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彼女は彼の胸に顔を埋め、ゆっくりと息を吐いた。 「全部、欲しいの……」
その言葉が落ちた瞬間、唇が皮膚に触れた。
最初は優しく、キスのように。
でもすぐに、歯が立った。
ちゅっ……ぱくっ。
表皮が薄く裂ける音。
血が一筋、ぽたぽたと彼女の顎を伝う。
彼は震えながらも、逃げなかった。
むしろ、首を傾けて差し出すように。
「もっと……食べてくれよ」
その声に、彼女の瞳が輝いた。
舌先で傷口をなぞる。
じゅる……じゅるるるっ……
鉄の味と、温かい塩気が口いっぱいに広がる。
彼女は我慢できず、歯を深く沈めた。
ぐちゅっ!
肉が千切れる湿った音。
小さく剥がれた一片を、舌の上で転がしながら
ゆっくり咀嚼する。
ぱく……くちゃ……くちゃくちゃ……
繊維が歯の間でほぐれ、血と唾液が混ざって
どろりと喉を滑り落ちる。
彼の息が荒くなる。
痛みと快楽が混じった、奇妙な喘ぎ。
彼女はさらに大胆に、鎖骨の下を狙った。
指で皮膚を摘まみ、引き裂く。
ぴりっ……びりびりっ……
筋膜が剥がれる音が響く。
露出した赤い筋肉に、直接歯を立てる。
がぶっ!
ぐちゅぐちゅぐちゅぅぅ……!!
噛み千切った肉片を、唇の端から垂らしながら
彼女は彼の目を見つめた。
「美味しい……君の味、全部私のものにしたい」
彼の腹部が、彼女の膝で押さえつけられる。
ナイフはいらない。
爪で皮膚を引っ掻き、裂く。
ざりっ……ずるずるっ……
内臓が覗く前に、脂肪層がむき出しに。
白く柔らかいそれを、指で掬い取って口へ。
ぬるっ……ぷちゅっ……
脂が舌に絡み、甘い。
彼女は夢中で貪る。
くちゃくちゃ……じゅるるるっ……
胃が満たされるたび、彼女の瞳はもっと飢えて輝く。
最後に、彼の心臓の鼓動がまだ聞こえる場所へ。
肋骨の隙間から手を差し入れ、
指を絡めて引き抜く。
どぷっ……ぐちゃぁ……
まだ脈打つそれを、両手で抱きしめるように。
彼女は優しく、愛おしげに
唇を寄せた。
ぱくっ……
一口で、心臓の先端を。
血が噴き出し、彼女の顔を赤く染める。
ぐちゅっ、ぐちゅぅ……
噛み砕く音が、部屋に響く。
彼の体はもう、ほとんど動かない。
でも彼女は、満足げに微笑んだ。
「これで……君は永遠に、私の中にいるね」
全部、食べ尽くすまで。
愛は、消費でしか完成しない。