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毒って少量なら、薬になるらしいですよ
「薬になる量だけ、飲ませて」
「……また増えてる」pr
prは、洗面台の横に並んだ薬のシートを見て眉をひそめた。
睡眠薬、抗不安薬、頓服。
空になった銀色のシートが、ごみ箱から溢れている。
「べつに。死ぬ量じゃないし」
ベッドの上で、tgは笑った。
その笑い方が、いちばん嫌いだった。
“助けて”って顔してるくせに、 絶対にそう言わないから。
「死ななきゃいいって問題じゃない」
「でもさ」
tgはシーツに頬を埋めたまま、くぐもった声で言う。
「薬って、毒なんでしょ」
prは黙る。
「少しなら治すのに、いっぱい飲んだら壊れる」 「人間みたいだよね」
「……誰の受け売り」
「忘れた」
嘘だ。 tgは覚えている時ほど、“忘れた”って言う。
prはごみ箱を蹴飛ばした。
空シートが床に散る。
「俺は、お前がそうやって笑うの嫌い」
「知ってる」
「心配させたいだけなら、やめろ」
その瞬間。
tgの目が、ほんの少しだけ傷ついたみたいに揺れた。
「……じゃあ、心配してるんだ」
しまった、と思った。
この男は、愛情を確認するためなら、 平気で自分を壊す。
熱を測るみたいに、 どこまで飲めば、どれだけ抱きしめてもらえるか試してる。
「ねえprちゃん」
tgが笑う。
今度は静かな笑いだった。
「俺、お前には毒?」
prは近づいて、tgの口を塞ぐみたいにキスした。
薬の匂いがした。
苦い。
「……違う」
唇を離して、額を押しつける。
「量がおかしいだけだ」
prが小さく息を飲む。
「お前は、少しなら救われる」 「でも、俺が欲しがりすぎると、たぶん死ぬ」
部屋が静かになる。
エアコンの音だけがしている。
tgはしばらく黙っていたけど、 やがて、ぽつりと言った。
「じゃあさ」
「prちゃんが、管理してよ」
「……は?」
「薬って、用量守れって書いてあるじゃん」
tgは泣きそうな顔で笑った。
「俺、自分じゃわかんないから」 「どこまでなら、生きてられるのか」
prは何も言えなかった。
ただ、tgの細い手首を掴む。
脈が、ちゃんとあることを確認するみたいに。
「……一回だけ言う」
「お前は毒にもなる」 「でも、薬にもなる」
tgが目を閉じる。
「だから、勝手に overdose すんな」
その夜、 tg は珍しく薬を飲まなかった。
代わりにprの腕を掴んだまま、 朝まで眠っていた。
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コメント
4件
クオリティえぐない?
すごすぎやしませんか?