〜黄視点〜
赤「き、きぃにっ、」
俺の名前を呼ぶ声。小さくて、不安そうで――
でも、それにどう返せばいいのかわからなかった。
黄「……なに」
声が冷たくなったのはわざとじゃない。けど、赤はびくっと肩を揺らして、僕の服のすそをそっと掴んだ。
黄「……なんで、泣いてるんですか」
赤は答えない。ただ、うつむいたまま、服の端をぎゅっと握ってる。
黄「別に怒ってないし。……ってか、僕になに求めてんの?」
問いかけても、赤は黙ったまま。
その沈黙がなんか、やけに重たく感じた。
(泣くなら、桃にぃのとこ行けばいいのに)
そう思った。……でも、赤は僕の名前を呼んだでこっち に来た。
黄「……」
(僕のこと、頼れるとか思ってんのか? いや、違うか。ただ甘えてるだけか)
(お兄ちゃん達はみんな赤に騙されて甘やかして、赤は僕からお兄ちゃんを取ったんだ。)
思考がぐるぐる回る。けど、その小さな手をふりほどくことはできなかった。
赤「……ごめんなさい」
ぽつりと落ちた言葉に、僕は思わず目を向けた。
黄「……何が?」
赤は、また答えない。まるで、なにを謝ってるかも分かってないみたいに。
黄「……はぁ。よくわかんないですけど……僕に言っても意味ないし」
赤は、ただ、僕の服のすそを握ったまま俯いてる。
しゃくりあげるような小さな息が聞こえて、僕はなんとなく目をそらした。
黄「……泣くなら、あっち行けば」
そう言って立ち上がろうとしたとき、赤が小さく、僕の袖を引っ張った。
赤「い、いかないで……」
(……)
黄「……意味わかんない」
けど、なんとなく、そのまま、立ち上がるのをやめた。
ほんの少しだけ、心の奥がざらっとする。
赤のこと、嫌いなはずなのに。
(なんで僕なんだよ……)
誰にも言えないまま、赤を自分の膝の上に座らせた。
コメント
5件
めっちゃおもしろかったです!ほんとに最高でした!
続きありがとうございます!今回もめちゃくちゃ面白かったです!