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感動しすぎて涙でボロボロでした~…一つ一つがとても丁寧に書かれていて大好きな作品です!これからも定期的に見ていこうと思います☺️
こんにちは、あきです。
今回は1年前くらいにるなちのために書き下ろした1次創作のリメイク(iris様の水青ver.)を出そうと思ってます。
注意事項です。
注意事項
・iris様の2次創作、水青
・通報厳禁
それでもいい方、どうぞ。
天国生活2年目の僕は、ある不思議な噂を耳にした。
それは、現世に行くことができるという噂。
期間は3日間だけだそうだ。
でも、君に会えるのなら…僕は絶対に会いに行くよ。
僕・稲荷ほとけは交通事故で2年前に死んだ。
あの時は、彼女・猫宮いふとドライブをしていた時だった。
僕の後ろで、大きな音がした。
逆走した乗用車がトラックと衝突、その後横転したトラックが僕たちの車に激突した。
その勢いで僕たちは車ごと吹き飛び、窓を破る勢いのまま車に撥ねられた。
いふくんはなんとか一命を取り留めたが、僕は間に合わなかった。
あれから2年。
一瞬にして壊された僕らの幸せ。
ずっと会いたい人に、会えるチャンスがあるなら、この身を尽くして会いに行きたいと僕は思っている。
僕は、家の前を歩いていた神に話しかける。
「こんにちは。あの、神様。僕を…いふくんに会わせていただけないでしょうか?」
「ああ、稲荷さん。いふくんって、猫宮いふさんのことかな?」
「はい、そうです。」
答える僕の声は、震えていた。
「いふさんね。分かった。3日後に必ず戻ってきてくださいね。じゃないと…稲荷さんの魂は、もうこの世にもあの世にも…永久に存在できなくなる。そして、いふさんをはじめ、稲荷さんのことを知っている人の記憶の中から永久に忘れられてしまうから。もちろん、3日で戻らなければいふさんがこの先の未来で亡くなられた後、稲荷さんは会えなくなるということですからね。」
神は何度も僕に念押ししてくる。
「はい、承知いたしました。では、どうやって地上に向かえばいいのですか?」
「あの門を潜ればいいですよ。戻る時は強く心で念じてください。そうすればまたあの門が現れますから。」
神は門を出現させ、右手を差し出しながら説明する。
「わかりました。では、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
神に見送られ、僕は小さく呟いた。
「いふくん、待ってて。今、会いに行くから。」
そう言って目を閉じながら、僕は門を潜った。
爽やかな春風が桜を舞わせて、春の匂いを運んでくる。
俺・猫宮いふは仏壇の前で正座していた。
開けた窓から桜の花びらが舞い降りてきた。
「もう、君がいなくなってから2回目の春だね。」
小さく呟いて、花びらをそっと仏壇に供える。
ほとけが事故で亡くなって、2年経つ。今日はまさに2回忌の日だ。
「会いたいな、ほとけ…。ほとけは、死ぬ前に俺になんて言ったんだっけ…?あの時は怪我で意識が朦朧としてて、記憶に残ってないんよね…。」
いふくん。そう名前を呼ぶような、ほとけのか細い声が鼓膜を揺らしたような曖昧な記憶が脳内を掠めていた。
あの頃の記憶、なんで消えちゃったんだろう…。
ほとけの死を思い出したくないから?
人間の脳って結構都合よくできてるもんだよな。
そういうふうに何度も思い、記憶が残っていないことを恨んで、その度ほとけに死ぬほど会いたくなって、それでも会えないって事実に苦しんで…
それでも俺はほとけを見習って笑顔で生きていこう、と決めた。
多分、ほとけは俺の将来像を背中で語ってくれていたんじゃないかな。そう信じて、仕事にも熱心に取り組んできたし…
年下のくせに…でもそこがなんだか可愛くて、憎めない。
そんなところも俺は好きだ。
でも、「あの時」ほとけは俺に何を言ったんだろう。
それがずっと気になるあまり、この2年間そのことが、俺の心を蝕んできた。
桜がもう満開、といったところだろうか。
久しぶりに見た現世の景色に僕は少し感動しつつ、僕の2回忌が行われているであろう僕の実家を訪れてみた。
ガラガラ…となる引き戸の音の懐かしさ、実家の暖かな匂いで、胸が熱くなる。
「ただいま、みんな。帰ってきたよ…。」
僕は両手を広げながら声を響かせる。
きっと、仏間にいるんだな…みんなに早く会いたい‼︎
僕は、襖を開けて仏間に入る。
そこには、両親、いふくん、親戚のみんななど、たくさんの人がいた。
「みんな…‼︎2年間会えなくて寂しかっ…」
「ふ…襖が…勝手に、今…」
「あ、開いた…」
え?
え、いや、僕じゃん。え?何?まさか見えないって冗談で盛り上がって驚かそうと思ってるの…?
「ゆ、幽霊…」
えー…。
僕はがっかりした。
僕の姿は、みんなには見えてないんだな。
声も聞こえてないんだな。
せっかく話せると思ったのに…
「まあ、きっとほとけが戻ってきてくれたのよ。」
母親がそう言う。いふくんは赤く泣き腫らした目で「そうですね…。」と小さく呟いた。
そうだよ、きっとほとけが会いにきてくれたんだよ…
俺はそうやって自分を洗脳した。
少しでもこの悲しみを希釈したかった。
ほとけに会いたかったから。
あのほとけとの交際以来、俺は友達の勧めで合コンなんかに参加してきた。
しかし、ほとけを超えられる素敵な人は見つからず、自分はほとけ以外を愛せないことを悟った。
あの事故で、なんでほとけは亡くなったんだろう。
あの乗用車が、逆走なんてしなければ…
あの事故での死亡者はほとけ、ただ1人だった。
逆走した乗用車ドライバーにバチ当たればよかったのに。
ほとけじゃなくて、俺が死ねばよかったのに…
おまけに、俺は事故が起こった瞬間のことも記憶がない。
俺たちの車が吹き飛ばされ、道路に投げ出された俺たちは別の車に撥ねられたらしい。
それなのに、なんで俺だけ助かった…?
撥ねられた瞬間の記憶からがプツリと途切れている。
俺の頭の中の映画フィルムは都合よく切り取られていて、全貌を見ることができない。
仏壇を焦点の合わない目で眺める。
フレームの中でほとけが笑っている。
ほとけから笑顔を…命を奪うなんて…事故は怖いし、最低だ。
「いふくん、どうかした?なんか、焦点合ってないよ?」
「俺、気になってることがあって…。俺、ほとけと同じ病室で事故後に処置していただいていて…ほとけが逝く直前、俺に何か言ったんです。鼓膜を揺らしたのは確かなんですけど…でもなんて言ったのかわからなくて。そして事故の瞬間、俺たちの車はトラックの激突により、吹き飛ばされました。そこで、車に撥ねられたらしいんです。何故、俺だけ助かったんでしょうか…ほとけは、なんで亡くなってしまったんでしょうか…」
ほとけの母にそう告げた俺の手は、びっしょりと濡れていた。
きっと、涙がたくさんこぼれたんだろう。
「私も…最期の瞬間に立ち会えなくて…詳しいことはわからなくて…でも、あの子のことだから、いふくんに対する思いとかを語ったはずよ。」
「そうですね…俺のことをいつも気遣ってくれる、優しいほとけのことだから…」
さて、これからどうしよう?
「この世」に来てからもう2時間が経過していた。
それなのに僕はあくまでも亡者で、何もできない。
どうしたらいふくんに伝えられる…?あの日の「真実」を…
いふくんに伝えたい。
そのことを聞いて少しでも前向きになって欲しい。
新しい出会いを大切にして欲しい。
いふくんのことをしっかり支えられる人にたくさん出会って欲しい。
願うことはどれだけでもできる。
あとは実行しなくてはならない。
不器用な僕にでもできる方法は…
僕は、仏間の方に耳を傾けてみる。
「ああ、天国から手紙が届けばええのに…」
「私も、あの子の最期をもっと知りたい…」
そうか…手紙だ‼︎
この世にとどまれるのはあと「70時間」。
その間に君への最後のメッセージを届ける。
不器用な愛情だけど、いふくんならきっと大切にしてくれる、解ってくれる。
そう信じているから…待っていてね。
残り70時間
まずは、僕の生前のお気に入りだった封筒と便箋を取り出した。
若草で彩られたその便箋は、白地に青や水色の雫が映えていてとてもやわらかな感じがして気に入っていた。
封筒は普通に白色で、封筒を止めるためのシールがサイコロになっている。
どんなことを綴ればいふくんは前を向ける?
天国での生活の様子も入れてみたほうが良いのかな?
全然わからないけれど、僕の素直な気持ちを手紙にしたい。
「拝啓、僕の愛するいふくんへ。」と、1行目に書く。
文字を書くことなんて、なかなか久しぶりだ。
「一応、これはいふくん宛の手紙だよ。でも、これは僕の母さんといふくんの2人で読んで欲しい。」
「天国から3日間という期限の中で地上へ来てみたよ。最近の生活はどう?今は新たな恋人ができていたりするのかな?僕は天国で、ずっといふくんたちに会いたかったよ。あの襖が勝手に開いたって騒ぎ、あれは僕が開けたんだ。僕の母さんが言った通り、本当に僕が来たんだよ。いふくんと母さんなら信じてくれるよね…?」
少し期待を込めたような文を書き進めていく。
ペンを握る手がぷるぷると震えている。
これがいふくんに、いふくんが生きているときに送れる最後の手紙なんだ、と思うと緊張がとめどなく溢れてきたのだろう。
残り69時間
しまった…不器用すぎて、ここまでの作業に1時間も要してしまった。
僕は本当に69時間でこの手紙を書き上げることができるのだろうか?
自分の不器用さを恨みながら、ペンを走らせ続けること1時間で書けた内容はたったの5行。
本当に大丈夫か心配になってきた…
僕は、もう1度仏間に戻る。
そこで、成美が話をしていた。
「俺がほとけと過ごした中で1番印象に残ってること…それはほとけからラブレターをもらった時だな。ほとけ、あまりにも不器用すぎてちゃんと真面目に書こうと思ったのか、時候の挨拶とかから書いて、いやいや、固すぎやろ‼︎とか言って笑い合ったのを今でも覚えてる。だから俺、ほとけに言ったんです。『手紙を書くときは、そんなに型にはめなくていいんやで。自分の思ったように書けばいい。』ってね。」
「ラブレターかぁ…ほとけ、ラブレターの意味分かってるのかしら?時候の挨拶から始めるなんて…もうラブレターじゃないわよ‼︎」
仏間トーク、今「手紙」話題のようだ。
懐かしいな…なんでこんなに大切なこと、忘れてたんだろう。
僕が思ったように書けばいい、ただそれだけのことじゃないか。
この手紙で、いふくんを救おうと考え続けたせいで、傷つけてはいけないから…とか考えすぎてる僕がダメだったんだな。
僕が書ける全てをここに書けばいい。
自分だけの言葉で…
「僕は天国で今、幸せだよ。あの時、あの行動をとってよかったと思ってる。あの時命を懸けていふくんを守ったことに後悔はしてない。僕の人生と、そしていふくんとの日々を振り返ろうか。そして最後にあの日の『真実』を教えるからさ。」
一息つくと、窓辺で鶯が鳴いていた。
美しいその歌声にうっとりしてしまう。
残り68時間
「僕は幼少期、父親を亡くしたんだ。病気で父親は亡くなった。女手1つで育ててくれた母さんにはずっと感謝してたよ。仕事も忙しそうだし、なかなかゆっくり眠れてなかったみたいだけど…でもその中で僕を幸せにしようと毎日努力してくれた。そんな素敵な母さんでした。本当に今までありがとう。それでも僕はやっぱり、学校とかの授業参観で両親が観に来ている家庭はいいなぁ、って思ってたよ。そりゃあ、父さんにも母さんにも、僕の成長や努力を見て欲しかったから。母さんも忙しい中スケジュールを確保して、毎回来てくれて本当にありがとう。それだけでも僕は本当に嬉しかった。そんな小学生時代を過ごして、中学校に上がった時だった。たまたま名簿順とかで並べた席がいふくんと隣になって、僕はいふくんのかっこよさや優しさ、底抜けな明るさ、賢さにどんどん惹かれていきました。本当に素敵な、自慢の彼女です。生涯愛したのは、いふくんだけだよ。まあ、そんな愛情は後でたっぷり語るとして。その中学生時代、僕なんかじゃいふくんに釣り合わないんじゃないか、って思って僕はどうしたらいふくんに振り向いてもらえるか?ってずっと考えてた。それでも、恋愛経験のない僕は、全然思いつかなくて。そこで、チャンスが訪れた。いふくんがいじめられたっていうチャンスが。いふくんはきっとハイスペックだからこそ、それを羨んだ人たちが陰口を言ったりしたんだと思った当時の僕は、いじめっ子の中に飛び込んで、いふくんを助け出すことになんとか成功したんだ。それで、君を振り向かせることに成功した。そこからが僕らの恋人としての原点だね。いふくんは本当に優しい人だよ。僕が、これまで会った人の中で母さんと並んで1番優しいと思う。そのくらい。そんな優しい君に好いてもらえて、僕はこの人生本当に最高だった。いふくんはもしかすると、『あの事故で俺が死んでたらよかったのに…』とか思っているかもしれない。だからこそ、言わせて欲しいことがある。ここからが本題だからね。」
おお、かなりの長文になってきたな、と思った今はまさかの残り時間48時間という2日目突入の瞬間だった。
もう時間が…僕はかなり焦燥感に追い詰められた。
正直言って、この手紙は封筒に収まらないんじゃないかと不安になってくるような量だった。
でも、いい。
後2日で絶対に書き上げる。
いふくんに…伝えなきゃいけないから。
「おはようございます。」
「おはよう、いふくん。朝ご飯できたから、食べておいてね。」
事故の後、ほとけと同棲していたマンションで暮らすとあの事故が蘇ってきそうで怖かったので、ほとけの実家で暮らさせてもらっている。
ほとけの母・渚沙さんはとっても優しくしてくれる。
俺は、フォークでソーセージを刺しながらほとけのことをただ思い続けた。
何故あの時俺は骨をそんなに折らなくて済んだのか。
何故ほとけは身体の損傷が大きかったのか。
俺と比べて倍は怪我を負っていそうだったほとけ。
痛々しい姿がフラッシュバックして、軽くむせる。
俺をなんで置いていくの?
俺も連れて行ってよ…何で…?
2回忌の後日である今、そのことが俺の思考の全てを支配している。
ほとけ、ほとけ…何度も俺は脳内で彼の名前を呼んだ。
頭がズキズキと痛む。
「どう、キムチいる?」
俺は、渚沙さんの言葉で我に返る。
「あ、じゃあもらいますね」
俺は好物であるキムチを食べて、気持ちを少し希釈する。
いくらか思考がクリアになったような気もする。
「ごちそうさまでした。」
俺は食器を下げ、洗う。
洗い終わった直後、急に視界がぼんやりと狭窄してきた。
あれ…何これ?
頭の中が曖昧になってくる。
突然、俺を睡魔が襲った。
急いで自分の寝室に駆け込み、布団を被った。
残り36時間
地上に来て、期限まで半分ときた。
どうにか僕は手紙を書き上げることができた。
愛を込めて、僕と母さんのためを思って。
自分の言葉でちゃんと書き上げた。
いふくんには姿は見えないかもしれないが、会いに行こう。
僕は居間に入る。
あれ…?
いふくんがいない…
どこに行ったんだろう?
「いふくん‼︎どうして急に…」
あれ、母さんの声?
2階から聞こえる…。
いふくんの部屋か?
僕は急いで階段を登る。
嫌な予感が全身で感じられた。
「いふくん…‼︎」
そこには、ベッドに縋りついて泣く母の姿があった。
いふくんは…?
必死に目を動かして、目の前のベッドに焦点を合わせる。
ベッドの中でいふくんは眠っていた。
母さんが必死にいふくんの体を揺さぶるが、いふくんはピクリとも動かない。
「いふくん、起きて‼︎」
突然眠りに落ちた、ということなのだろうか?
いふくんは大丈夫なのか…?
僕は冷や汗が止まらなかった。
いふくん…どうして急に眠りに落ちたの…?
届くはずなんてないかもしれないけど…いふくんの恋人として、いふくんを起こそう。
どうにかして叫び続けよう。
「いふくん‼︎」
「…ふ」
「ふ…く」
服?
ここには服なんてないけれど。
俺はどこまでも白い空間の中にいた。
ここはどこなのだろうか、天国?
「い…ふ、くん」
いふくん?
俺のこと?
何故だろう、俺の名前が聞こえている気がする。
誰かの声だ。
これは誰かの声だ…
「き…ね、って…」
言葉がはっきりと像を結ばない。
何と言っているのだろう?
頭の中でよくわからない言葉が彷徨い続け、俺を混乱させる。
「なぁ、お前は何て言っているんだ⁉︎」
急に静まり返った。
水を打ったような静けさに、少し後ずさりしてしまう。
「いふくんは眠っているんだ‼︎でもきっとそれはいふくん自身の思考のせいだよ‼︎いふくんが何かを手に入れるために自ら眠ったんだ‼︎聞こえる?僕はほとけだよ‼︎」
ほとけ⁉︎
どうして…?
俺が「何かを手に入れるため」に眠った…?
気づくと、そこには円筒が転がっていた。
「何…これ?」
俺はそれを拾い上げ、広げようとする。
するとその円筒は勝手に開いていき、何か細かい写真のようなものをたくさん見せる。
「映画のフィルム…」
その言葉が自然と俺の口をついて出た。
このフィルムは何の映画なんだろう…?
ああ、ぼかしがかかっていてよく見えない…
俺に見せて、続きを…そしてそれは一体何なのか…
俺はゆっくりとそのフィルムの端を掴む。
そのまま掴んで離さなかった。
再び視界が狭窄して、この空間に自分が吸い込まれていくような錯覚に襲われる。
「いふくん‼︎」
「渚沙さん…ああ、ほとけ…‼︎」
「いふくん…?」
「渚沙さん、一緒に仏間に来てください。さっき、ほとけが俺をそう導いたんです‼︎」
信じてもらえないかもしれない、でも俺は確信している。
「そうなの…?じゃあ、行ってみようかしら。」
残り1時間
まずい、残りはたったの1時間だ。
僕はもう、ここにはいられなくなる。
本当はもっといたかったなぁ…そう思い、仏間に座っていた。
胸の中に熱い感情が湧き、涙となって溢れ出る。
その時、襖が開いて2人の人が入ってくる。
いふくんと母さんだ…
「あった…‼︎これだ、ほとけの手紙‼︎」
「え⁉︎て、手紙…がある‼︎」
2人とも、すごく驚いてる。
そうなると分かってたけどね。
「読みますね。」
拝啓、僕の愛するいふくんへ。
一応、これはいふくん宛の手紙だよ。でも、これは僕の母さんといふくんの2人で読んで欲しい。
天国から3日間という期限の中で地上へ来てみたよ。最近の生活はどう?今は新たな恋人ができていたりするのかな?僕は天国で、ずっといふくんたちに会いたかったよ。あの襖が勝手に開いたって騒ぎ、あれは僕が開けたんだ。僕の母さんが言った通り、本当に僕が来たんだよ。いふくんと母さんなら信じてくれるよね…?僕は天国で今、幸せだよ。あの時、あの行動をとってよかったと思ってる。あの時命を懸けて成美を守ったことに後悔はしてない。僕の人生と、そして成美との日々を振り返ろうか。そして最後にあの日の「真実」を教えるからさ。
僕は幼少期、父親を亡くしたんだ。病気で父親は亡くなった。女手1つで育ててくれた母さんにはずっと感謝してたよ。仕事も忙しそうだし、なかなかゆっくり眠れてなかったみたいだけど…でもその中で僕を幸せにしようと毎日努力してくれた。そんな素敵な母さんでした。本当に今までありがとう。それでも僕はやっぱり、学校とかの授業参観で両親が観に来ている家庭はいいなぁ、って思ってたよ。そりゃあ、父さんにも母さんにも、僕の成長や努力を見て欲しかったから。母さんも忙しい中スケジュールを確保して、毎回来てくれて本当にありがとう。それだけでも僕は本当に嬉しかった。そんな小学生時代を過ごして、中学校に上がった時だった。たまたま名簿順とかで並べた席がいふくんと隣になって、僕はいふくんのかっこよさや優しさ、底抜けな明るさ、賢さにどんどん惹かれていきました。本当に素敵な、自慢の彼女です。生涯愛したのは、いふくんだけだよ。まあ、そんな愛情は後でたっぷり語るとして。その中学生時代、僕なんかじゃいふくんに釣り合わないんじゃないか、って思って僕はどうしたらいふくんに振り向いてもらえるか?ってずっと考えてた。それでも、恋愛経験のない僕は、全然思いつかなくて。そこで、チャンスが訪れた。いふくんがいじめられたっていうチャンスが。いふくんはきっとハイスペックだからこそ、それを羨んだ人たちが陰口を言ったりしたんだと思った当時の僕は、いじめっ子の中に飛び込んで、いふくんを助け出すことになんとか成功したんだ。それで、君を振り向かせることに成功した。そこからが僕らの恋人としての原点だね。いふくんは本当に優しい人だよ。僕が、これまで会った人の中で母さんと並んで1番優しいと思う。そのくらい。そんな優しい君に好いてもらえて、僕はこの人生本当に最高だった。いふくんはもしかすると、『あの事故で俺が死んでたらよかったのに…』とか思っているかもしれない。だからこそ、言わせて欲しいことがある。ここからが本題だからね。あの事故の時のこと、話させてね。
僕といふくんの乗った車が逃走していた乗用車とぶつかったトラックと激突して、車ごと僕らは吹き飛ばされた。窓を破って宙に放り出された僕は、これはまずいと思った。いふくんだけでも守らなくてはいけない、って。あの時みたいに。それで、空中でいふくんに手を伸ばして、どうにかいふくんを抱き止められた。着地寸前で本当にヒヤヒヤしたけどね。そして、僕の背中を車のボンネットが撥ねていたって感じ。その時、まだ僕はいふくんを抱きしめていたから、いふくんはまだ重症ってところで済んだかな。
僕はあの時命を懸けていふくんを守りたかった。これは僕の判断だ。だから、いふくんにその後「自分が死ねばよかった」なんて思ってほしくないんだ。いふくん以上に愛しい人はこの地球上にいないと思う恋人の僕が、最期に君の命を繋ぎたかった。ただそれだけの感情任せの行動だ。あの時ボンネットに当たっていたのがいふくんのお腹とかじゃなくてよかった。僕の背中でよかった。
そして、君と同じ病室で最期に言った言葉を教えるね。「いふくん…多分僕は…もうダメみたい。きっと死んじゃう。だから、僕の分も生きてね。いふくんが前向きに生きられなかったら、僕も天国できっと幸せになれない。いふくんの笑顔が多くの人の心を救済してるってこと、忘れないでね。大好きだよ、いふくん。」これが最期の君への愛の言葉でした。
母さん、僕を丈夫に産んでくれてありがとう。事故死するとは思ってもいなかったけど、きっと僕の体だったら100年生きれたと思います。いふくん、僕のことを好きになって、好きでいてくれてありがとう。君との出会いが僕を成長させてくれて、最期もあの行動をとろうって思える愛しい人です。これからも、2人のことを見守ってるね。多分この手紙を読んでるってことは、そろそろ僕は天国へ戻らなきゃならない。僕のこと、忘れてもいいよ。でもね、2人に感謝してるってことだけは忘れないで欲しい。
これからも、生きてね。
稲荷ほとけ
「ほとけ…俺も後何10年かしたらそっちにいくから…その時『ほとけが繋いでくれた命で、しっかり生きました。』って胸を張って言えるような人生にするから。安心して待っててな。」
「私は、立派なほとけの世界で1人の母親でいられてとっても幸せです。ほとけ、立派な子に育ってくれてありがとう。」
2人の感謝の声が嗚咽混じりに聞こえる。
もう、後1分しかいられないのか。
寂しさを噛み締めながら、僕は最後に叫ぶ。
「2人とも、ありがとう。大好きだよー‼︎」
僕は、晴れ晴れとした気持ちのまま、門を潜り抜けた。
ほとけからの思いを今日、俺はちゃんと受け取ることができたのではないか、と思う。
ほとけの2回忌。
これを大きな節目として、また前を向こう。
なんだか不思議なことも起こるんやなぁ…。
外の新鮮な空気を吸うと、桜の花びらが手の中へ入った。
僕は母さん、いふくんみたいな本当に優しい人たちがいたからこそこんな人間に成長できたんだよね。
幸せな人生だった。
雲の合間を縫って吹いてきた春風の中に、1枚の桜の花びらが紛れ込んでいた。
はい、これで以上となります‼︎
今回ほんとに長いです、ごめんなさいww
OPとかEDも含めたら10000文字以上…w
個人的に、結構気に入ってた作品がもう一度見つかったので、リメイクできて嬉しいような気もします。
今と作風が結構変わってるし、元の小説はNL設定だったし。
まぁ、今回はだいぶ真面目なやつになりましたね…ww
いや、でもこれ書いたの1年前のこの時期とかじゃね?
なんとなく1学期中だったような気がする。
すごいわ…ww
まぁ、かなりの力作な気はするので、これ読んで感動していただけたら幸いです。
あと、サムネは適当にiPadの純正アプリで描いたんすけど、割と凝ってるのでしっかり見ていただけると。
是非、いいね、感想(コメントより投稿の方が確実に届きます。タグは「#みてみてあき兄」でお願いします!)、拡散、、ブクマ登録、フォローなどよろしくお願いします!
ということで!
おつあきでした~ッッ!!