テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
907
旅人
99
任務帰還後・数日
副作用長期残存観測編
再投与試験から三日。
数値上、薬効は完全に消失していた。
治癒促進値――通常域。
だが。
ドットーレは端末の前で眉を寄せていた。
ド「……おかしい」
追加記録を確認する。
ド「任務訓練中の心拍数上昇率……高い」
別データ。
ド「戦闘後回復時の神経活動……過敏」
さらに。
ド「私の研究区画への訪問頻度……増加」
仮面の奥で笑みが浮かぶ。
ド「薬効は切れている」
だが。
ド「副作用だけが残っている」
小さく呟く。
ド「興味深いね、隊長殿」
⸻
呼び出し
召集通知は送らない。
代わりに――
廊下で偶然を装って接触した。
ド「隊長殿」
カ「……何だ」
ド「少し時間をもらえるか」
カ「任務中だ」
ド「副作用の経過観察だと言えば?」
沈黙
カ「……短時間だ」
⸻
研究区画
測定器具は最低限。
拘束も無い。
ド「安心したまえ。投与はしない」
カ「当然だ」
ド「今日は観察だけだ」
脈拍センサーを装着。
ド「安静時心拍――やや高い」
カ「訓練後だ」
ド「三時間前だね」
カ「……」
ドットーレは次に、
距離を詰めた。
カ「…何をしている」
ド「環境刺激テストだ」
至近距離
呼吸がわずかに重なる。
センサーが反応音を出す。
ド「……上昇」
カ「距離を取れ」
ド「まだ基準測定中だ」
さらに一歩。
センサー音が速くなる。
ド「興味深い」
カ「測定をやめろ」
ド「副作用は残っている」
低く続ける。
ド「薬効は消えたのに、
神経だけが“近接刺激”を覚えている」
カ「……」
ド「つまり――」
仮面越しに視線を合わせる。
ド「私に対する反応が残存している」
カ「断定するな」
ド「では検証しよう」
首元へ手を伸ばす。
脈を直接測る。
カ「触れるな」
だが振り払わない。
ド「皮膚温上昇」
指先でわずかに測定。
ド「発汗反応も微量」
カ「……副作用だ」
ド「そうだ。副作用だ」
だが声が低い。
ド「だが原因刺激は私だ」
沈黙
空気が静かに熱を帯びる。
ド「興奮作用は終わった」
ド「だが身体が、距離と接触を記憶している」
カ「……実験結果の誇張だ」
ドットーレは笑う。
ド「では証明してみたまえ」
カ「何をだ」
ド「この距離でも平静を保てると」
さらに距離を詰める。
吐息が触れる位置。
センサー音が速くなる。
ド「心拍上昇」
カ「……機器誤差だ」
ド「では外そう」
センサーを外す。
だが距離はそのまま。
ド「これで数値は見えない」
低く囁く。
ド「それでも平静か?」
沈黙。
数秒。
カピターノの手が、
ドットーレの手首を掴んだ。
だが押し返さない。
ただ止めるだけ。
カ「……観察は終わりだ」
ド「まだだ」
カ「終わりだ」
声は低いが荒れていない。
理性はある。
だが体温は高い。
ドットーレはその反応を見て――
満足そうに息を吐いた。
ド「結論が出た」
カ「何だ」
ド「副作用は長期残存している」
カ「……」
仮面越しに笑う。
ド「私に対して反応が強い」
カ「……根拠不足だ」
ド「では追加観察を――」
カ「断る」
即答
ド「残念だ」
だが退かない。
ド「だが安心したまえ」
カ「何がだ」
ド「この副作用は危険ではない」
少し間を置き――
ド「むしろ有用だ」
カ「……どういう意味だ」
ドットーレは静かに答える。
ド「私が近くにいれば、
君の神経反応は常に最大域に近い」
ド「戦闘効率は上がる」
カ「……屁理屈だ」
ド「科学的事実だ」
数秒の沈黙。
やがてカピターノは手を離した。
カ「……観察は終わりだ」
ド「今日はね」
背を向ける彼に告げる。
ド「副作用が消えるまで、定期観察が必要だ」
カ「行かない」
ド「では私から行こう」
足が止まる。
ドットーレは笑う。
ド「長期残存の経過は、
至近距離で観察する必要があるからね」
沈黙。
返答は無い。
だが否定も無い。
⸻
研究記録・追記。
副作用:長期残存
近接刺激に対する神経過敏
特定対象限定
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!