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翌日の昼休み。
チャイムが鳴った瞬間、若井は椅子を蹴る勢いで立ち上がった。
「元貴! 急げ! 焼きそばパンが戦争なんだよ!」
「またそれか……」
俺が立ち上がる前に、若井はすでに廊下を爆走していた。
購買部の前はすでに行列。
みんな同じものを狙ってる。
若井は人混みをかき分け、見事に焼きそばパンをゲットして戻ってきた。
「勝利!」
「……そんなに必死になる意味ある?」
「バカ、お前これ食ったら人生変わるから」
そこへ、背後から柔らかい声がした。
「二人とも、仲いいね」
振り返ると、涼ちゃんが紙袋を提げて立っていた。
「涼ちゃん……昼ごはん?」
「うん。僕は購買じゃなくて外のパン屋さん。ほら」
袋から取り出されたのは、
見たことないくらいオシャレなクロワッサンサンドだった。
若井がジト目で見つめる。
「おい涼ちゃん、それ反則じゃない? 購買戦争に参加しろよ」
「僕は争い事はあまり好きじゃないからね」
そう言ってにこっと笑うその顔が、なんかずるい。
結局、俺は若井から半分の焼きそばパンをもらい、涼ちゃんのクロワッサンも少しもらった。
「……元貴、今一番得してるよな」
若井がむくれたように言うと、涼ちゃんがくすっと笑った。
「元貴くんは食べ方が美味しそうだから、あげたくなるんだよ」
「…いや、それ褒めてます?」
「褒めてるよ」
昼休みの終わり、どうでもいい話をしながら3人で笑った。
なんでもない時間なのに、妙に心に残るのはどうしてだろう。