※菊←朝
※not朝菊
※失恋系
※不快になる恐れあり
「すみません」
振られた。
ランプの暖かい光に照らされ、
クラッシクの音楽がながれてくる
こぢんまりとしたカフェ
店内には常連客だと思われる
夫婦がちらほら見受けられるが
人は少ない。
告白にはもってこいの空間だ
だからといって、行けると思ってしまった
自分がバカだった。
彼は自分の数少ない友達だった。
そして今日は初めて、彼と──
菊と遊びに来ていたのだ。
独りでいることが多かった俺は
菊からの誘いが来た時は嬉しさで、
胸がいっぱいだった。
今日はどのような服を着よう、
どんな所に行こう
様々な事を考え、楽しみにしていた。
そして今日は本屋や服屋などを巡って、
なかなか楽しい一日になっていた。
なのに最後の最後に身勝手に想いを伝え
菊を困らせ、気まずい雰囲気にしてしまった。
現に菊は俺と目を合わせようとはしないし
伏せ目がちで何か考え込んでいる
本当に、何がしたかったのだろうか
「…アーサーさん、スープが
冷めてしまいますよ」
気まずくなり何も言えずにいた
俺たちだったが、
最初に口を開いたのは菊だった。
「あ、あぁ…そうだな」
俺が考え込んでいる間に
スープが来ていたようだった。
トマトやソーセージといった具材が
ゴロゴロ入っており
湯気をたてているスープは、
とても美味しそうに見える
だが美味しいものだったはずのスープは、
今の俺には味を感じることが出来なかった。
そこからは、もう何も考えることができなかった
菊に振られてしまった事だけが
頭に残って、
小さなミスばかりした。
これからも国として、
菊とは何度も会うというのに。
“俺” が“菊” に振られたからと言って、
“イギリス”と“日本” の交流は終わらない。
いや、終わらせることが出来ないのだ。
俺の感情を優先して、
何百万、何千万という人の人生を
左右するなんて、あってはならない。
振られただけでこんなに辛いなんて。
裏切り、独立、孤独。
俺は今まで、ありとあらゆる苦しみを、
味わってきていたつもりだった。
それなのになぜ、こんなにも辛いのだろう
ブー、ブー
通知音が聞こえ、体を起こし
スマホを覗くと
今はもう、袂を分けた弟から
メールが来ていた。
『アーサーへ』
俺の名前から始まるそのメールには、
「今度一緒にご飯に行こう」
ただそれだけが書かれていた。
顔を上げると、目の前にある姿見に映った
自分の酷い顔が目に入った。
我ながら、酷い姿だった
光のない虚ろな瞳に、コケた頬。
目の下にはクマだってできていて
まるで、死にかけの病人のようだった。
仕方がない
好きだった相手に振られたのだ。
好きで、堪らなかった相手に
まだ、心の傷だって癒えていない。
それでも、誰でもいいから会いたかった
心にぽっかり空いてしまった穴を
誰かに塞いで欲しかった。
そんな時に来た誘い、
断るはずがない
そんな事を考えながら、彼に言葉を返した。
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