テラーノベル
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仕事の帰り道、 大好きな海へ向かった。
夕暮れの海は静かで、
空と水面の境目が溶け合うみたいに、
曖昧で、優しかった。
波の音が、規則正しく胸を打つ。
そのリズムに合わせるみたいに、
心の奥にしまおうと思っていた
君との思い出が、
ひとつずつ浮かび上がってきた。
初めて交わした言葉。
何気ないやり取り。
画面越しでも伝わってきた君の優しさ。
全部、ちゃんとここにある。
消えたわけじゃない。
それなのに私は、
君のいなくなった世界を想像してしまう。
怖かったんだ。
朝、通知が鳴らない世界。
「おやすみ」を言わない夜。
君の名前を見ない日常。
そんな世界を思い描くだけで、
胸の奥がきゅっと縮んだ。
私はスマホを取り出して、
君から届いたボイスメッセージを再生した。
「大丈夫だよ」
「ちゃんといるよ」
そう言ってるみたいで
暖かくて、大好きな優しい声。
イヤホン越しに、
君の声に触れた。
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