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部屋の静けさの中でみことはゆっくりと目を覚ました。身体を包むシーツの温かさと、肌に触れるすちの優しい体温に気づく。まだ眠気が残る瞳の奥で、昨夜の激しくも甘い記憶がふわりと蘇る。
みことはそっと目を閉じ、身体に触れたあの丁寧な仕草や、すちが自分のために時間をかけて拭いてくれたことを思い出した。自分がこんなにも大切にされていることに気づくと、胸が熱くなり、自然と涙が頬を伝って流れ落ちた。涙は止まらず、ぽろぽろとこぼれ落ちていく。
「…すち…っ…」
震える手でそっとすちの肩を触れ、感謝の気持ちを込めて唇をゆっくり重ねた。涙がみことの頬からすちの頬に落ちるその瞬間、すちはその温かくて柔らかい感触にゆっくりと目を覚ました。
「みこちゃん……どうしたの?」
すちはすぐに体を起こし、みことを優しく抱きしめた。震える肩を包み込み、ゆっくりと撫でながら問いかける。みことの涙混じりの息遣いを感じ取りながら、すちはそっと額を重ね、静かに「大丈夫だよ」と囁いた。
みことは涙をぬぐいながら、小さな声で「ありがとう……すち」と呟き、すちの胸に顔をうずめた。すちもまた、みことの温もりに包まれながら、心の奥から湧き上がる愛しさを感じていた。
「すちは、俺のことを宝物みたいに大事にしてくれて…いつもすちの優しさに救われてるんだ。」
その言葉にすちは胸が熱くなり、ぎゅっとみことを抱きしめ返す。
「俺もだよ、みこちゃん。みこちゃんの笑顔や優しさに、俺は何度も救われてる。君がいるから毎日が楽しくて、幸せなんだ。」
みことの頬にそっと手を添え、すちは穏やかな目で見つめながら続ける。
「だから、これからもずっと一緒にいてほしい。俺たち、二人で支え合っていこう。」
みことはその言葉に胸がいっぱいになり、涙をこらえながらも微笑み返した。
すちはみことの額にそっと唇を寄せると、そのまま優しく頬、鼻へとゆっくりとキスを重ねていく。みことの涙で濡れた肌に触れるたびに、すちの温もりがじんわりと伝わってくる。
最後に、すちはみことの唇に柔らかく触れ、ゆっくりと深く重ね合わせた。みことの泣き止んだ頬に、すちはにっこりと微笑みかける。
「泣きやんだ?」と囁かれ、その穏やかな笑顔にみことは見惚れてしまい、胸がぎゅっと熱くなった。唇の温かさとすちの優しい眼差しが、みことの心をふわりと包み込んでいった。
みことはすちの凛とした横顔に見惚れて、ぽーっと甘く蕩けた表情になった。ふわりと柔らかい空気に包まれ、胸の奥からじんわりと温かさが広がるのを感じる。すちはそんなみことを見て、少しだけ微笑みながら冗談っぽく声をかける。
「惚れ直した?」
みことは恥ずかしそうに目を伏せつつも、顔がほんのり赤く染まりながら、でも真っ直ぐな瞳で答えた。
「毎日、一目惚れしちゃうんだよ…」
その言葉はすちの胸にふわっと染み込み、内心で小さくニヤリとしながらも表情は穏やかに。すちは朝の光に照らされながら、みことの頬にそっと手を添えて優しく触れた。
「朝から抱き潰したくなるけど…今日は自重するよ」
そう囁きながらも、その声には確かな熱がこもっている。みことの身体がふわりとすちに寄りかかり、その温もりに身を任せながら、すちは続けた。
「最終日も、いっぱい楽しもうね」
みことはすちの言葉に胸が高鳴り、心が満たされていくのを感じた。すちの手の温かさと優しさ、そして一途な想いに包まれ、みことの頬はますます赤く染まり、瞳は潤んでいた。
二人だけの穏やかで幸福な朝の時間が、ゆっくりと静かに流れていった。
みことにプレゼントされたお揃いのシャツを、ふたりは誇らしげに身にまとい、手を繋ぎながら最後の観光へと向かう。みことの表情はすっかり晴れやかで、今朝までの涙の痕はすでにどこにもなく、穏やかであたたかい笑顔に戻っていた。
その笑顔が、すちにはたまらなく愛おしかった。陽射しの下できらきらと輝く瞳、ほんのり赤く染まる頬、隣を歩いているだけで胸が満たされるような安心感――そんなみことの可愛さに耐えきれず、すちは思わず公共の場だということも忘れ、みことの唇にそっと口づけた。
「もう……外だよ……」と小声でたしなめつつも、みこともまんざらではなく、照れたように微笑み返す。
その後、ふたりは家族や仲間たちに向けたお土産を選びながら、楽しかった旅の話を少しずつ振り返る。そして名残惜しさを抱えながら、空港へ向かい、帰りの飛行機に乗り込んだ。
帰りの機内でも、変わらず手を握り合ったまま、寄り添いながら眠るふたり。どこにいても一緒にいるだけで落ち着く、そんな絆の深さがそこにはあった。
そして夜、住み慣れた家に帰り着いたふたりは、玄関を開けて小さく声を揃えるように呟いた。
「ただいま。」
その声に、長く続いた夢のような旅がふわりと締めくくられる。次の瞬間、ふたりは向かい合い、お互いの目を見つめながら――
「ただいま。」
もう一度、重ねるように言って、静かに唇を重ねた。
日常へ戻る玄関先で、また新たな愛が確かに深まっていた。
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それぞれ日常へ戻った翌日――
みこととすちは、旅の余韻を胸に抱えながら、それぞれの職場へと足を運ぶ。手には沖縄で選んだお土産の袋。少しだけ照れくさくも、嬉しそうな表情を浮かべながら。
みことの職場では――
「おかえりなさい、旅行どうだった?」と同僚に声をかけられる。
みことは少し照れたように笑いながら、袋から色とりどりのちんすこうや紅いもタルト、職場用に買ってきた個包装の沖縄土産を配る。
「お土産です…!海ぶどうとかもおいしかったけど、やっぱこれが定番かなって。」
「ありがとー!あ、これめっちゃ美味しいやつじゃん!」
「えっ、彼氏と行ったの?!」と一部に詰められつつも、にこにこと受け取ってくれる皆の顔に、どこか嬉しさが滲む。
すちの職場でも――
すちはいつも通り落ち着いた様子で出勤し、皆のデスクにさりげなくお土産を置いていく。泡盛風味のクッキーや、ちょっと渋めの黒糖菓子などを選んでいて、「さすがセンスいい」と言われる。
「沖縄だったんすか?いいな〜!」
「うん。天気もよかったし、のんびりできたよ」と、すちは穏やかな笑みで返す。
「彼氏さんとですか?」と軽く聞かれると、「まぁ……そんなとこ」と少しだけ意味深に微笑むすち。
ふたりとも、それぞれの場所で
楽しい思い出と小さな甘さを届けながら、また日常へと溶け込んでいく。
だけど心には、あの旅行で確かめた愛と絆が、ずっとあたたかく残っていた。
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