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カチャ、と静まり返った部屋にドアの開く音が響いた。壁の時計の針は、もうすぐ深夜の12時を指そうとしている。
sgi「おかえり……って、おいおい。めちゃくちゃ飲まされてんじゃねーか」
リビングのソファから立ち上がった須貝は、玄関に現れた姿を見て思わず苦笑した。
そこにいたのは、ネクタイを少し緩め、耳の裏まで真っ赤に染まった山本だ。
主役として散々お祝いされ、飲まされてきたのだろう。普段の生真面目な雰囲気はどこへやら、視線はトロンとして完全におぼつかない。
須貝が「大丈夫か?」と声をかけようと一歩近づいた、その瞬間だった。
山本は須貝の顔を見るなり、ふにゃりとだらしなく破顔した。
ymmt「……あ、す、すがぃさんだぁ……」
次の瞬間、山本は小さな身体を弾ませるようにして、須貝の胸へとドサリと正面から飛び込んできた。
須貝の視界から山本が消えたかと思えば、みぞおちのあたりに柔らかな頭がぶつかる。
並ぶと圧倒的な体格差がある二人だ。山本は背伸びをするような格好で、須貝のシャツをぎゅっと両手で握りしめ、胸元に顔を埋めたまま、回らない呂律でまくし立て始めた。
ymmt「すがぃさん、すがぃさん……っ、もー、ほんっとにかっこいいです……!」
sgi「はぁ!? 俺が?」
見上げる形になる山本の顔が、すぐ近くにある。
いつもは伊沢を「伊沢さん」と呼んで敬語を使い、後輩たちの面倒をよく見ているあの山本が、いまは完全に自制心をなくして、須貝の胸にすがりついている。
ymmt「なんでも出来て、優しくて、大きくて……っ。大好き、大好きです、愛してます……っ。僕、世界でいちばん、すがぃさんのこと……あ、愛して、る、から……」
必死に想いを伝えようと、少しだけ爪先立ちになって須貝にしがみつく小さな手。そこから伝わる体温は驚くほど熱い。
ymmt「……今日、誕生日、なのに……っ、みんなに、お祝い、してもらった、けど……っ。僕、すがぃさんに、いちばんにお祝い、されたかった、なぁ……」
sgi「山本……」
ymmt「でも、会えたから……最高の、誕生日です……っ」
そう言って満足げにふにゃりと笑った直後、急に山本の身体からふっと力が抜けた。
ymmt「……ん、……ぅ……」
sgi「おい, 山本? ……って、寝てんじゃねーよ!」
あんなに熱烈に愛を叫んでおきながら、山本は須貝の胸に顔を埋めたまま、規則正しい寝息を立て始めていた。自分の腕の中で、すやすやと眠る主役の重み。
ちょうどその時、リビングの時計が、静かに午前0時を告げた。6月1日。山本の誕生日だ。
sgi「はぁー……まじかよ……」
重くなった山本の身体を優しく横抱きに抱え上げながら、須貝は深く、深くため息をついた。
その身体は驚くほど軽くて、自分の腕の中にすっぽりと収まってしまう。
静まり返った部屋の中、自分の心臓が、走った後みたいにバクバクと五月蝿く鳴っているのがよく分かった。
sgi「……こんなん、流石に照れるだろ。反則だっつーの……」
耳まで真っ赤にした須貝は、腕の中の小さな主役を落さないよう、ゆっくりとベッドへ運んだ。
ベッドに横たわらせ、靴下を脱がせて布団をかけてやると、山本は「ふにゃ……」と気持ちよさそうに吐息を漏らし、さらに深い眠りへと落ちていく。
月明かりだけが差し込む静かな寝室。
須貝はベッドの脇にどさりと腰掛け、微睡む山本の寝顔をじっと見つめた。
自分よりずっと小さな手が、布団から少しだけ覗いている。いつもはしっかり者として振る舞う彼が、自分の前でだけこんなに無防備に、甘えた姿を見せている。 その事実が、須貝の胸の奥を激しく揺さぶった。
須貝はそっと手を伸ばし、山本の少し形の良い唇に、自分の大きな指先を優しく這わせた。
柔らかく、温かい熱が指先から伝わってくる。
sgi「……あはは、悪い人やなぁ……」
それは、自分をこんなにも狂わせる小さな山本に対してのものか。
それとも、無防備に眠る恋人を前に、これ以上ないほどの独占欲を膨ませている自分自身に対してのものか。
どちらにかもわからないような独り言を呟いた後、須貝はふっと小さく息を吐いた。
いつもは真っ直ぐに自分を引っ張ってくれる「かっこいい須貝さん」を慕い、何でもできると誇らしげに語ってくれた、腕の中の愛おしい存在。理性が保てるはずもなかった。
須貝はベッドの縁に手を突き、ゆっくりと上半身を深く屈めていく。
須貝の大きな身体が、布団にすっぽりと収まった小さな身体を覆い隠すように影を作った。
ymmt「ん……ぅ……」
山本が微かに身じろぎをして、小さな唇から熱い吐息を漏らす。その無防備すぎる姿に、須貝の胸の奥にある感情が、静かに、けれど決定的に弾けた。
須貝はそっと目を閉じ、山本の少し形の良い唇に、自身の唇をそっと重ね合わせた。
お互いの体温が触れ合う、静かで、深いキス。
起こさないように、けれど自分の想いのすべてと、「おめでとう」の気持ちを刻みつけるように、優しく、じっくりと唇を吸う。アルコールの熱のせいか、山本の唇は驚くほど柔らかく、そして甘かった。
しばらくして、須貝はゆっくりと名残惜しそうに唇を離す。
山本はキスされたことにも気づかないまま、ただ少しだけ呼吸を荒くして、幸せそうに眠り続けている。
須貝はそっと息を整えると、コートのポケットから、今日のために用意していた小さな革のケースを取り出した。
sgi「せっかくの誕生日なのに、先に寝やがって……」
苦笑しながらケースを開けると、月明かりを浴びて、シンプルなデザインの指輪が静かにきらめいた。
須貝は布団から覗く山本の左手を、起こさないように細心の注意を払いながら、そっと自分の大きな手のひらですくい上げる。いつもはペンを握ったり、キーボードを叩いたりしている山本の細い指。
須貝は自分の左手で山本の温かい手首を優しく支え、もう片方の手で、その薬指の先端に指輪をあてがった。
sgi「……よし」
じわじわと、慎重に滑り込ませていく。
関節を通り抜けたシルバーの輪は、まるで誂えたかのように、山本の左手の薬指の根元にぴったりと収まった。
月明かりの下、山本の薬指で鈍く光る指輪を見つめながら、須貝は満足げに口元を緩める。
sgi「これで、お前は俺のもんだからな」
誰もいない寝室で、小さな恋人にだけ聞こえるように、低く、独占欲を孕んだ声で呟く。
散々「かっこいい」「大好き」と自分を狂わせる言葉をまくし立てておきながら、今は指輪を嵌められたことすら気づかずにすやすやと眠っている主役が、愛おしくてたまらなかった。
須貝は指輪が嵌った山本の左手の甲に、誓いを立てるように優しく唇を落とした。
sgi「誕生日プレゼント。明日起きて驚くなよ」
繋いだ手を布団の中に優しく戻してやり、須貝は山本の髪をそっと撫でる。
朝が来て、この指輪を見た山本がどんな顔をして赤くなるか、それを想像するだけで、須貝の胸はこれ以上ない幸福感で満たされていくのだった。
sgi「……誕生日おめでとう、山本」
須貝は山本の小さな手をそっと握り直し、その愛おしい寝顔が朝を迎えるまで、静かに見守り続けるのだった。
(おわり)
山本さん誕生日おめでとうございます!!
これからもカッコ可愛いを追求してください!!
コメント
11件
おお……これ、尊すぎる……!!酔った山本が須貝さんにベタ甘で「大好き」連発して絡むところからもうダメだったわ。しかも寝落ちした隙にこっそり指輪はめる須貝さんの独占欲よ…「これでお前は俺のもんだ」は反則すぎるでしょ!寝顔にキスして薬指に誓うなんて、完全に思考停止するやつ。これは朝どうなるか気になって夜しか眠れないわ。ほんとおめでとうございます、最高の誕生日エピソードでした!