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「ウラン。」
ボスがウランの名前を呼ぶと、輝が消えた合図かのように、“僕”の髪が白くなった。


これが本来の僕の姿。


僕はいきなり力を失い、その場に倒れて気絶してしまった。 


「…」


目を覚ますと目の前にはボスがにんまり笑いながら僕を見つめていた。どうやら僕が気絶したあと、わざわざ僕の寝室まで運んでくれたみたいだ。


「おかえり、ウラン。」


もう僕は輝じゃない。僕は笑い返した。


「ただいま、ボス。」


ー輝が完全にウランになってから一週間。赤いディナーはほとんどがウランの功績により、急激に成長していったー


ー一週間後ー


 僕は今、町中をただ普通に軽い足取りで歩いている。


今日は3ヶ月に一回の“ハツガ”の日。どういうことなのかはまあ後で説明するよ。


「…」


僕はビルとビルの間にある路地裏に入った。行き止まりの薄暗い路地裏だ。


そこには一つだけ人が入れるくらいの大きさのマンホールがある。


僕は後ろに誰もいないことを再度確認してからマンホールの蓋を素手で動かした。


「ガガガガガ…」


「よっと。」


僕はマンホールの中に入り、蓋を中から閉めた。


もちろんマンホールの中は下水が流れている気味悪いトンネルだ。


しばらく歩くと、赤い扉が見えてきた。どす黒い空気の中に真っ赤な扉。場が違いすぎるよなー。僕は迷わずその扉を開けた。


扉の先は廊下でも部屋でもなくエレベーター。僕はエレベーターに乗り、ボタンを押した。


地下に向かっていく感覚が体に染み渡る。僕はふと呟いた。


「みんな元気にしてるかなー。死んでたら面白いけど(笑)」


“みんな”とは誰か。それも後で分かるさ。


「チン」


地下についた合図のベルとともにエレベーターの扉が開く。


その先は大きな大ホールになっていて、中央には長机、そして沢山の椅子と机に乗っているスイーツと珈琲。奥には暖炉もあり、洋風的なホールだ。


椅子には五人の男性と女性が座っている。


僕が入ってきてからしばらくの沈黙が続いた後最初に声を出したのはいかにも元気そうな関西人の中年男性、“ニコア”


「ウランー!久しぶりやな!」


僕はにかっと笑って手をぶんぶん振った。


「ニコアー!」


そう言いながら僕も空いている席に座った。


他にも個性的なメンバーが揃っている。ここにいる者たちは皆、“赤いディナー”の“ジク”だ。実は赤いディナーは僕たちの所だけにある訳では無い。


ー赤いディナーは全国各地に分散しているのだー


関西 ニコア担当。


九州 イブキ担当。


四国 マンチョーさん担当。


東北 ナナシ担当。


中国から九州 ウミベシさん担当。


そして、関東周辺 ウラン担当。


ボスは当たり前だが僕が担当している関東周辺班の中にいる。この“ジク”の中で最年少は僕だが、一番強いのは僕らしい。


そして、“ハツガ”というのはなにか。


赤いディナーは月に一回現状報告および安全確認のための会議のようなものをする。それを僕たちは“ハツガの日”と呼んでいる。


イブキ「ウランさん…!!」


気弱で怖がりだけど任務の時は姿を変えるイブキはそう言って水色のキラキラした目をさらにキラキラさせて僕を見つめた。


「イブキ久しぶり!今日も九州から来てくれてありがとー」


ナナシ「イブキは本当にウランのこと好きよね。」


大人びている美しい顔の静かなナナシがそう言った。


「おーそうなの?」


イブキ「ナナシさん?!そ、それはそうですけど…」


イブキははわわと言いながら顔を覆い隠した。


ウミベシ「そういえばウランくんボスまだ?」


可愛い顔なのに殺すことが大好きなサイコパス野郎ウミベシさんがそう言った。


「あーなんか遅れるって。コーヒー飲みたいらしい。」


マンチョー「相変わらずマイペースだな」


タバコを吸っているこの人はこの中で最年長のマンチョーさん。


ナナシ「あの方が時間ぴったりに来たことなんて一度もないんじゃないの?」


ウミベシ「あははたしかに」


ーコツ、コツ、コツー


全「…」

足音。足音が聞こえた瞬間、さっきまで賑やかだった部屋は一瞬で静かになり、姿勢を正した。

ボスが来る。


ーガチャー


全「!」

ボスは返り血だらけだった。無傷なようだが、顔も服も真っ赤に染まっていた。


ボス「いやぁちょっと喧嘩を売られたものでね。売られたら買うしかないかなって。」


全「はぁ〜…」


僕たち全員は大きなため息をついた。ボスはたまに1人でどっかで誰かを殺ってくる時がある。僕たちがやるからボスはいいといつもいうのだが。そしてただ単に目立つ。にこにこ笑顔で血だらけの男が街を歩いているなんて、考えるだけでも鳥肌が立つ。


「ボス、この前もうハツガの日に人は殺すなって言ったじゃないですか」


ボス「ごめんごめん」


ボスって意外とやんちゃ坊主って感じだよなぁ。


マンチョー「ボス、俺この後用事あるんで早く着替えて話進めてください。」


流石ボスと歳が近いマンチョーさんはボスにきっぱりと言葉を放った。


ボス「あーすまないね。少し待っていてくれ。」


ウミベシ「ウランくんも大変だね。」


ウミベシさんは別の部屋に入っていくボスを見ながら、僕に言った。


「最近は落ち着いた方だと思ってるよ。ちょっと人も増えて僕もプライベートタイムが多くなった気がするし。」


ニコア「ええなー関東方面は。オレんとこ人少ないねん。おまけに治安悪いとこ多いし、できるならもう少し人ほしいなぁ。」


ニコアの言う通り、大阪方面は治安が悪いところが多く、人が少ない。僕はニコアに言った。


「良かったら今度行こうか?」


ニコア「ええのー?!助かるわぁ」


机に身を乗り出しながらニコアは目を輝かせた。


ナナシ「私のところは多すぎるわよ。」


するとナナシはため息交じりにそういった。


ボス「方面ごとに片寄ってるのが問題だよねぇ」


今度はボスもため息をつきながらいつの間にか自分の席に座っていた。


イブキ「ボス…そろそろいいですか…?」


イブキは恐る恐るボスに言った。ほんとに、イブキは任務となるとあんなに強いのになぁ。これがギャップってやつ?


ボス「あぁすまない。遠くから来ている者もいるというのを毎回忘れてしまうんだよ。」


やはり中には、わざわざ新幹線、飛行機で来ている者もいる。移動費はボスが払っているらしいが、一体そんなお金がどこから出てくるのか。みんないつものことだが早く帰りたいようだ。帰ってきたらうちのチームは破滅されてましたなんて状況はごめんだから。


ボス「…」


ボスは僕に目で合図を送った。僕は立ち上がって、改めて周りを見回して言った。


「では、まず現状報告から。」


僕がそう言った直後に立ち上がってくれたのはまずニコア。


ニコア「関西はさっきも少し言ってしもうたけど、治安悪いとこ多いし、人手足らへんしで。結構忙しいとこが問題かなぁ?他の区域と比べたらの話やけどね。あとは最近他の殺し屋がオレらのとこ押し寄せてきてんねん。」


ニコアはそう言ってやれやれとジェスチャーをとった。僕はニコアに質問をした。


「目的は?」


ニコア「それが分からへんねん。うちの下っ端がその殺し屋に脅されたらしい。事情聞いてみたんやけど、“関西は俺らのもんや”言うてゲラゲラ笑ってたらしいねんー。ほんま、気味悪いわ」


ニコアも任務中ニコニコ笑顔で気味悪いのは一緒だけどな…。僕はそのツッコミを飲み込んで、ボスに視線を送った。


ボス「なるほどね。結構な規模の団体なのかい?」


ニコアは頭をポリポリかきながら苦い顔をした。


ニコア「それが結構多いらしいんですよ。3桁はいってるとか。」


どうやら意外と大きい団体のようだ。ボスは少し考え込んだような顔をしたあと、いきなりニヤニヤ笑い始めた。少し、嫌な予感。


ボス「ほーう。ならうちのウランを1週間そっちに行かせよう。」


「え」


いきなり僕の名前が出てきてうっかり声が出てしまった。ボスは僕の方を見てニコニコ笑った。嫌な予感は的中していたみたい。


ボス「最近殺してないだろう?気分転換にでも行ってきなさい。」


「分かりました…」


最近静かで良かったのに…。たしかにさっきニコアに今度向こうに行こうかとは言ったが、改めてボスの口からの命令だと面倒と思ってしまった。ニコア、ごめん。


少しテンションが下がったが、ボスの命令だ。無視するわけにはいかない。


ニコア「ほんまですか?!ウランよろしゅうなぁ〜!」


「う、うん…」


ボス「もちろんだよ。最近稽古でも教えることがないくらい上達してきているから、1時間くらいあれば倒せちゃうんじゃないかな。」


僕はとっさになら、と口出しした。


「なら1週間も要らなくないですか?」


ボス「言っていただろう?人手が足りないと。よろしく頼むよ。」


ボスの圧。僕は負けた。


「はい…」


ニコアはこっちを見てニコニコ笑いながら、オレからは以上ですと言って席に座った。次に立ったのはイブキ。


イブキ「…九州はあんまり変化はないと思います…。最近私も時々“掃除”しているので、赤いディナーの周りにいた他の殺し屋やソロの殺し屋はいなくなってきました。」


イブキの言っていた掃除は殺したり、脅したりすることだ。別に赤いディナー特有の隠語、などではないのだが、イブキはその呼び方が気に入っているらしい。イブキに脅されるなんて、脅された側は本当にトラウマになるだろうなぁ。


ボス「それなら良かったよ。イブキの圧は尋常じゃないからね。これからもその調子でよろしく頼むよ。」


イブキ「はい…?」


イブキは自分の圧は尋常じゃないのか?と思っていそうなハテナまじりの返事をしたあと、静かに座った。多分いくら言っても自覚しないと思うけど、イブキの圧は本当に怖いよ。僕は心の中でイブキにそう話しかけた。


そのあとマンチョーさん、ナナシ、ウミベシさん、と現状報告をして最後に僕。


「関東方面は最近ちょっとした事件があって、僕が讃州の致に誘われたんだ。」


僕が衝撃的な報告をしたら、全員が驚きを隠せないような顔をしてこちらを向いた。

 

全「…!?」


ニコア「ほんまかいな?!大丈夫なんかそれ?」


ニコアが思い切り立ち上がって大声を上げた。


「一応断ったけど、そいつは僕がまだ孤児だった頃に仲良くしてた思い出の友達で、まだ諦めてはないと思う。」


そこにボスはにこやかに笑って言った。


ボス「まぁウランは強いし、私のことが大好きみたいだから心配はないとは思うけどね。」


「ボス、一言余計です。」


僕が苦い顔をしてボスに言うと、ナナシが笑顔になって言った。


ナナシ「それなら良かったわ。でもウランくん気をつけて。」


「うん、ありがとう。あとは、みんなもちょくちょく言ってたけど、最近他の殺し屋がうろついてることくらいかな。」


僕はそう言ってボスの方を向いた。ボスはありがとうと言って、その場に立った。


ボス「みんな丁寧に現状報告ありがとう。どうやら最近私たちの縄張りを荒らしている者も増えてきているみたいだ。担当範囲が広い人は大変かもしれないが、全力を尽くしてほしい。そしていきなりだが、今日は機嫌が良いから君たちだけに私の人を殺す目的の一部分を教えてあげよう。」


全「!!」


ボスの目的の一部分…。前にも言ったが、ボスの目的を知るものは誰もいない。今まで教えてくれなかったのに急にどうしたのだろう。みんな急な告白にびっくりしながらも懸命に耳を傾けている。僕も次のボスの言葉を待った。


ボス「本当に一部分だけだけどね。…まずは復讐。」


全「…」


復讐?僕たちは想像していなかった言葉を耳に受け、少し混乱した。ボスが復讐?誰に?なぜ?余計に疑問が増えただけだった。そして、彼は“まず”といった。復讐は本当に目的の一部分にしかすぎない可能性もある。


ボス「まあこれだけじゃ分からないよねぇ。これは企業秘密だから、部下たちには秘密ね。またいつか教えてあげるよ。」


ボスはそう言って人差し指を立てた。



こうして今月の“ハツガ”の日は無事終わった。

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