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「すみません。ウランのミスです。」ボスはにこやかに笑った。

「君が“あの人”を出してまでわたしを守ろうとしてくれてたなんて嬉しいねぇ。」

“あの人”。それは僕でもないウランでもないなにかだ。実は僕は三人いる。一人は輝、一人はウラン、一人は…葉蘭焼(はらんしょう)。葉蘭焼は昔に起きた〝特殊能力者破滅戦争〟で一人で純人間を一人残らず殺したという伝説の人物。僕が生まれるもっと前の話だ。なぜその人が僕なのか。それは不明だ。前世だったのか、先祖だったのか、考えられる選択肢は山ほどあるが、本当の意味は分かっていない。

「久しぶりに出てきましたよ。」

僕はそう言って、ボスの部屋を出て行こうとした。が、

「あ、そうそう。君に一つ提案があってね。」

僕は足を止めて振り向いた。するとボスは音もなく僕の目の前までやってきて顎を掴みながら言った。

「輝を捨てる気はないかい?」

「…」

ーカチャー

僕はボスの額に拳銃を当てた。

「どういうつもりですか?」

ボスはにんまり笑った。

「わたしにこんなことをできる人間は君しかいないね。」

「はぁ…」

僕はため息をつきながら拳銃をしまい、ボスを無視して机の目の前にある椅子に座った。ボスもいつの間にか椅子に座っていた。

「目的は?」

ボスはさっきよりももっと笑みを浮かべた。

「わたしはね、君がもっと強くなってほしいのだよ。現時点で一番弱いのは輝、一番強いのは言うまでもないが葉蘭焼。君は二人で良い。この世界は弱肉強食だろう?輝を捨てて、ウランであり葉蘭焼である人生を選ぶべきだよ。」

弱肉強食。僕が一番好きな言葉だ。確かに、輝が一番弱いのも僕が三人である必要がないのもボスの言う通りだ。でも、

「でも、初めてできた友達を失いたくないんです。きっとその友達は僕の正体を知っています。知ってて今も普通に仲良くしてくれている、それが嬉しかった。初めて友達を友達だと思えたんです。」

すると、ボスは冷たい目線を僕に向けた。

「気持ちは分かっているさ。でも、」

ボスは僕の顔まで顔を接触してしまうくらい近づけた。

「君がここに来た理由を忘れてはいけないよ?」

「…ボスの目的を果たすため…」

「そう。綾瀬輝の命を救ったのはこのわたし、わたしに命を預けると、わたしの目的を果たすために協力すると言ったのは君だ。」

僕はボスの瞳を見つめた。有名な殺し屋“赤いディナー”なぜ殺しをするのか、それはボス以外の全員誰も知らない。もちろん、義理の息子である僕ですら知らない。僕に関しては、このままじゃ死ぬというとこをこのボスが救ってくれた。逆らう権利など存在しない。僕は覚悟を決めてボスを見つめ返した。

「…分かりました。もう、好きにしてください。僕は貴方を信じます。」

すると、ボスは僕の顎を掴んでいた手を離して微笑んだ。

「よかった。もう君とはお別れだね輝くん。」

「ええそうですね、さようならボス。」

僕がそう言うと、ボスはにっこり笑って頷いた。そして、はっきりと名を呼んだ。

「ウラン。」

すると、僕は視界がぐらりと揺らぎ、いつの間にか暗闇の中にいた。長い鎖で何処かへ繋がれていた。輝はもう、ボスが呼ぶまで永遠にここから抜け出せないだろう。

「ボスは何を考えているのやら…」

僕はそう言って静かに目を閉じた。



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