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「ところで、杏奈の方はどうなの?なんか気になる人がいるって言ってたでしょ?」
「うん、気になるってだけ。どうも好きとかそういう感情とも違う。どちらかというと、ドラマの俳優を見てるような?」
「そんな素敵な人なの?見てみたい、写真ないの?」
「残念、写真ない。成美からみて、素敵かどうかわからない。でも、キチンとした身なりや穏やかな話し方や家族思いのところがね、いいなぁって。ずっと話していたくなるみたいな。落ち着くんだよね、遠藤さんの近くにいると」
「それって、不倫にはならなさそう。憧れてるだけだね」
「うん、そう。遠藤さんのことを色々知りたいし仲良くしたいとは思うけど、付き合いたいというのとは違うかな」
「ふーん、でも、その人の存在は杏奈をワクワクさせてる?」
成美にそう訊かれて、考えてみた。
「ちょっとしたことをやり取りしたり、事務所で直接話したりするだけでドキドキするし、ワクワクもする……ってなんだか中学生の恋愛みたい」
「いやいや今時の中学生はもっと激しいよ、幼稚園児だよ」
あははと大笑いの成美。
「まるで推し活だね。それで毎日に張り合いが出るならオッケーだね」
「だと思う。事務所に行く時はオシャレしたくなるし。髪型も気になる。ね、そのネイルのお店教えてよ」
「とにかく杏奈も女心が生き返ったってことね。あー、このネイルのお店はね……」
スマホでお店の情報を教えてくれる成美を見ながら、遠藤のことを考えていた。
香水の匂いを纏って帰ってきたり、部屋を散らかしたり、私の気持ちを無視して強引に迫ってきたりする雅史と比べていた。
_____あんなふうに大事にされる奥さんって、どんな人だろう?
私のことは遠藤にとっては、ただのアルバイト主婦にしか見えていないだろうけど、女として少しだけアピールしたいと思った。
それは、見たこともない遠藤の奥さんのことを想像したからで、そこからだんだんと変わっていく気持ちを、その時はまだ予想できなかった。