あの時じゃなければ、

水の魔女とカレン〜命の灯火〜

規律を重んじる水の魔女と、奔放な火の魔女カレン。慎重すぎる自身の判断で救助が遅れ、母娘を死なせてしまった水の魔女は激しい後悔に崩れ落ちる。死に気づかぬまま母を案じた少女の霊に対し、カレンは「火が怖い」という本心を隠し、行く道を照らす黄金の火花を夜空に放つ。救えなかった命への無力感に震える二人は、互いの手を握り締め、背負った罪と共に暗闇を歩み出す。命の灯火と祈りを描く、喪失と再生の物語。

水の魔女〜最愛の切れ目〜

「天空の聖所」は、生者と死者が交差する静謐な境界線。若き水の魔女は、死別した最愛の彼に会うため、自らの鼓動を魔力に変えて通行料を払う。だが、人々を救うほど彼女の中に「生」の力が満ち、死者である彼との距離は開いてしまう。絶望する彼女に、彼は「君の魔法の中に僕はいる」と語りかける。彼女は再会の約束を胸に、彼への愛を魔法に変えて世界を癒やし続ける。いつか命が尽き、ただの少女に戻れるその日まで。

水の魔女〜嵐の中の幻想〜

旅の途中の嵐を避け、水の魔女は森の廃墟へ逃げ込む。そこで出会ったのは、数百年も主人のペンダントを捜し続ける孤独な幽霊の少女だった。魔女は恐怖を堪え、魔法で泥の中から遺物を見つけ出す。願いが叶い、人間の温かな笑顔を取り戻した少女は、お礼に「記憶の味がする飴」を渡して光の中へと消えていく。翌朝、屋敷も少女も消えた草原で、魔女はポケットに残った飴の甘さを噛み締め、一人清々しい空の下へ歩き出す。

水の魔女〜聖なる幼女の願い〜

かつて愛する者を救えぬ無力さに泣いた少女は、死の淵で「誰かを幸せにしたい」と願い、人間を辞め水の魔女となりました。不老の力と引き換えに家族との別れを受け入れ、魔法を使うたび自身の存在は透明に透け、いつか露となり消える宿命を背負います。人間だった頃の温もりを記憶に刻み、彼女は孤独な旅を続けます。自分の命が尽きるその日まで、誰かの絶望を希望に変える「幸福の運び手」として生きるために。

水の魔女〜父の鼓動を刻む時計〜

魔法の暴走から私を庇い、命を落とした人間の父。以来数百年間、私の時間は父の形見である「止まった懐中時計」と共に凍りついていました。しかし「鋼の魔女」の手で時計が動き出した時、溢れた霧の中に父の微笑みが現れます。長年の後悔を告げ、父の愛に触れた私は、時計の刻む音が父の鼓動そのものだと気づきました。それは過去を悔やむ遺品ではなく、父が繋いでくれた私の「明日」を刻む道標へと変わったのです。