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ストーカー
配信者×リスナー
名前伏せ無し
人気YouTube さとみのマンション前。
外灯に照らされたアスファルトの上に
一人の青年が立ち尽くしていた。
「……ここや」
ジェル。
さとりすの中でも有名な存在。
配信のたびに高額のお茶爆を投げ 、
名前を見ない日はない。
そのせいで、さとみ本人も
「よく見る」と認識していた。
だが、リスナーとして画面の向こうで
見ているだけでは足りなかった。
もっと近くで。もっと深く。
もっと、独り占めしたい。
心臓が破裂しそうなほど高鳴る。
マンションのエントランスを越えるのも、
オートロックを抜けるのも、
全て 調べ尽くしていた。
ここまで来るのに数週間かけた。
後戻りなんて絶対できない。
夜風に煽られてキャップのつばを直し、
ジェルは呼吸を整える。
胸が痛いほど高鳴る。
震える指でマンションの
インターホンに触れた。
ピンポーン、と小さな電子音。
数秒後、マイク越しの眠たげな声がした。
「……誰?」
その瞬間、全身が熱くなる。
声だけで心臓が跳ね上がる。
「…ジェル。さとみくんなら分かるでしょ?」
沈黙。
嫌な汗が背中をつたう。
だが、すぐにガチャリと鍵が外れる音がした。
扉が開いた先に現れたのは 、
グレーの パーカーにスウェット姿のさとみ。
寝起きなのか髪が少し乱れ、目つきは鋭い。
「…は?まじで来たのかよ」
呆れたような声。
ジェルは、そこに確かに“本物”のさとみが
居る事実に呼吸を忘れるほど圧倒された。
「……何してんだ。普通にやべぇだろ。
リスナーがストーカーって」
低く吐き捨てるように言われ、
ジェルの胸は締め付けられる。
だが、足は動かない。
「……どうしてでても、さとみくんに
会いたかってん。配信越しやなくて、直接」
必死の声にさとみはため息をつき 首を振った。
「悪いけど…帰れ。さすがに引くわ」
冷たく突き放され、ジェルは言葉を失った。
頭が真っ白になり、喉の奥が苦しい。
帰れ、と言われて当然だ。
けれどそれでも諦めきれず、
立ち尽くすジェルを見て、
さとみは小さく舌打ちした。
「……はぁ。マジでめんどくせぇな」
そして、ふっと口元を歪める。
「……まあいいか。俺もちょうど
むらむらしてたとこだし。いい機会だ」
「……え?」
目を見開くジェルを、さとみは乱暴に引き込み、玄関の扉を閉める。
「ジェル……だっけ。 コメントで
よく見る有名リスナーさん」
「……っ」
「せっかく来たんだし近くで遊んでやるよ」
壁際に押し付けられ、顎を掴まれる。
吐息がかかる距離。
さとみの瞳は鋭く光り、
獲物を捕らえた肉食獣のようだった。
「ほら……キスぐらい、いいだろ」
顔が近づく。
ジェルの全身が痺れるように熱くなる。
「……あかん」
瞬間、全力で押し返した。
「……は? 何だよ」
「俺は……ただの玩具にはならん」
その声は震えていたが、
確かな強さを帯びていた。
さとみの一瞬の隙を突き、
ジェルは体勢をひっくり返す。
今度はジェルが壁に押し付け、
さとみの両手を掴む。
「……お前……」
「俺は……ずっとさとみくんが好きやった。
配信のときの声も、笑い方も……
ぜんぶ俺だけのもんにしたかってん」
吐息が触れる距離で囁き、
熱く口づけを交わす。
さとみが驚いたように喉を鳴らし、
抵抗しようとする。
だがその力は次第に弱まり、
代わりに指先がジェルの服を掴む。
「んっ……」
「可愛い声、出るんやな……もっと聞かせて」
首筋に舌を這わせ、耳元で甘く囁く。
赤い痕が刻まれるたびに、
さとみは小さく息を呑んだ。
「……ジェル」
「呼んでくれて嬉しいわ。
もっと、俺だけに呼ばせて」
支配するように、でも愛おしむように。
二人は夜の中で、限界まで互いを求め合った。
翌朝。
乱れたシーツに並んで横たわり、
さとみは薄目を開ける。
「……マジでやばい奴だなお前。
家まで来て逆に俺を押し倒すとか」
「ふふ……でも後悔してへんやろ?」
「……まあな」
照れ隠しのように視線を逸らす
さとみの表情を見て、ジェルの胸は熱くなる。
「さとみくん……俺、付き合いたい」
「……は?」
「一夜限りやなくて。俺は本気で、
さとみくんが好きやから」
沈黙が落ちる。
やがて、さとみは小さく息を吐き、
目を細めて笑った。
「……いいよ。逃げても無駄そうだしな」
「ほんまに……?」
「ああ。ただし……ちゃんと俺を愛せよ。
リスナーとかじゃなく、“俺”を」
ジェルは強く頷き、そっと唇を重ねた。
「約束する。俺はずっと……
さとみくんのもんや」
歪んだ始まりから生まれた二人の関係は、
やがて「恋人」として結ばれることになった
これでお互いストーカーしてて同じくらい執着してたらいちばんいい
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