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そして父が、
「休みの日は、俺と3人で広場に行って、匠くんとキャッチボールをしてたんだよ」と嬉しそうに話す。
「私は?」と聞くと、
「綾は、砂遊びをしたり、俺たちの周りを三輪車でぐるぐる走りまわったり、虫を取ったりしてた」と笑われた。
「ハハ、そうなんだ! 今は、虫はダメなんだけどね」
「ふふ」と匠に笑われた。
そして、私が「ちょっとトイレ」と席を外すと、その間も母は、匠に質問三昧だったようだ。
ひょんなことから、匠と家族が一緒に晩ご飯を食べることになってしまった。
2年半付き合った智之は、一度も我が家の敷居を跨ぐことはなかったのに、匠は、交際0日で軽々と突破した。いや、一応1日目になるのかな……。
──凄っ!
と思った。
そして、私が戻ると、
父が匠に、
「匠くん、うちの綾どうだい?」と、聞いているところだった。
──え? 凄く驚いた!
「それは〜?」と匠が確認すると、
「もちろん、嫁にもらってくれる気はないか?」と聞いていたのでとても驚いた!
「お父さん?」と私が言うと、
「あ、もうお前も25だろ?」と言う。
「まだ24よ!」
「どっちでも良いけど、結婚するなら匠くんみたいな人が良いと思ってな」と言う父に驚いた。
「え?」
父から私の結婚について、初めて語られた。
更に母も、
「そうよ、たっくんなら安心して任せられるわ。ご両親もよく知ってるんだし」と加勢してきた。
チラッと匠は、私を見て微笑み、きちんと座り直したので、私もつられて隣りに座った。
すると、
「え〜実は、今日から綾さんとお付き合いをさせていただくことになりました。よろしくお願いします」と匠が頭を下げて挨拶をした。
──マジか! 今言っちゃうのね〜
と思いながら、私も一度だけペコッとした。
「おお、そうか〜」
「そうなの〜まあ良かったわ〜」
「綾ちゃん、良かったわね」とお婆ちゃんまで。
「匠くんなら安心だ! 《《結婚前提》》でよろしく頼みます」と、父は、勝手に《《結婚前提》》にしてしまい、また匠と握手をしている。
「え!」と驚いた。
──ホントに、いつもの厳格な父はどこ行った?
ただ単に智之のことが気に入らなかっただけなのかなあ? と思った。
そして、匠もそれに乗っかって、
「こちらこそ、《《結婚前提》》でよろしくお願いします」と言った!
「え!」と思わず匠の方を見ると、また、ニコッとしている。
──何これ? どうなってるの?
あとで、母に聞くと、
昨夜、私が母と話したことを父に、
「綾、結婚したい人が居るみたいよ」と、言っていたようだ。
ただそれが誰かは、言ってなくて、今日まさかの匠が現れて、そうなんだ! と理解したようだ。
母は、分かっていたが、トモユキと言う名前を伏せてくれていた。
まさか、1日で相手が変わるなんて誰も思わないもの。
でも、《《結婚前提》》なんて言っちゃって良いのかなあ? と思った。
「じゃあ、乾杯しよう!」と父は上機嫌。
「あ、今日は車なんで」と匠が言うと、
「じゃあ、泊まってけば良いよ! 昔もよく泊まりに来てたぞ」と言った。
「え? そうなの?」と私が聞くと、
「そうよ〜埼玉に居た頃、週末は3人で遊んでお父さんが匠くんも一緒に連れて帰って来て、『泊める!』って勝手に言うものだから、いつも慌てて私がたっくんママに連絡して」と笑っている。
「そうなんだ。ただの誘拐じゃないの!」と言うと、
「そうそう、『誘拐して来た』って笑って」
「「ハハッ」」
「でも、2人も『結婚しゅる〜』ってチューしてて、可愛かったわよね」と言われて恥ずかしくなった。
「グッ」「ハハッ」
──やっぱりそうだったんだ
父もそれをほのぼのと見てたのなら良いけど……
妬いたりしなかったんだ。それだけ匠のことも大事に思ってたのだと思った。
「いや〜こんなに嬉しいことはないよ」と、徐々に酔って来た父は、更に上機嫌だ。
「大丈夫?」と聞くと、
「大丈夫、大丈夫」と言いながら、もうベロベロだ。
「お父さん、そろそろ寝ましょうか?」と、母が言うと、
「あ、じゃあ僕が」と、父を抱えて母と一緒に父の部屋まで連れて行ってくれたので、私が布団を敷いた。
「ありがとうね、たっくん」
「いえ」
「ありがとう」と私もお礼を言い、
「お母さん、いつまで《《たっくん》》って呼んでるのよ」と言うと、
「あ、それもそうね、ごめんね。《《匠くん》》ね、ふふ」と言った。
「あ、大丈夫です」と笑顔の匠。
お婆ちゃんも
「じゃあ、私もそろそろ失礼するわね。匠くん、ごゆっくり」と、自分の部屋へ向かう。
「ありがとうございます、おやすみなさい」
「おやすみ〜お婆ちゃん、ありがとうね」と言うと、
「うん、綾ちゃん、お幸せに〜」と言うお茶目なお婆ちゃん。
「うん、ありがとう。ふふ」
もしかすると、お婆ちゃんは、今朝作ったお弁当を食べたのが匠ではないことを分かっているのかもしれないと思った。
「おやすみ〜」と皆んなで手を振る。
そして、
「匠くん、お風呂どうぞ」と母。
「うん、入って来て」と私も言うと、
「ありがとうございます」と。
「着替え、お父さんのだけど出しておくわね」と母。
「ありがとうございます」
「綾、お布団敷くの手伝って」
「うん」
「あ、僕が……」と匠が言ったが、
「良いから良いから、お風呂入ってきて」と母。
私も「うん」と言うと、
「あ、はい」と、私がお風呂場まで一緒に行った。
母は、2階の私の部屋へ行った。
「なんか、ごめんね」と匠に言うと、
「いや、嬉しい〜」と、お風呂の前で私を抱きしめる。
「ふふ、言っちゃったね」と言うと、
「うん、言えて良かった」と喜んでいる。
「うん。じゃあ、お布団敷いて来るから、ゆっくり温まって」と言うと、
「うん」と私の額にキスをした。
「ふふ」私は手を振って、2階へと上がった。
母が匠の分の布団を出して、カバーを掛けてくれていた。
「ありがとう」と言って手伝う。
「良かったわね」と言う母。
「うん」
「で、《《トモユキ》》さんは、どうしたの?」と露骨に聞いて来た母。
「あ〜話せば長いんだけど……」と言うと、
「短めでお願いしま〜す」と言うので、
「酔って会社の女上司と浮気して、妊娠させたから別れた!」と話すと、
「はぁ〜! 何それ? そりゃあ、そんなの別れて正解だわ。匠くんの方が断然良いわ」と母。
そして、
「うん。それを今朝聞いてね。さっき、又ウチの前まで来てて、ちゃんと別れ話をしたら泣いてた」
「はあ〜? なんで《《トモユキ》》が泣くのよ! 自分が《《しでかした》》くせに」と、トモユキを呼び捨てにして怒っている母。
「あの人は、来るもの拒まずで、誰のことも断れないの。皆んなに優し過ぎるのよ」と言うと、
「そんなの優しさでもなんでもないわよ! 彼女が居るのに! それに、その女上司最悪! 若い部下と……トモユキも嵌められたんじゃないの?」と怒っている。
「そうかもね〜でも又同じことをしそうだし、許せない! だからもう未練はない!」
「そ、良かったわね、《《たっくん》》が居てくれて」
「うん。匠には本当に感謝してる」
「あ〜〜私もたっくんママに会うのが楽しみだわ〜」と母。
「気が早いって」
「でも、結婚前提って言ってたわよ」とニコニコしている。
「あれは、お父さんに言われたから」と言うと、
「でも、そのつもりなんでしょう?」と、
「うん、そうなれば良いなとは思うけど。まだ始まったばかりだし……」と言うと、
「ふふふふ、なら良いじゃない! あなた達は、既に幼稚園から始まってたのよ! お似合いよ」
と嬉しそうな母。
コメント
1件
綾ちゃん匠くんとの交際、親公認になって良かったね💕