テラーノベル
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2026/02/12
ボツを無理やり完成させたものです
・長い
・流血表現
・ちょっとだけ暴力
Ak視点
py「Akiraさん、リンゴ採れましたよ」
「お〜、ナイス。いい量じゃない?」
py「そうですね。数えますか。」
リュックに規則正しく詰められたリンゴを取り出し、個数を数える。
「…これ形悪くない?」
py「多少形よくなくてもいいってお母さん言ってましたし、これくらいなら大丈夫だと思います。」
「じゃあいっか」
形の悪い1個をぱくっと食べる。
py「お腹空きましたね」
「早めに戻ろ」
py「はい」
伏せていたオオカミが起き上がり、俺の両脇を守るような位置を得意げな顔で取った。
「じゃ、行こっか……」
ウ”ウ”ウ”…
py「ひっ…!」
クロスボウを構える。
「ピヤノ…!」
py「あ、きら、さん…!」
クロスボウの射線の先、ピリジャーに捕まってこめかみにクロスボウを押し付けられたピヤノ。
手が震える。相手は複数だ。ひとりを撃てたとしても、もう1人にピヤノが襲われる可能性の方が高い。
「っ…」
俺はクロスボウを投げ捨て、両手を上げる。
俺の意図に気がついたのか、次はオオカミの方をクロスボウで指す。
「…どういう意味だよ。」
奴らは俺達には理解できない言語で話すが、こちらの言語は理解できるはずだ。
奴らのひとりが首元を指し示し、ひっかくような仕草を見せる。
…なんとなく思考が読めた。オオカミを解放しろってことだ。
多分こいつらは俺達を基地に監禁するつもりだろう。オオカミはそれの邪魔になるし、俺達の重要な戦力。野に還して反乱をさせないつもりだろう。
そんな提案には乗りたくないが、人質を取られてる以上、下手な真似はできないし武器はもうない。
答えはひとつしか無かった。
「…ごめん、ママ。」
オオカミの首輪を外し、地面に落とす。
芝生に合わない水色の輪がふたつ。ピヤノの代わりに、彼のオオカミの首輪も外した。
「遠くに行くんだ。」
4匹のオオカミにそう呟く。一斉に駆け出していく背を見つめた。
「…これで満足かよ。」
奴らは目を細める。途端、後ろから腕を拘束されて思わず顔をしかめた。
よくわからん言語で話す奴らを横目に、同じく拘束されているピヤノと合流する。
py「ごめんなさい…油断してました…」
「大丈夫だよ、死んでないし」
py「ここからどうしましょう…」
「それは多分、大丈夫。あの子たち賢いから」
py「…!なるほど、っう!」
会話の途中で身体を強く揺さぶられ、思わずつまずきかける。
…これ以上、こいつらを刺激したら、本当に何をされるか分からない。
ピヤノに目配せをして、黙ってピリジャーの歩幅に合わせて歩く。
……少し歩いたところにそびえ立った、ダークオークと丸石の塔。
中に入れられ、階段をゆっくり登る。
(こんなところに基地あったのか…)
パパ、ママ、ピヤノと俺でマッピングした時は無かったはず。
ここから家まではあまり距離は無い。助けに来てくれる。妄想でもいいから、こうやって希望を見出しておかないと、精神的にきつい。
あとはほぼ賭け。解放されたオオカミが野生の本能に逆らって、家に帰ってくれることを願うしかない。
「頼む…っ…!」
誰にも聞こえないように、そう願った。
sm視点
台所で昼飯のシチューの下ごしらえをしていた。
Akiraとピヤノがふたりで近くを探索しに行っている。もうそろそろ帰ってくると思うが…
sh「おーい、手止まってるぞ」
「え、あ。」
sh「大丈夫か?」
「え、うん、ちょっとふたりが心配で。」
sh「大丈夫だって。みんなでマッピングした範囲までしか探索しないって。安全だったろ?」
「いやっ、いやぁ…でも…」
sh「まあまあ。料理手伝うよ。」
「あ、りがとう。」
キッチンに入ってきた彼。それと同時に、少し騒がしくなった外。
「…?お腹空いたのかな。」
sh「俺あげてくるよ」
「頼むわ」
ベランダから顔を出した彼。すると、その体勢のまま大きな声で俺を呼び出した。
sh「スマイルー?野良のオオカミがめっちゃ庭に入ってきてるけど。」
「え?他の子達、威嚇とかしてないの?」
sh「全然。」
「おかしいな…俺に見せて。」
彼のうしろから外を覗き込む。野良のオオカミが4匹、すぐそこで尾を振っていた。
「飯はやんないぞ〜…って、え、なんでっ、」
sh「スマイル?」
「この子たち、っ、Akiraとピヤノの…」
間違いない。
仕草、2頭どうしの仲の良さ、そして、唯一無二の前足の模様。
どうしてここに居る?じゃあ……
Akiraとピヤノは?
「…っ、ふたりが危ない…!」
オオカミ達が同意するかのように吠え出す。俺は咄嗟にすぐ近くのラックから上着を剥がし取って羽織る。シャークんはもうすでに準備万端なようで、窓の外を凝視していた。
「行こう!連れてってくれる?」
オオカミが吠えると、森に向かって走り出した。
俺とシャークんも、それを追うように走る。
「はっ…はぁ、はぁ……」
家を飛び出して数分。
走るオオカミと、それに難なくついていくシャークん。
筋トレくらいしかしない俺に体力があるはずもなく、息が上がって走れなくなる。
sh「荷物はこの子達に任せておけ、スマイル、こっち」
「え、ぁ、うん。」
リュックをオオカミに預け、シャークんの方に行くと、一気に身体が持ち上げられ、横抱きにされる。
「へ…っ!?」
sh「こっちの方が移動しやすい。掴まってろスマイル」
「う、うん…」
顔を背ける。
こんなだらしない顔シャークんに見せられない。
するとオオカミが走るのをやめ、地面を探り出す。芝生の中から何かを咥えてこちらにそれを見せつけた。
「首輪…!」
水色とオレンジの首輪。まさしくこの子達がつけていたはずのものだった。
ちぎられたり切られた痕跡はないから、丁寧に外されたのだろう。
では、誰かに脅された?人質になった…?
(…今はそんなこと考えてる場合じゃないな)
首輪を俺に渡すと、オオカミが次は匂いを辿ってゆっくり歩きだした。シャークんも、俺を降ろしてふっと気配を消す。
俺はリュックを背負い直し、できるたけ息を潜める。
低木や背の高い草をかき分け、広い場所が見えてくる。その真ん中にそびえ立つ、略奪者の前哨基地。
「こんな所あったか…?」
sh「いや、なかった。こんな短期間でこんなの建てられんのかよ…」
リュックから望遠鏡を取り出す。ここから低い位置に建てられたそれの、偵察デッキのような広いスペースを見る。
sh「周りは…特に変わったところはないな。」
「あぁ…」
「っ…!いた!ふたりとも…!」
sh「!どこに?」
「偵察デッキの…真ん中…拘束されてるっぽい。」
ピヤノをかばうように略奪者たちを睨むAkiraが見えた。
手は後ろでひとまとめにされている。
刹那、身の毛もよだつほどの殺気を感じ取り、望遠鏡を離して思わずその方向を見る。
前哨基地の方を見据えるエメラルドが、黒曜石のような黒を背に殺意を放っていた。
sh「…スマイル。」
「…なに?」
sh「我慢できない。」
「……俺も、許せない。可愛い子供を誘拐されて、許せる親なんていない。」
sh「……」
「シャークん。」
ポーションを数個、彼に手渡しする。
sh「……」
「俺もこの子達を連れて行く。…絶対に取り返そう。」
「……俺達の宝を。」
Ak視点
俺たちが持っていたリュックやポーチなどを物色するピリジャーを睨みつける。
俺の服の裾をぎゅっと掴んで震えるピヤノの手から、恐怖と不安をありありと感じた。
「大丈夫、だから。」
py「は、い…っ」
そう言った俺も、手が震えていることは自覚している。
俺だって怖い。いつ死んでもおかしくないこの状況が。
パパもママもいない。なら俺がピヤノを守らなければいけないんだ。
荷物を物色し終えたピリジャーが目の前まで歩み寄る。
直後、視界が真横にぶっ飛んだ。
「う”っ…!?」
py「Akiraさんっ…!?」
ジンジンと痛みを主張する頬から、殴られたことを感じ取る。
身体ごとぶっ飛ばされなかったのは幸いだった。俺は、ピリジャーとピヤノの間に割り入るように腰を据えて睨んだ。
Ak「ピヤノはやらせない、っ、からな…!」
その意味を理解したように気味悪く笑ったピリジャーが、クロスボウを持った手を大きく振り上げた。
あれで殴られたらひとたまりもない。でも、俺は絶対に引かない。
俺が守るんだ。
ぎゅっと目を瞑る。
(死ぬ…!)
確定したその未来を待った。
ドカァン!!
……でかい爆発音が、その未来を阻んだ事に気づくのに、そう長くはかからなかった。
py「わっ…!」
「ピヤノ…!」
塔が大きくグラつき、俺は咄嗟にピヤノの身体を支える。
TNTか何かが誤作動したのか、いやそもそもピリジャーはTNTなんて知らないはず…
「ぐっ、ぇ”…?!」
後ろから腕で首を抱えられ、そのまま身体を持ち上げられた。
ピリジャーが俺の首を絞めている。
上手く息ができなくて思わずえずく。
床に足がつかない。全体重が首元の腕に乗っかっていた。
(息、できないっ、しぬ、っ、)
目のまえが暗くなっていく。
おとが、きこえない……
「__て、!っ、__」
あ、ピヤノ、ないてる……
まもれたかな、ちゃんと。
よかった……
sh視点
「絶対にやらせねぇから。」
斧で略奪者の背中を叩き切る。
倒れるその身体を蹴り飛ばし、Akiraの身体をしっかり受け止めた。
「Akira!起きろ…!」
俺よりまだ小さい身体をびくんと震わせ、伏せられたアクアマリンが緩く開かれる。
Ak「ゲホッ!げほ、っ、かひゅ…」
「大丈夫、助けに来たからな……」
背中をさすると、弱々しく俺に抱きついた。
Ak「ぁ”っ…は、ぱぱ…おれっ、まもれた…守れたよ…ピヤノ…けがしてない…からっ、」
「あぁ…っ!えらい、えらいな、Akira…!大丈夫、あとは俺に任せるんだ……」
自分の命の危険を顧みず、俺たちが来るまでピヤノを守り抜いた、小さくて勇敢な背中を抱きしめる。
sm「シャークんっ!」
「スマイル!Akiraとピヤノを頼む」
sm「はっ…待て!ひとりで全員相手するつもりかよ!」
「ポーションあるから大丈夫。それにオオカミたちも居る。それに…」
「全員殺さないと、気が済まない…!」
まだピリジャーが多く残る外へ駆け出す。
斧でぐしゃりと粉砕される音、何かが抉られる音。
大量の赤を浴びまくる。俺は止まらなかった。
py視点
sm「はい、触るよ」
Ak「うんっ…いて、痛い!」
sm「我慢して」
Akiraさんとお母さんの様子をじっと見つめる。
あれから数日、僕たちはお母さん付きっきりで怪我を診られていた。
僕は小さい擦り傷や切り傷だけだった。その代わりAkiraさんは全治数週間の怪我ばかり。Akiraさんが守ってくれたから。
sm「あ〜もう、こんな細い首を絞めるとか…ふざけんなよ、マジで。」
Ak「大丈夫だって…もう全員倒したんでしょ!?」
sm「倒した程度で済むかよ、こっちは大事な子供たち傷つけられてんのに。」
お母さんが僅かに顔をしかめる。
あぁ、本気で愛されてるんだな、と呑気に考えていた。
…そういえば。
「あの、お母さん。お父さんは…?」
sm「んー全然怪我してなかった。矢が掠った傷とか、ちょっと頭痛いって言ってたくらいかな。」
「…す、すごいですね……」
あの日、お父さんはひとりで沢山のピリジャーを倒し切った。
全部が終わった後のお父さんは、見るからに怪我してそうなくらいに血塗れで立つのも苦しそうなくらいに肩や脚を震わせていた。
後から聞いた。あの時身体を震わせていたのは、まだ足りなかったから、怒りが収まらなかったからだと。
(お父さんは怒らせないように…ですね…)
とひっそり思った。
sh「おーい飯できたぞー」
「はっ、はい!」
sh「え、すごい元気じゃんピヤノ。」
「いや、なんでもないですっ」
sm「ここの処置終わったらすぐ行くわ」
sh「おっけ。先食べてようか、ピヤノ」
「はい!」
Ak「まってー!俺も食べたいっ!」
sm「まだ駄目だって!!」
みんなで笑った。
あの日から数週間、2人きりの外出がかなり制限されたのはまた別の話。
コメント
1件
神! Akiraさん、兄弟の事守ったりするのは偉いけど自分の命も大切にしなさい!それでAkiraさんがタヒんだら元の子もないよ((((急に叱るな))))