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ずんだもちぃ
4,615
にろ
83
「………なにやってんの」
うーん、どうしようかこの状況。
先程まで焦りで身体が動かないくらいになっていたのに、今は状況的に完全に詰んでいるせいで、逆に焦りが減っている。
こちらをみて歪みがひどくなっていくりうくんの顔。先程まで寝ぼけていた人間とは思えないくらい、眉間に力が入って、口を細く横に開き歯を食いしばっている。その表情は裏切られた怒りでも憎しみからきているものでもないようだ。なんだかよくわからない。
「……」
「……」
また数時間前のような気まずい沈黙の時間が流れ始める。言い訳、はもうできない。右手にはカッター、血だらけの太もも。
「…いつもどうやって治療してんの」
驚いた。傷を作っていたことには触れないのか。「しないでって言ったじゃん」とか「またやったの?」とか言われると思っていた。
「とりあえず、カッターちょうだい。預かる」
「…え」
「当たり前でしょ、遠ざけるのが1番早いんだから」
まあ、カッターくらいならまた買えばいいし、使ったことはないけどカミソリもある。別に渡してもいいか。
「ん、はい」
「傷は、拭いてるの、?消毒は?」
渡したカッターを少し強く握る【りうくん】。けど今はとにかく、今は傷を治療したいらしい。自分のことなのにどうしても他人事のように思ってしまう。思ってしまうというより思いたいと思っているのかもしれないが。
「自分でやるから大丈夫」
「…見てる」
「…は?」
何言ってんだこいつ。人が自分の傷を癒しているところを見ようと?異常性癖でもできたのか?
「え、いや、まじで何で…?」
「言ったじゃん、見なかったことにしたくないって」
「いやそれとこれとは別でしょ、、」
向けてくれる善意はありがたいが、その善意は時としておせっかいとも取れる。それが今だ。
「やり方見てたら、【ましゅー】が傷作っても、俺がやってあげられる、かもじゃん…」
自信はないのかこいつ。今の立場では窮地に立たされているはずなのはこっちなのに、ボソボソと喋る。というか、本当に住むつもりなのかこいつ?近くにいることが前提の会話だが。
「ちょっと、嫌なんだけど…」
「いや、今拒否権とかないでしょ」
やはり窮地に立たされているこちらだった。【りうくん】のほうが立場は上。逆らえない。
「…わかった」
「うん」
【りうくん】が怒ってくることも、問い詰めてくることもなくて、予想してた反応と違くて、でも短い会話しかなくて、絶妙な空気感がある。だが謎にそこまで不快感はない。
命令された通り、治療に取り掛かる。近くに置いていたティッシュで軽く血を拭き取り、短パンに少量の血しかつかないようにしたら部屋に向かう。
部屋の電気をつけ、少し眩しさを感じる。保管していた消毒、包帯を取り出す。部屋のティッシュを取り、消毒を染み込ませ、軽くポンポンと叩くように血を吸い取らせる。正直、この消毒をつける工程に意味があるのかはずっと謎だが、一応やっておく。
血がある程度止まったら包帯を巻く。ほんとは包帯の前にガーゼをした方がいいのだろうが、以前買ってこなかったため、しばらくはこのままになるだろう。
はい、これだけ。見せると言っても少ない工程しかないから、なんだか気まずい。
「、おわり?」
「うん」
ほら、これだけで終わりなのかと疑問に思われるほどだ。
「ん、じゃあ説教するから座って」
「…は?」
当たり前と言ったら当たり前だが、嫌な気持ちが大きい。何というか、傷のことに触れられるのが嫌というか。ほっといてほしい。
「説教っていうか、俺がどう思ってるか話したいっていうか、、いや、けど【ましゅー】は逆にどう思ってんの…?」
🧢side
悔しい、悔しい悔しい。こんな行為をまたさせてしまった自分に失望する。
自分は友人が陰で苦しんでいるのも悟れず、その上、この行為を止めてあげることすらできない。無力な自分が憎い。
「…どう思ってるかって、……どういう意味、?」
「えっと、…なんていうんだろう、なんか、うーん……」
身近にこんな行為をしていた人がいなかったから、どうすればいいのかわからない。そもそも自分の周りは明るい人ばかりで、心の悩み、そんなの気にしてもいなかった。明るい人というが、【ましゅー】のように自分の心を覆い隠して、塞いで、無理やり明るく見せているだけなのかもしれない。自分には足りないことがたくさんあるのは知っているが、周りの人間のそういうところだけでも早く気づいてあげたかった。
「【ましゅー】はさ、その…リスカ?についてどう思ってるの…?痛いって言ってたじゃん…それでもやめられないの、?」
【ましゅー】の痛みに気づいてやれなかった自分に正直に話してくれるかなんてわからない。けど、知りたい。友達だから。支えになりたい。自分が周りの気持ちに気づけなくても、周りの気持ちに応えるくらいはしたい。
「…うーん、笑」
目と口を歪ませて、ぎこちなく愛想笑いをする。苦笑に近い笑いだ。誤魔化しているのか、それとも笑わないと気まずくて耐えられないのか。口が裂けそうなくらい、引きつった笑顔だ。
「お願い、話して……」
「俺そんな頼りない…?」
「いや、その、そういうわけじゃなくて…」
「…じゃあ、どうして…?」
「なんかその、自分でもよくわからないっていうか、」
「痛いのに対してもう恐怖とか、嫌悪感とか、抱いてなくて…逆に安心するっていうか……」
自分に、話してくれたことが嬉しい。けどそれ以上に、その行為をして安心できるようなところまで追い詰められていたことに気付けなかった自分がどうしても憎い。
この行為をしなくても安心させれるような存在でありたかった。自分じゃ足りなかった。苦しい。1番苦しいのは【ましゅー】なはずなのに。悔しい、苦しい。
msy side
【りうくん】は今、何を考えているのだろうか。自傷行為をしていた自分に呆れているのか、自傷行為による痛みで安心すると言う予想外の返答で困惑しているのか、ずっと考えを巡らせているようだ。
なんてことを考えながら【りうくん】を観察していると、その何の濁りもない目から、ボロボロと音を立てそうなくらい大粒の涙が溢れ出てきた。
「ぇ……えっ、え?な、なんで泣いてんの…?」
「ぐずっ、いや、ぁ……だってぇ、…」
「ずびっ、」
ど、ど、、どうしてだ、!!な、なんで泣いているんだ!!傷つけることを言った覚えはないんだが……あまりにも人間として終わっている自分に失望しての涙か!?なんだ、これは…
「ぐすっ……ぐすっ、」
「ちょ、落ち着いて…泣かないで」
「ぐすっ、ぅ…う、ぁあ…」
大の大人がこんなにないているのをみるのは初めてかもしれない。何をすればいいのかわからない。
「…ほら、背中さするから……落ち着いて、 ?」
「ぅん、…ぐす…」
自分は人をなだめたり、寄り添ったりするタイプではないのを自負しているが、今は、原因がわからず泣いている友人を泣き止ませるために背中をさする。
……というか、いつのまにか立場が逆転してないか、?
【りうくん】が俺に説教、?する時間だったはずなんだが。今泣いているのは【りうくん】で、何が何だかわからなくなる。
「ずびっ、…ごめん……」
「いや、いいんだけど…」
「そう、、じゃなくて…それのことじゃなくて…」
「おれぇ、【ましゅー】が傷ついてるの気づけなかったの悔しくて…」
「辛いのは【ましゅー】のはずなのに……ぐすっ」
予想外の答えだ。自分が10割悪いことなのに、それに対して悔しいという感情を抱く純粋さというか。
なんか、自分は愛されているんだなと感じる。
「ね、ねぇ、もうやめよ…ぐすっ」
「おれ、【ましゅー】が傷ついてるとこ、自分を傷つけてるとこもう見たくないよ……」
「もっと、なかったの…リスカ以外で、、」
自分で傷つけた腕の方の手を割れ物を扱うかのように優しく握る【りうくん】。実際は割れ物というより腫れ物的なものなのだが。
リスカ以外になかったのという問いに対してあったと答えたら確実に嘘になる。嘘になってしまう。
知り合いやリスナーにはよく嘘をつくことがあるが、友人に嘘をつくときはなんか罪悪感というか謎の抵抗感がある。ましてや、【りうくん】だ。友人の中でもかなり仲が良い方。ちょっとやそっとの罪悪感ではない。
「なにが、辛いの…なんでこんなことするの……?」
「教えて、全部…教えて……」
そんなこと言ったって、自分だってわからないと言っているだろう。
辛さや苦しさの原因に気づいていれば、こんな手遅れな行為するはめにはならなかった。たとえわかっていたとしても、教えれるような強靭なメンタルがあれば、気を病んでいない。
ぜんぶぜんぶこういう運命を辿ることは決まっていたんだ。だから、その運命に抗えなくても、苦しい人生の痛みを少しでも緩和させられるように自傷行為をする。これは悪いことなのか。
「……泣かれても、困るよ」
「ね、やっぱりさ…辛いなら病院行こ、?寝れてないのもそれが原因なんじゃないの…?」
「行ったら少し変わるかもしれないじゃん…」
病院に行って、診断がおりてしまったらとうとう自分がどうしようもない人間と確定づけられてしまう。自分はおかしい人間だ、と認めているようなものだ。抵抗感がすごい。
ネットを見ていても、精神科は適当に話を聞かれて、通うたびに薬を増やされて、けどその薬もまともに効かないし、体質的に合わないし、という悪いイメージしかない。
ネットは切り取られた情報ばかりが回ってくる。その中には良い情報もあるが、もちろん悪い情報が切り取られている時もある。
自分が抱いている精神科のイメージは、切り取られた悪い情報なのかもしれない。だが、ここまで良い情報がほとんど回ってこないということは、そういうことなのだろう。
とにかく精神科には行きたくない。
「嫌…かも、」
「嫌とか言ってらんないでしょ、!こんな、、!こんな辛そうなのに……」
「………」
あー、めんどくさくなってきた。人の善意にこんな感情を抱くのは自分自身もどうかと思うが、どうしようもないことを解決しようとしても、解決する手段なんて限られてるんだから努力しないほうが合理的。なにもかもめんどくさい。【りうくん】は何もわかっていない。
そう、なんもわかっていないんだ。わかりたいだとか知りたいだとか、教えても理解できないくせに何を図々しく。
何にもわからないだろ。何にも知らないだろ。
苦しくて苦しくて、けどその原因はわからなくて。時間が経っても解決しなくて。毎日苦しくて。けど周りの人間と話すと一時的に元気になってしまって、けど話してる間も辛いという感情はあって。弱音をはくタイプではないし、人に話すのはもっと苦しいし。
苦しい苦しいこの苦しい時間を、人生を体験したことがないくせに。
「……わかんないから、言えるんでしょ…」
「だから…!だからわかりたいって!!知りたいって言ってるじゃん、!」
「…うるさい」
「……は、」
あ…言ってしまった。言ってしまった言ってしまった。数少ない大切友人である【りうくん】に。最低だ、本当に、最低だ。死んだ方がいい。本当に本当に、生きてる価値が一つもない。心配してくれる人を傷つけて、突き放して。
もう、こうなったら、こんなことになってしまったなら……二度と関わらない方がいいんじゃないか…【りうくん】が俺と関わるメリットなんて一つもないし、一緒にいても自分も【りうくん】も傷つくだけ…
「俺の苦しみも、俺のことも、なんも知らないくせに……」
「だから…!全部教えてって!!知りたいって、教えて欲しいって!」
「苦しさの原因がわからないことが苦しみだなんて、言っても理解できるはずがないでしょ…!」
「わかんねえよ、!何言ってんの…!?」
「ほら、!わかんないだろ……!!なら黙ってろって……ほっとけって…言ってんじゃん……!!」
早く、早く早く早く早く……!
もう、放っておいてくれ…
こんなことになるなら、もう1人でいた方がマシだ……辛いのも、苦しいのも全部自分だけでいい。はなから、自分の苦しみなんて、自分しか理解できないんだから他人に共有するものではない。他人に理解されないことも自分の苦しみになってしまう今は、誰とも、信頼できる友人とも、関わらない方がいい。今後一切関わってはいけない。負の感情を他人にまで、与えてはいけない。
「【ましゅー】……」
ほら、わかったろ。どうしようもないクズだって、救えないって…だからどうか見捨ててくれ……どうにもならないし、できないんだ………苦しい、苦しい……目の前の苦しみのことしか考えられない…
「もう、帰れば……?笑」
「なに…笑ってんの、」
「はは、」
「…もう、意味わかんない……」
「ちょっと、頭冷やしてくる……」
「【ましゅー】は寝てて。ここ4時間くらい、結局寝てないんでしょ…?」
と言って、【りうくん】はリビングの方に向かっていった。本当にシャワーでも浴びて頭を冷やす気なのか、それともただ考え事をしたいだけなのか。もちろん後者だと思うし、前者だったら頭がおかしいとしか言いようがないのだが。
【りうくん】は自分に失望したのだろうか。いや、してくれたのだろうかが正しいか。自分が望んだことだ、望んだ結果だ。距離をおくのではなくて、もう関わらない方がいいと思ってこんな選択をとったのに、心の奥底では少しだけ…いや、少しではないのかもしれないが、後悔というか…やっぱり嫌われたくはなかったな、という保身的な感情というか、なんというか…なんかもう…全部わからない……
あー…苦しい、苦しい……頭の中がごちゃごちゃしている、頭の中で虫が、寄生虫が動き回っているみたいだ…
本当は、本当は嫌われなくなかった…自分が正常なら、自分が壊れないなら、仲良くしていたかった……でも今はそれも、それすらもできない。
疲れた……あー、疲れた…今は何もする気力が、ない。
すぐ近くにあるベットにぼすっと乗り、疲れと、デエビゴの作用で気絶するかのように眠りに入った。
コメント
6件
めっっっちゃすきです…!!フォロー失礼しますm(_ _)m
コメ欄に湧いてるAIの文字数マジで分けろ♡♡♡ 精神的に追い詰められるましうーようつべが一番エロい。苦しそうなどぶちゃんねるが一番エロい。ruくんすれ違いすぎてて好きです・・・・。更新本当にありがとうございます
ああー…読んでて胸がぎゅっとなったよ… りうくん、泣いちゃうんだね。「悔しい」って言いながら泣くの、すごく人間だなって思った。ましゅーが「わかんないから言えるんでしょ」ってキレるシーン、めっちゃ痛いしリアルだった。お互いになんとかしたいのに噛み合わなくて、でもどっちも悪くなくて…このもどかしさ、すごいわかる。 こほうさん、こういう心の揺れを丁寧に描くの上手すぎませんか…?次が気になりすぎる!