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テディ 風邪をひく
トリコが回復したのと入れ替わりでテディが体調を崩して寝込んでしまった。
ルカスの見立てではただの風邪とのことだったので、新人としてデビルズパレスに来てから色々なことが立て続けに起こって疲れてしまったのかも知れない、と執事たちはあれこれ世話を焼いていた。
トリコは先日まで一緒に遊んでいたテディが風邪寝込んでいると聞いて心配になったらしく、別邸の近くまでお散歩に来てはハナマルやユーハンにテディの様子を聞いていた。
「・・・主様が毎日何度も来てくれるから、毎度追い返すのも心苦しくてねぇ」
ハナマルからそう相談されたルカスはトリコにマスクを着けさせて、診察の間様子を見せてあげることにした。
「はい、主様はここに座っててね」
『あい!』
「じゃあ、テディ君。口を開けて〜」
「あ〜・・・」
『・・・』
「はい、胸の音を聞くよ」
「はい」(ごそごそ)
『・・・』
「うん、順調に治っているね。
このままあと何日かゆっくり休んでいれば元気になるよ」
「はい・・・」
テディは同室の二人も同期であるのに、自分だけ寝込んでいることが気になっているらしく、あまり元気がない様子だった。
その日の夜、熱がぶり返しハナマルが徹夜で看病していた。
「げほっ、ごほっ・・・」
「熱が高いなぁ・・・しんどいねぇ、テディちゃん・・・」
ハナマルは氷水を張った桶に浸けていた手ぬぐいを絞って額に乗せてやる。
ハナマルの困っている声が聞こえていたのか、ロボがそっと別邸に入ってきた。
〈ぐいぐい〉
「ん?おぉ、お前か・・・」
ハナマルはロボに服の裾を引っ張られて振り向いた。
「あ〜そうだ、ルカス先生に解熱剤貰ってきてくれるか?テディちゃん、このとおり熱がぶり返しちゃってさぁ・・・」
〈頷く〉
ロボはルカスのもとに向かい、解熱剤をくれるように頼んだ。
「あらら・・・ぶり返しちゃったかぁ・・・
明日、また診察したほうが良いね・・・」
ルカスはそう言いながら解熱剤を2種類渡してくれた。
「こっちは飲み薬、こっちが座薬だよ。
意識が朦朧としているなら、座薬を使ってあげて」
〈頷く〉
ロボは急いで別邸に向かった。
「あ〜・・・うん、そうよね、座薬・・・」
ハナマルは若干気まずそうに薬を受け取り、テディに声を掛けた。
「テディちゃん、起きられる〜?」
「ゔっ、げほ・・・」(ふるふる)
「じゃあ、座薬入れちゃって良い?」
「!?」
テディは座薬と聞いて慌てて起き上がろうとするが、力が入らず布団に崩れ落ちてしまった。
「あ〜・・・そうよね・・・」
同室の執事に座薬を入れられるのは普通に気まずいし嫌だろうな、とハナマルが途方に暮れているとロボがハナマルの手から座薬を奪い取った。
〈ぴょん〉
「あ、おい・・・」
そしてそのままハナマルをトイレに押し込むと、テディの布団をめくった。
「あ・・・ありがと・・・」
テディもロボに入れてもらうほうが良かったらしく、身を任せてくれた。
ーぶすっ
「っ・・・!」
しばらく尻を押さえていたテディだったが、薬が効き始めるとすやすやと眠り始めた。
「・・・もういいか〜い?」
トイレに閉じ込められたハナマルはその後救出された。
翌日、ファクトリーAIから事情を聞いたトリコはテディのために何かしてあげたいと考え、ファクトリーAIにおかゆや流動食のレシピを出してもらった。
ロノに頼み込み、近くに居たユーハンに手伝ってもらっておかゆを作った。
卵入りでやや不格好なおかゆをユーハンに運んでもらい、テディのベッドサイドでお椀に注いであげた。
「あ・・・ありがとうございます」
テディはトリコの手作りのおかゆと聞いて嬉しそうにしている。
トリコはスプーンでおかゆを掬うと、ふーふーと冷まして口元に運んでやった。
「ぅえ!?じ、自分で食べられます!」
『え・・・』(しゅん)
「あ、いや、食べさせてください!!」
断った瞬間に泣きそうな顔をさせてしまい、ユーハンからの殺気に負けてすぐに食べさせてもらうことにした。
「あー・・・ん!美味しいです!!」
『!!』
トリコの顔がぱあっと明るくなり、次のおかゆを口に運びだした。
テディはそのまま食べさせてもらって完食したが、終盤のユーハンの恨めしそうな視線が痛かったという。
テディがトリコのおかゆのお陰か、完全復活したのと入れ違いでトリコが風邪を引いてしまった。
恐らく、看病のときに近づきすぎたのだろう、とルカスは笑っていた。
テディは病み上がりだから、と言われつつも、トリコの看病を全部やる勢いで世話し始めてしまった。
折角トリコとゆっくり過ごせると内心ワクワクしていた先輩執事たちは、先を越されて悔しそうである。
「はい!主様!お着替えしましょうね!」
しかし、亀の甲より年の功というべきか、着替えや食事、体を拭く用意など、テディ1人では手が回らないところに割り込み、トリコに接触したり、あーんしたりしていた。
独り占めできなくなってしまったテディは悔しそうにしながらも、今後のお世話に活かすためにメモする手を必死に動かしていた。
トリコが風邪で寝込んでいる間に、ルカスとファクトリーAIは苦くなくて飲みやすい風邪薬の共同開発をしよう、と2人でああでもないこうでもない、と話し合っていた。
次に風邪を引いた執事はその新薬の実験台になることになるが、それはまだ誰も知らないことであった。