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「…でさぁ……って、ねぇラン、聞いてる?」
まだ残暑で汗ばむこの季節
夏休み明けで浮かれている教室の喧騒をぼーっと眺めていると、友人のアキラが俺の顔の前で手をひらひらと振った
「えっ、あっごめん。何の話だっけ?」
俺が慌てて彼の方に顔を向けると、彼は不満そうに頬を膨らませながら話を続けた
「だからぁ、転校生。この時期に珍しいねって」
「あ、あぁ……転校生ね。確かに」
そう、この1年生の2学期という半端な時期に、何と転校生が来るらしい。
それなら、中3の時に受験すれば良かったのにという言葉は飲み込んでおく。
まぁ、人それぞれ事情はあるだろうからな。
「どんな子だろう。可愛い系かな?」
「いや、やっぱ綺麗系じゃね?」
「あー、アキラ年上好きだもんなぁ」
「ちょっとうるさいよ、ラン」
何て、馬鹿話をしていると、教室の扉がガラリと開いた
「はーい、全員席ついて~」
担任がそう言うと、教室は先程までの喧騒とは打って変わって、水を打ったように静まり返った
「あー、何人かの生徒は気付いているかもしれないが、今学期から新しく生徒が加わる」
静かになった教室が、またもやザワザワと喧騒に包まれる
「静かに。……それじゃあ、入ってきてくれ」
クラスの全員が、扉に好奇な瞳を向ける
教室の扉がガラリと開き1人の男子生徒が入ってきた
その瞬間、クラスの生徒全員が息を呑んだ
陶器のように美しい白い肌
歩く度にサラリと揺れる、色素の薄い髪
そして、見る人を惹き付ける魅惑的な黒い瞳
「初めまして。茨城 小夜と申します。宜しくお願いします」
そう言い、彼はにこりと微笑んだ
少しの間が空いた後、教室はキャーッという黄色い歓声に包まれた
ヤバい、滅茶苦茶カッコいい。
凄い、恐ろしい程に顔が整ってる。
ていうか、あの瞳ってどうなってるんだ?
黒いけど少し赤みがかってて……
「…い!……おい、神崎!」
「ラン、呼ばれてるよ」
「へっ?」
突然、隣の席のアキラから肩を揺さぶられ、俺は はっと気が付く
「おーい神崎、新学期早々居眠りか?」
「いやっ、すみません」
俺は慌てて立ち上がる
その弾みで椅子がガタンと後ろに倒れた
クスクスとクラス中で笑いが起こり、転校生も下を向いて肩を震わせていた
俺は頬が熱くなるのを感じながら、愛想笑いを返す
「じゃあ、茨城は彼処の席だからな。
神崎、茨城の教科書がまだ届いていないそうだから、届くまで見せて上げなさい」
「はい!」
「よし、それじゃあHRを始めるぞ~」
茨城が俺の隣の席に座りながら、よろしく、と微笑みながら声を掛けてくれた
「ああ、俺は神崎 蘭。よろしくな!」
そう言って手を差し出すと、彼は少し躊躇った後、俺の手を取った
「よろしく、神崎」
まだ残暑の残る蒸し暑い9月の上旬
けれど、彼の手は恐ろしいほどに冷たかった