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最終章:ふたりきりの牢獄
それから俺たちは、外では「理想の先輩後輩」だった。
挨拶は丁寧に。笑顔は清潔に。
誰が見ても微笑ましいって思うくらいの関係を、完璧に演じた。
でも寮の部屋だけは、別だった。
「スマホ、見せて」
「…うん」
毎晩チェックされる。
誰と話したか、どこにいたか、全部言わされる。
でもそれが嫌じゃない。むしろ――安心する。
誰かに見張られてるってことは、誰より深く見つめられてるってこと。
他の誰かになんて、理解されなくていい。
この人に壊されるなら、それでいいって、今は思ってる。
「なあ、俺さ」
ベッドの中、先輩が呟いた。
「お前がもし俺を裏切ったら、きっと殺してでも取り返すと思う」
「……俺がもし逃げたら?」
「逃げらんねぇように、足折るかもな」
ふざけた調子で言ってるくせに、目は笑ってなかった。
ゾクリと背筋をなぞる感覚――それすらも、心地いい。
「じゃあ俺は」
「ん?」
「先輩が俺以外を見たら、その目、潰すね」
笑ってそう言った俺に、先輩は目を細めてキスを落とした。
苦しみと快感が溶け合った、牢獄みたいな口づけだった。
鍵はかかってない。逃げようと思えば、いくらでも逃げられる。
でも、俺たちはここから出ない。
だって――ここが、一番安心できる檻だから。