…?」
kn「さすがに明日の方がマシだと思う」
ぶるーくや同じ部屋のメンバーと話していると部屋の明かりが消える。
kn「あぁ、もうそんな時間か…」
br「昨日もいきなり消されてビビったよね〜」
kn「宿の一括管理なんだろうね、なんか一言くらい欲しいけど」
br「それはそう…(笑)。」
br「はあ〜明日で最後だけどまた歩くし〜…はやめに寝るかあ…」
br「おやすみ〜きんさん」
kn「うん、おやすみ」
…とは言ったものの、寝付ける気配がなかった。
2日目とはいえまだ慣れない環境だから仕方ない。
しばらく寝られそうになかったので俺は窓の外を眺めることにした。
kn「(綺麗だな…)」
部屋の明かりを落とすと、街の灯りだけが目に入ってくる。
kn「(あ、あそこ観覧車が回ってる…)」
そんなことを考えながらぼんやりと眺めていた。
_1時間くらい経った頃だろうか。
隣の布団がわずかに動き、小さな声が聞こえた。
br「あれ…きんさん、まだ起きてる?」
kn「ん。……ぶるーくも?」
br「あは、なんか疲れてるのに寝れなくってさ〜…」
kn「俺もそんな感じ…」
静かに笑い合ったあと、ぶるーくが少し迷った顔で言う。
br「……ねえ、今から…」
br「屋上、行かない?」
kn「……今から?」
br「ちょっとだけ!屋上、開いてるって聞いたよ。先生たち、下のロビーに集まってるし……たぶん、バレない」
kn「……もしバレたらどうするの?」
br「そのときは一緒に謝ろう」
そう言って、ぶるーくはイタズラっぽく笑った。
br「絶対綺麗じゃない?屋上からの夜景」
br「きんさんと一緒にどうしても見たくて…」
そんなこと言われたら断れない。
それに、俺もぶるーくと夜景を見たいという気持ちがある。
kn「……じゃあ、行こっか。静かにね」
br「もちろん」
俺たちは上着を羽織り、スリッパを履いて廊下へ出た。
誰もいない夜の宿の廊下は、しんと静まり返っている。
ぶるーくが居なかったら、きっとこんなこと考えていなかっただろう。
_______________________
そのまま誰もいない廊下を通り抜け、屋上への階段を上り、金属の扉をそっと押し開けると_
冷たい風が俺たちの頬をなでて、夜の街が目の前に広がった。
br「……わあ……」
ぶるーくが息をのむように、声を漏らす。
ビルの明かりが点々と連なり、観覧車がゆっくりと光の輪を描いていた。
kn「すご……やっぱ綺麗だな…」
br「うん。窓越しよりずっときれい」
肩を並べて、無言で夜景を眺めた。
しばらくして、ぶるーくがぽつりとつぶやく。
br「……こういうとき、なに話せばいいか分かんないな」
kn「……無理に話さなくてもいいと思うよ。こうしてるだけで、十分だから」
その声に、ぶるーくが笑うのが分かった。
br「…たしかに」
そして、少しだけ距離が近づく。
br「ねえ、きんとき」
kn「ん?」
br「こういうのって、内緒の時間って感じがして……なんかいいね」
kn「そうだね。……思い出になる気がする」
br「じゃあ、覚えててくれる?」
kn「……もちろん。ちゃんとね」
風が吹いて、ぶるーくの髪が俺の肩にふれる。
ふと、ぶるーくが上着のポケットから、小さな飴玉をひとつ取り出した。
br「これ、さっき買ったお土産の中に入ってたやつ。ひとつ、あげるね」
kn「急に?…いいの?」
br「うん。きんさんと食べたかったから」
俺はそのまま受け取って、飴を口に含む。
kn「……ぶどう味だ」
br「僕の気に入った味!きんときにも共有したくて」
kn「……うん。わりと、好きかも」
そう言うと、ぶるーくがとても嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て、俺は思う。
修学旅行の夜。
きっとたくさんの班が、就寝時間を過ぎたあとも
おしゃべりをしたり、カードゲームをしたりしている。
でも、俺たちは、ふたりきりで夜景を見て、ひとつの飴をわけ合って…
言葉より静かな想いを重ねている。
この時間はきっと、誰にも見せない俺たちだけのもの。
br「……帰ろっか。あんまり長くいると、冷えちゃうし」
kn「そうだね。でも、また来年も…こういうのができたらいいな」
kn「修学旅行、来年はないけど……」
br「じゃあ、旅行しよう。ふたりで」
俺は驚いてぶるーくの顔をみた。
br「大人になっても、どこかで。ふたりだけで」
その願いが、風の音よりもまっすぐ胸に届いた気がして_
kn「……うん。約束」
そして、俺たちは再びそっと扉を開け、何事もなかったように布団へ戻った。
ただ、お互いの手が少しだけ、寝る前にそっと触れていた。
灯りのない布団の中で、俺は目を閉じながら思った。
ずっとコイツと居れたらいいな、と。