テラーノベル
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翌朝。
「……颯太。」
「ん?」
「ちょっと相談がある。」
いつもより真剣な奏斗の顔を見て、颯太も姿勢を正した。
「どうした?」
「俺……。」
一度、言葉を止める。
「石川のこと、好きなのかもしれない。」
「……。」
颯太は数秒黙った。
そして。
「“かもしれない”じゃなくて、たぶんもう好きだろ。」
「……やっぱり?」
「やっぱりって何だよ。」
「いや……。」
奏斗は机に突っ伏す。
「だって、認めたらさ。」
「何が?」
「今までと同じじゃなくなる気がする。」
「……。」
「一緒に帰るのも。」
「話すのも。」
「写真を見るのも。」
「全部、変に意識しそうで。」
颯太は少し考えてから言った。
「じゃあ、変わるのが怖いんだな。」
「……うん。」
「でもさ。」
颯太は奏斗を見る。
「気持ちって、認めたから急に変わるもんじゃないだろ。」
「……。」
「今まで石川と一緒にいた時間がなくなるわけじゃない。」
「むしろ、自分の気持ちが分かるだけじゃね?」
「……そっか。」
-–
一時間目。
奏斗は席に座りながら、冴を見る。
(好き……。)
昨日までは、その言葉を考えるだけで慌てていた。
でも今日は。
少しだけ違う。
「……。」
冴がこちらを見る。
「神崎?」
931
#パニック
水族館マニア
248
#バッドエンド
752
「え?」
「さっきから俺のこと見てる。」
「……!」
「何かついてる?」
「いや!」
奏斗は慌てて前を向く。
「何でもない!」
冴は不思議そうに首をかしげた。
-–
昼休み。
「神崎。」
「ん?」
「今日、一緒に食べる?」
「……うん。」
いつもと同じ。
なのに。
今日は少しだけ違う。
隣に座る冴を見る。
笑った顔。
話す声。
何気ない仕草。
全部が妙に気になる。
(……好きなんだ。)
そう思うと、胸が少しだけ温かくなった。
-–
「神崎?」
「ん?」
「今日、静か。」
「そう?」
「うん。」
「……ちょっと考え事してた。」
「何を?」
「秘密。」
「また?」
冴が笑う。
「最近、秘密多い。」
「ごめん。」
「別に。」
冴も笑った。
「そのうち教えて。」
「……うん。」
-–
放課後。
いつものように二人で帰る。
「今日、どうだった?」
「普通。」
「俺は疲れた。」
「授業?」
「全部。」
「ふふ。」
冴が笑う。
奏斗も笑う。
歩く速度が自然に揃う。
交差点。
信号待ち。
いつもと同じ景色。
でも。
奏斗の中では、一つだけ変わっていた。
「石川。」
「ん?」
「……これからも。」
「?」
「ずっと一緒に帰ろうな。」
冴が少し目を丸くする。
「……うん。」
そして。
「俺も。」
-–
駅に着く。
「また明日。」
「うん。」
冴が歩き出す。
奏斗も反対方向へ進む。
少し歩いてから。
振り返る。
冴も振り返っていた。
目が合う。
「……。」
二人とも笑う。
奏斗は思う。
今すぐ何かを変えなくてもいい。
告白しなくてもいい。
ただ。
この気持ちは、大切にしたい。
「石川が好き。」
初めて、心の中でそう言えた。
-–
その夜。
奏斗は机の上の写真を見る。
文化祭の日。
二人で笑っている写真。
その隣には、冴からもらったしおり。
『これからも、思い出を増やそう。』
奏斗は小さく笑った。
「……うん。」
これからも。
もっと思い出を増やしたい。
ただ、それだけだった。
-–
一方、冴。
スマホに届いたメッセージを見る。
『また明日!』
奏斗からだった。
「……。」
冴は少し笑う。
そして。
「明日も、楽しみ。」
小さく呟いた。
二人の気持ちは。
まだ言葉にはなっていない。
でも。
もう「名前のない気持ち」ではなくなり始めていた。
-–
第40話 おわり
次回・第41話「変わってしまった?」
翌日。
いつものように冴と話していた奏斗。
でも、今までなら何とも思わなかった**「冴が自分の名前を呼ぶ」**というだけのことに、妙にドキドキしてしまう。
「神崎。」
「……な、何?」
「顔赤い。」
「……。」
そして颯太から一言。
「お前、恋愛初心者すぎるだろ。」
コメント
1件
うわあ、奏斗がようやく自分の気持ちを認めた……!「変わることが怖い」って気持ち、すごくわかるなあ。颯太の「認めたから急に変わるもんじゃない」って言葉にすごく説得力があって、いい友達だなって思ったよ。それに、駅で振り返って目が合うシーン、二人とも笑ってるのがもうたまらない。言葉にしなくても通じ合ってる感じがするよね。冴も「明日も楽しみ」って呟いてて、奏斗と同じ方向を向いてるのが伝わってくる。次回、名前を呼ばれるだけでドキドキしちゃう奏斗、楽しみだなあ。