テラーノベル
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太宰治は躊躇っていた。真冬の川で入水を行うことに。
しかし、今日こそは死にたいとも思っていた。簡単に死ぬことはできないと分かっていながらも。
見つかる前に息耐えて仕舞えば良いもの。
真冬の川を前に震えながら簡単そうに言うが、失敗して仕舞えばその先には極寒が待っている。
川から出たら冷たい風がさらに体を冷やす。
真冬の川に入るのは寒中水泳をしているのと全く同じである。
そう考えると太宰は落ち着いた。同じ状況をやっている人がいると言い聞かせた。
もう昼前である。遅刻確定だ。ならば今から行っても後から行っても何も変わらない。
結局どちらも国木田に怒られるのだろう。悪いことを考える太宰は覚悟を決め、川に飛び込んだ。
次第に息が苦しくなっていく。やっと成功するのか。
やっと、今は亡き友人に会えるのか。やっと、誰かの悲しむ顔を見ずに死ねるのか。
だったら、私は織田作の言葉通りに果たせるのか。
冷たい水も悪く無い。慣れて仕舞えば問題ない。何よりこれから死ぬなら関係ない。
こう例えるのは少し癪ではあるが、童話の人魚姫の様に泡になって消えてしまいたい。
遺体なんて抜け殻、残らずに消えてほしい。
私の存在が忘れ去られてほしい。
そんな無茶な願いを聞き入れられる者は誰1人としていない。
私は列記とした社員であったし、元マフィアの最年少幹部でもあった。
そんな私が裏社会から勝手に存在を忘れられるというのか。
もしそうなら嬉しいが、そうはならない。
あぁ、もう全て忘れて今はただ眠りたい。意識が遠のく感覚を感じながら溺れたい。
この世界を忘れたい。
〜〜〜〜
馬鹿なやつだ。僕は川で溺れていた太宰を救い出してそう呟いた。
今度こそ危なかった。皆依頼があったもので、太宰を野放しにしていた。
救い出す者が誰1人としていなかった。
だからさっさと解決して真っ先に川へ来たのだ。
とてつもなく嫌な予感が頭の中でよぎったから。
そしてそれは的中した。
あと1分でも遅ければ此奴は手遅れだった。
もうすでに意識は無いが、生きてはいた。
僕はなるべく水を吐き出させ、すぐに探偵社へ運んで行った。
「お前が無理するから僕が来たんだからな。感謝してよ。」
勿論太宰は助かった。ただ、目が覚めた時は目は虚だった。
助かったと知って絶望を覚えたのだろうが僕は知らないふり。
だって、死のうとした太宰が悪いじゃ無いか!
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