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コムム
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今回のお話は結構重めです。
大丈夫な方はどうぞ
雄英高校、1-Aの教室。
朝からクラスは少しざわついていた。
「聞いた? モブ子ちゃん、緑谷に嫌がらせされてるらしいよ」
「え、あの緑谷が?」
教室の後ろで、緑谷はぎゅっと拳を握った。
本当はいじめられているのは自分だった。
ノートを隠される。
陰口を言われる。
ヒーロー分析ノートを破かれる。
でも緑谷は、「みんなに迷惑をかけたくない」と思って黙っていた。
けれど昨日、モブ子が突然泣きながら先生に言ったのだ。
「緑谷くんにずっと嫌がらせされてます……」
その瞬間から空気が変わった。
相澤先生も簡単には信じていなかったが、証拠がない以上、強く否定できない。
「……緑谷、何かあるなら言え」
「だ、大丈夫です」
そう答えるしかなかった。
──昼休み。
緑谷が屋上へ行くと、後ろから声がした。
「アンタさ、黙っててくれる?」
モブ子だった。
「もし本当のこと言ったら、“無個性オタクが逆ギレした”ってみんな思うから」
「……っ」
「みんな、弱そうな方より泣いてる方を信じるんだよ?」
モブ子は笑った。
緑谷は悔しくて俯いた。
すると、
「へぇ」
低い声が響いた。
振り返ると、爆豪がドアにもたれていた。
「……かっちゃん」
「全部聞こえてんだけど」
モブ子の顔色が変わる。
「ち、違っ……!」
「緑谷が誰かいじめるわけねぇだろ」
爆豪は苛立った顔で言った。
「コイツ、自分が傷つく方が早ぇタイプだぞ」
その後ろから、お茶子、飯田、轟まで現れる。
「実は前から変だと思ってたんだ」
轟が静かに言う。
「緑谷の机だけ、毎回荒れていた」
「ぼ、僕は大丈夫だから……!」
緑谷が止めようとする。
でもお茶子が首を振った。
「よくないよ、デクくん」
「助けを求めないと、誰も気づけない時あるんやから」
その言葉に、緑谷の目が揺れる。
ずっと耐えればいいと思っていた。
自分さえ我慢すればいいと思っていた。
でも、
「……怖かった」
小さくこぼれた声。
「嫌われるのが、怖かった……」
教室が静まり返る。
相澤先生は深くため息をついた。
「まずは事実確認だ。だが──」
赤い目がモブ子を見る。
「嘘で誰かを傷つける行為は、ヒーロー以前の問題だ」
モブ子は何も言い返せなかった。
その日の帰り道。
夕焼けの中で、お茶子が笑う。
「もっと頼ってよ」
飯田も真面目な顔でうなずく。
「友人とは支え合うものだからな!」
爆豪は前を歩きながらぶっきらぼうに言った。
「次からはさっさと言え、クソデク」
緑谷は少しだけ笑った。
「……うん」
その声は、前より少しだけ軽くなっていた。