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#ベリアン・クライアン
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🐦⬛「それじゃあご主人サマ、オレは後継者の育成のために数ヶ月ファミリーのところで寝泊まりすることにするよ。時間が限られている以上、ちょっとスパルタ教育をしないといけないからね」
K「うん、分かった。私も欠片と入れ物を作らないといけないから図書館に籠ると思う。お兄ちゃん達に伝えておくね」
クロウザーは翌日の朝、身の回りのものを入れた鞄を持ってマフィアの拠点に向かった。
ケイティは兄弟にクロウザーが暫く帰らないことを伝えて図書館に入って新しい欠片の準備を始めた。
N「俺はあんまり頑張っちゃいけないけど、兄さんはめちゃくちゃ頑張らないとなんだよな?交渉をできるだけ長引かせて、処刑までの時間を稼がないといけないんだろ?」
B「まぁね。でもそれは処刑が決まってからすることだから、ある意味短期決戦だよ。僕にはノワールが執事さん達の戦いのサポートだけをしなきゃいけない方が大変かなって思うんだけど…」
N「うーん…確かにな。俺の性格上サポートには向いてないもんな…。でも、ケイトの願いを叶えるためなら何だって頑張るさ!」
B「ふふっ、頼もしい。お互い頑張ろうね」
兄弟は頷き合うとそれぞれの戦場に向かうべく準備を始めた。
執事達はトレーニングや各々の仕事、天使狩りなどの合間を縫って引っ越すための荷造りを始めていた。
しかし、荷造りのためには必要ないと思われる物を断捨離する必要がある。執事達のほとんどはちょっとずつ荷物を減らし、新生活に必要なものだけを転送してもらう家具や本棚の近くにまとめた。
ただし、例外も居る。
❤️🩹「新しい屋敷に引っ越すための準備で、持っていきたい物を鞄とかに詰めるのですね。でも欲しい物は何でも主様が用意してくださるのですよね?私は特に必要だと思うものはありません」
🪡「いや、着替えくらいは持って行ってよ!俺がせっかく手作りした服を全部置いていくつもり!?」
❤️🩹「ふむ…分かりました。着替えだけ持っていきましょう」
そう言うとラトはクローゼットから着替えを取り出してぐちゃぐちゃに鞄に詰め始める。
🪡「ああっ!シワになる!シワになるから!もうラトは何もしなくていいよ!俺が詰め直すから!」
❤️🩹「それは楽でいいですね。では、私はお散歩に行ってきます」
ラトのマイペースさと物への執着のなさは健在だった。
✝️「…おかしい。必要な物は鞄に入れているのにどうして物が部屋中に散らかってしまうんだ…」
🦋「ハウレスが勿体ないから捨てられないって言うからこうなってるんだよ?手伝ってあげるから断捨離しようね。ほら、ダンベルとか年に数回くらいしか着ない正装のローブとかはもう要らないでしょ?」
✝️「しかし…新しい屋敷にどこまでトレーニング機材が置いてあるか分からないじゃないか。それに、ローブは主様と出掛けることがあれば着るかもしれないだろう?」
🦋「主様が欲しい物は何でも用意するって言ってくださってるんだからダンベルくらいすぐ用意してくださるよ。それに重苦しいローブで出掛けたら街で浮いちゃうでしょ?要らないの。ほら、こっちに散らかってる本類と着替えもあんまり使わなかったんだから処分するよ」
✝️「くっ…勿体ない…」
ハウレスの部屋を散らかす才能はここでも遺憾なく発揮されてしまい、ほとんど準備を終えたフェネスが見かねて断捨離を手伝うことになった。
🌹「あーあ、せっかくここまで丹精込めて育てた花ともお別れっすか…」
🦾「まぁそう言うな。主様が新しい庭を用意してくれるって言ってたんだから落ち込むなよ」
🌹「ボスキさんにしては優しいっすね?でもボスキさんはちゃんと見える右目とちゃんと動く右手を贈ってもらえるんっすから、もう俺が髪の手入れをすることもしなくていいわけっすよね?荷物がかなり減って、準備は楽だったっす」
🦾「はぁ?髪を結んだりするのは自分でやるが、ケアはお前がやるんだぞ?」
🌹「何でっすか!?じゃあ全部やり直ししないといけないじゃないっすか!もう捨てちゃった残り少ないヘアオイルとかめちゃくちゃ勿体なかったっす…」
アモンはボスキのヘアケア用品はもう要らないと思って古いものは処分して、あとはボスキの荷物に入れてもらおうと思っていたのに、これからもヘアケアはアモンの仕事だと言われて慌てて荷物の詰め直しをすべく部屋に向かった。勿論その時には部屋は足の踏み場もないほどハウレスが散らかしていた。
一方ケイティは図書館でパレスの見取り図を見ながら、増設するフルーレのための裁縫部屋をどこにする?動線は?トレーニングルームに置く機材は?音楽係の演奏する楽器はどこまで用意したらいい?といったことを考えつつ、理想の屋敷の見取り図を描いていく。
K「ここは削れるよね。で、できるデッドスペースに部屋を追加して…。見張り台には洗濯物干せるように物干し竿を置くでしょ?それに物干し部屋はもっと広くして…。そしたら屋敷自体を大きくしないといけないから…コンサバトリーでカバーするか。それとラムリの秘密基地にできる屋根裏部屋を追加して…」
ケイティはロノが運んできてくれる食事を食べる間だけ休憩の時間にして、3日ほど徹夜して見取り図を完成させた。
K「ぅう…もう限界…仮眠室…。…あ、寝てるからご飯いらないって書き置きしとかなきゃ…」
ケイティは書き置きを書くと、ふらふらと仮眠室に入りベッドに倒れ込んだ。そして、布団を被る余裕もなくそのまま寝息を立て始めた。
🐦⬛「こら、ここ間違ってるだろう?こういう小さなミスが命取りになることもあるからね。時間をかけられないのは分かるけど、見落としをするのは危ない。まぁこれは慣れの問題だから今回はオレが修整しておくよ。…でも、次やったら…分かるね?」
モブ「は、はい!」
クロウザーは自分の後継者育成のため、若手で実力がある者を引き抜き、教育をしていた。
なかなかにスパルタな教育をしていたが、ミスをしても怒鳴り散らしたりせず解決策を一緒に探し、成長を促していた。そんなクロウザーだからこそ後継者候補もついていきたいと思って勉学に励んでいた。
深夜になって教育の時間が終わると、クロウザーは自室で今日の新聞を開いて情報を集め、上がってきた報告書にも目を通していた。
モブ「ボス!お疲れ様です!珈琲をお持ちしました!」
🐦⬛「あぁ、ありがとう」
クロウザーは珈琲を一口啜り、眉を寄せた。昔は普通に美味しいと思っていたのに、今では毎朝テディが豆を挽いて淹れてくれる珈琲を飲んでいたため舌が肥えて、ただの苦い液体にしか思えない。
🐦⬛「はぁ…テディの珈琲が飲みたいな。それにロノの食事も恋しい。…ふっ、完全に胃袋を掴まれてしまったな」
苦笑しながらクロウザーは居心地がよくて美味しいものを遠慮なく楽しめるパレスでの暮らしを思い出して、気づけば早く帰りたいなと呟いていた。
そろそろ引っ越しの準備が終わりそうだとか、新しい屋敷にはこんな物があったら嬉しい、などと話しながら和気あいあいと食事を摂っていたとき、けたたましいサイレンが鳴り響き、天使の襲来を知らせた。
N「武器は収納空間に入れてたよな?」
🕯️「あぁ。すぐに行けるのは地下の執事達だね。場所は?」
⚔️「馬で急げば10分ほどの集落だ」
🪡「行きましょう、ミヤジ先生!ほら、ラト、パセリ持ってきていいから行くよ!」
❤️🩹「…仕方ありません。馬に乗りながら食べます」
🪡「…え?」
🕯️「ま、まぁ…とりあえず急がなくてはいけないからね。行こうか」
バスティンは場所を知らせた後すぐに馬の準備に駆け出し、地下の執事達とノワールがすぐに出発できるようにしてくれていた。
全速力で馬を走らせ、集落に向かう。空は雲が明るく光っていて、そこから天使が降りてきているのが分かった。
N「俺はあんまり手伝えないけど、危なくなったらすぐに介入する。安心して戦ってくれ」
❤️🩹「お兄さんの手は煩わせません。天使は全部壊します」
🪡「こら、ラト!よそ見しないの!」
天使が見えた瞬間、ラトは馬の背に立ってそこから浮遊魔法で空から降ってくる天使を狩り始めた。
🪡「あ!ちょっとラト!ミヤジ先生、この馬どうしましょう…」
🕯️「とりあえず手綱を…よし、これで集落の近くに乗り捨てよう。フルーレ君、武器の用意を」
ミヤジは自分の馬の手綱を片手で掴んだまま、ラトが乗り捨てた馬の手綱を空いている手で握り、集落まで誘導した。
手綱を近くの木に引っ掛け、武器を取り出したミヤジとフルーレが地上の天使へ攻撃を開始した。
N「おいちょっと待てよ!力の解放してないって!…この距離でできるのか?【執事達の力を解放せよ】……できてるのか?」
一応魔導書が光ったので力の解放はできたと思われる。ノワールはつかず離れず戦う執事達を見守る。
しかし、指輪の力で空中戦を行なっているラトも、レイピア捌きが上達したフルーレも、獣耳を生やして長髪の姿になったミヤジも、怪我をするような素振りを見せず、むしろ余裕すら感じさせる戦いっぷりを披露していた。
N「……俺が出る幕は無いかもな」
ノワールは執事達が成長しているのを肌で感じて、微笑んだ。これなら誰も怪我をすることもなくパレスに帰れるだろう。
ノワールの思った通り天使を殲滅した3人は、額に流れる汗を拭いながら馬を停めたところまで歩いてきた。
N「お疲れ様。いい戦いだったな。フルーレ、お前かなり成長してるぞ。今までの戦い方より一段上の戦い方をしてた」
🪡「そ、そうですか?ハウレスさんのトレーニングのお陰かもしれません。あ、でも俺もレイピアで効率よく天使を狩る方法は模索してたんです。それを生かせたなら嬉しいですね」
🕯️「フルーレ君もラト君もよく頑張ったね。ラト君が上空の天使を狩ってくれたから被害も最小限にできたし、私たちが戦わなくてはいけない天使の数も少なかった。2人が居なかったらきっと危ない戦いをしなくてはいけなかったはずだよ」
N「あとはフルーレとミヤジが浮遊魔法を使いこなせるようになれば、全員で挑む最終決戦でもっと有利に戦えるようになる。帰ったら感覚を掴むために魔法の練習も少ししような。きっと2人とも器用だからすぐできるようになるさ。…俺は数年かかったけどね〜」
ノワールの冗談めいた言い方に3人は面白そうに笑ったが、その最終決戦だって近づいてきている。本当に魔法で飛べるようになるまで最終決戦は待ってくれるのだろうか?ミヤジは先程拭った汗がまた流れるのを感じながらキュッと唇を引き結んだ。
パレスに戻って残り物も添えられた食事を食べ終わると、ノワールは浮遊魔法を使いこなせなかった執事達…ハナマル、テディ、シロ、バスティン、ロノ、フルーレ、そして空中に浮かぶまでは何とか到達できてもラトのように戦闘まではできない執事達…ベリアン、ベレン、ミヤジ、ルカス、ユーハン、を庭に集めて魔法の訓練を始めると告げた。
N「浮遊魔法の肝は「バランス感覚」だ。つまり、足場が安定しない所での戦闘訓練をすれば自ずと空中戦もできるようになる。だから俺が数年籠もって訓練した欠片で特訓するぞ!そして最終決戦で誰1人欠けることなく勝利を勝ち取るんだ!神頼みなんてしない。むしろこの世界に神がいるというのなら…そいつを切り刻んで豚の餌にでもしてやる!俺達が神の人々を守る仕事を肩代わりするぞ!」
ノワールの極端すぎる宣言に動揺する執事達だったが、ノワールが欠片を光らせて執事達を飲み込み、一歩でも動けば奈落に落ちてしまうであろうしその足場も脆くて下手に動くと地面はパラパラと音を立てて奈落へ落ちていくほどの最悪な状況に放り込まれて更に動揺する。
🤍「おい、少し待て。これは命の保証はあるのか?」
N「落ちたら初期位置にリスポーンされるから死ぬことはないぞ。そこは訓練用の欠片だからな、ちゃんとどんな失敗をしても救済措置はある」
💮「こんな足場の悪いところで…どんな訓練をするんだ?」
N「目標は簡単だ。あの直線距離ならギリギリ見えるゴールがあるだろ?あそこに辿り着くこと。でも途中で足を踏み外したりタイムオーバーしたりしたら初期位置にリスポーン。ちなみにこの欠片に居る限りどこの世界にも繋がってないから時間の概念がない。つまり、どんなに長い期間訓練してもパレスのある世界の時間も他の世界も1秒も進まないんだ。訓練にはもってこいだろ?」
☔「えーっと…時間を気にしなくていいのは良いのですが、あのゴールに辿り着くには…あの小さな足場を渡って行くしかないということでしょうか?」
ユーハンの言う通り、ゴールまでには穴だらけの足場が続いており見方によれば小さな島のような足場を飛びながら進まなくてはいけない。しかも、終盤になるほど足場は減っていき、浮遊魔法を使えなくてはゴールまで行けないことは明白だった。
N「全員がゴールできるまで終わらないからな。浮遊魔法をマスターしたら使えない執事にアドバイスしてやってくれ。じゃあ、習うより慣れろってことでスタートな。時間は30分!俺はゴールで待ってるから無理せず頑張れよ」
そう言い残してノワールは宙にふわりと浮かんだかと思うと猛スピードでゴールまで一直線に飛んでいく。
🧸「あれが…お手本…ですか…」
🐾「ちょっと浮かぶくらいはできるっていっても、それだけじゃクリアできないんだよね…」
🪡「うぅ…落ちるの怖いなぁ…」
🍷「でももう制限時間は始まっているから、やるしかないんじゃないかな。自分がどこまで行けるか…実力を知るにはいい機会だよね」
🕯️「さぁ、とにかくゴールに急ごう」
執事達はボロボロと崩れ続けている足場で、転びそうになったり落ちそうになったりしながら進んでいく。
しかし、落ちそうになって咄嗟に浮遊魔法でカバーできる執事達は何とか先に進めたが、そんな余裕もなく奈落に落ちてスタートからやり直しになる執事達がほとんどだった。
一番進んでいたテディが中間地点程まで何とか辿り着いたところで、ピーッと機械音が響いた。
N「残念、時間切れ!全員最初からやり直し!」
🧸「そんなぁ…頑張ったのに…」
テディの泣きそうな声も無慈悲に無視して魔法が執事達を包みこんでスタート地点に送り届けられてしまった。
しかし、回数を重ねるごとに執事達はどんどん感覚を掴んで落ちる回数は減り、浮遊魔法に頼って次の足場まで飛んでいくなどの小細工もできるようになっていった。
🍷「ふふ、大分飛べるようになってきたなぁ。そうだ、今度は足場を使わずにどこまで行けるか、皆でやってみない?」
🕯️「おい、ルカス…まだお前みたいにゴール近くまで行ける執事は半数以下だ。無茶を言うのはやめろ」
ルカスの余裕を感じさせる提案に、ミヤジがストップをかける。しかし、他の執事達は自分の実力を改めて確かめるいい機会になるかもしれない、と賛成したのでミヤジは大人しく引き下がるしかなかった。
🫖「では、皆さん頑張りましょうね!ふぁいとー!」
🐏「おー!!」
そして、開始の合図である機械音が響いた瞬間執事達は宙に浮いてゴールへ向かってふわふわと飛んでいく。お世辞にもカッコいいとも、上手とも、安定しているとも言えない飛行ではあったが、今までで一番ゴールに近づけた執事も少なくなかった。
☔「やりました!大分感覚が掴めたように思います」
🐾「最初に比べたらかなりゴールの近くまで行けるようになったよね。今回でどこまで飛べるか…俺達の限界が分かったのはいい経験だったと思う」
🤍「あと一歩及ばず…か。だが、次こそはゴールしてみせる」
💮「おー、シロってばやる気満々だな。俺もそろそろゴールできるように本気出すか〜」
🧸「えっ、今まで本気じゃなかったんですか!?」
🍷「それなら私も本気にならないといけないね。余裕のある大人ってイメージを捨ててでも、ゴールしたいから」
🕯️「ルカスが本気になるなんてな」
🪡「でも、本気の皆の力を見たいです!俺だってもっと頑張れるんだって証明してみせます!」
執事達が各々決意を固めていると、ずっと話をしていたためいつスタートにすればよいのかとタイミングを測りかねたノワールが飛んできた。
N「おーい、スタートはいつにすればいい?」
⚔️「すまない、もうスタートして大丈夫だ」
N「そうか?まだ話すことがあるなら話しててもいいけど…まぁいいか、じゃあスタート!」
開始の合図の機械音が響き、執事達は助走をつけて浮遊魔法に転じる者もいればその場で浮かんでからゆっくり進み始める者もいた。しかし、それぞれ自分に1番合った方法で攻略をすべく奮闘していた。
そして、レースが始まって数えるのも諦めるほどの回数やり直して、ゴールに到達した執事が出た。
そして、その執事が他の執事に自分なりの攻略方法を共有し、ゴールする人数は格段に増えた。
そうして全員で協力し合った結果、途方もない回数を繰り返した地獄の特訓は終わることとなった。
時間制限ギリギリでゴールに滑り込んだフルーレを最後に、全員がゴールしたのだ。
N「皆すげぇじゃねえか!俺はこの訓練が終わるまで出られないって制限つけて特訓したら、浦島太郎状態だったんだぞ?数年経ってたからな。でも今回の記録は…8ヶ月!これは長いと思うかもしれないが、本当に才能がないとここまでの記録は出ない。皆よく頑張ったな。ちょっとしたご褒美があるから楽しんで行ってくれ」
ノワールがまた新しい欠片を取り出して展開すると、温泉宿の前にワープした。
N「ゆっくり温泉に浸かって、美味いもん食って、ぐっすり寝て、疲れを取ってくれ。勿論ここも時間は経たない欠片だから好きなだけ滞在していいぞ。帰りたくなったら玄関から出ればパレスに戻れるからな。じゃあ、楽しめよ〜」
ノワールはそう言い残して玄関から出ていき、パレスに戻ってしまった。
鬼教官が居なくなって執事達は、地面にへたり込んだり、膝に手をついて深呼吸したり、と疲れが見える様子で暫く動けなかった。
やっと動ける程度に体力が回復すると、早速汗が乾いて冷えた身体を温めようと温泉へ直行した。
温泉の温かさを堪能して、客室に入ると新鮮な海の幸、山の幸、甘い物、辛い物、沢山の種類の飲み物が所狭しと机の上に並べられていた。
🍷「すごいね。このワイン、普通に買ったら1月分が飛ぶくらいの額するんだよ?それが飲み放題だなんて幸せだね」
早速好物のワインを物色し始めたルカスに続いて、ハナマルも徳利に入った酒の味見をして目が輝いた。
💮「これ、めちゃくちゃ高い焼酎と日本酒じゃねえか!パレスで飲み放題したら俺破産しちゃうな…」
ユーハンは机の中央に置かれた魚の活造りを見て嬉しそうに箸を取った。
☔「お刺身なんていつぶりでしょう。しかもとても新鮮で歯ごたえがあります!」
早速料理や酒を堪能し始めた3人に釣られるようにほかの執事達も箸やフォークを取って料理を口に運んだ。
好きなだけ食べて、好きなだけ飲んだ後は、好きなだけ寝ることがご褒美だ。
しかし、全員分の布団が1部屋に集められていたため、テディが楽しそうに笑ってベロベロに酔ったハナマルに枕を投げつけたことで、酔った勢いもあって枕投げ大会が開かれることになった。
暫く温泉宿を堪能した執事達は名残惜しそうにしながらも玄関を開けた。
皆で特訓して、美味しいものを食べて、温泉に浸かった。それだけで心の繋がりはより深まったと言えよう。それに、元々浮遊魔法を使いこなせていた執事達よりもきっとコントロールや咄嗟の判断などを考慮すれば、劣らない…いや、それ以上の能力を手に入れたと自信を持って言えるようになった。
欠片から出る時に視界がホワイトアウトして目を瞑った執事達が目を開くと、ローブのフードを脱ごうとしていたブランとナックが動き始め、こちらに気づいて近寄ってきた。
B「お疲れ様。ノワールから聞いてるよ。特訓してきたんでしょう?…なんだか、皆ちょっと雰囲気が変わったね。勿論いい意味だよ!なんか自信に満ち溢れているというか、今ならできるって自分を信じてあげられてる顔になったね」
🔑「交渉の直前にルカスさんを引き抜かれたのは少し困りましたが、その満足そうな顔を見たらどうして交渉に来てくれなかったのかと責めるのも憚られてしまいます」
2人に褒められて嬉しくもあるが、少し恥ずかしい執事達は照れ笑いしながら顔を見合わせた。
🫖「では、お仕事に戻りましょうか。どの仕事をしていたか思い出すところから始めなくてはいけませんね」
いつものように柔らかく微笑んだベリアンに、執事達は何時もの調子を取り戻していく。
🍽️「よっし、気合い入れて晩飯作らないとな!ちゃんと手伝えよ、バスティン」
⚔️「分かっている」
それぞれの持ち場に散っていく執事達を見送るブランとナックだったが、ブランが何かを思い出してロノの後を追いかけた。
B「ロノ、前欲しいって言ってたレシピ本の翻訳版を作ったから渡したくて」
🍽️「マジですか!?これでお屋敷で食べた美味い料理を再現できます!…でもちょっとアレンジもしたいな」
B「ふふ、楽しみにしてるよ」
今度こそロノが厨房に行くのを見送ると、ブランはナックに先に戻っていてほしいと言ってノワールを呼び出した。
B「ねぇ、急に特訓して執事達を強くするなんて…処刑までの時間を短くするつもりなの?」
N「この時期までにある程度の力をつけさせなかったら脱落者が出る。分かるだろ?脱落者が出たらケイトがどれだけ悲しむか」
B「だからといって最終決戦を早めるようなことはしないでほしかったな。これじゃ早めに知能天使たちに目をつけられてしまうよ?なんならパレスを襲撃される可能性もある。そっちこそ分かってるの?」
N「分かってるっつの。それにお前だって汚い手を使って交渉してるだろ?それで貴族の怒りを買って襲撃される可能性はどうなんだよ」
B「襲撃されないギリギリを攻めてるから大丈夫だよ。そっちみたいに脳筋じゃないからね」
N「ちっ…でも、脱落者を出さずに勝ち切る未来に俺は賭けたい。例え処刑までの時間を短くするとしてもな。後はお前の汚い手段の交渉でどうにかしろよ」
B「言われなくてもそのつもりだよ」
兄弟は暫く言い合いをしていたが、そこにケイティのよく通る声が割り込んだ。
K「お帰り〜!!お屋敷の欠片の原案ができたの!チェックしてよ〜!!」
N「一時休戦か?」
B「そうだね」
兄弟はケイティのもとに歩き出したのだった。
コメント
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お疲れさまです、MAKOさん!第13話、読み終えました〜。 ふふ、執事達の個性が引っ越し準備でこんなに光るなんて思いませんでした。ラトの物への執着のなさとフルーレのツッコミ、ハウレスの散らかしっぷり…もう愛おしいです(笑)。 そしてノワールの特訓、鬼すぎるけどその後の温泉宿で枕投げっていうギャップが最高でした。全員でゴールできた時の達成感、こちらまでじんわりしましたよ。 ブランとノワールの兄弟ゲンカもいい味出てるなあ。ケイティの一声で「一時休戦」になる所が微笑ましかったです。次も楽しみにしてますね🌷