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虚筆連盟──それは、物語によって現実を侵食し、秩序を塗り替える集団。
チャールズ・ディケンズの物語支配。
渡辺淳一の情動操作。
井伏鱒二の影潜り。
三人の連携に、定番組は追い詰められつつあった。
「ふふん、有栖川君、ここは任せたよ!」
「おい。」
「嘘だよ、ちゃんとやるって。」
乱歩は飄々と笑い、有栖川の隣で状況を観察する。
一方、ポオは幻影を巧みに操り、敵の視界と動線を混乱させていた。
「……乱歩、こっちにも敵が来る。」
「うん、ありがと、ポオ君。」
「……ふふ。」
ポオは嬉しそうに微笑んだが、有栖川が冷静に指示を出すのを見て、表情を曇らせる。
「……最近、乱歩はあの人とばかり。」
(乱歩と並んで、推理して、作戦を立てて……それ、ボクの場所だったのに……)
ポオの胸に、じわりと小さな嫉妬が広がっていく。
だが、彼はそれを必死に押し殺し、目の前の戦いに集中した。
その頃、伊坂幸太郎は戦場の外で静かに因果を操作していた。
「偶然は、味方する。
この場において、有栖川有栖が偶然“この推理に辿り着く”。
末広鐵腸が偶然“敵の奇襲を防ぐ”。」
彼は慎重に因果を繋ぎ、未来を形作っていた。
だが──その時、伊坂は気付く。
「……おかしい。」
わずかな、微細な歪み。
繋げたはずの因果が、一瞬、違う方向に流れた。
「偶然が……ズレた?」
伊坂は目を細める。
(虚筆連盟が、ボクの因果操作に介入している……?)
ありえないことだ。
だが、確かに因果のズレが起きた。
──虚筆連盟の異能は、もしかすると因果操作をも侵食する。
「有栖川君、どうだった?」
乱歩が楽しげに問いかける。
「わかった。ディケンズの物語支配には“書き忘れた穴”がある。そこが唯一の突破口だ。」
「おー、さすが。」
「ボクも気付いてたよ。」
ポオが小さく呟く。
「ふふん、みんなで気付けば三倍嬉しいよ。」
「……ボクは、乱歩と二人で気付きたかったのに……」
ポオは、小さな声でこぼす。
「うん? なんか言った?」
「……何でもない。」
(でも、絶対に乱歩の隣は、ボクが一番だ。)
──彼は静かに、でも確実に有栖川に対抗心を燃やし始めていた。
戦いは続く。
因果が乱れ、物語が歪み、国家はゆっくりと崩されていく。
まだ誰も、この戦争の本当の終着点を知らない──。