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コメント
1件
うわ、まさか最長老がああいう形で「元気」になるとは! アートマン概念、ずっと伏線だったんですね。死を一つの状態と語る最長老の達観した口調と、一方でレイブが金貨で悶絶するギャップがたまらない。グフトマが拝みながらコインを落とすシーン、笑っちゃいました。毎回世界観の設計に唸らされます。
呆然と立ちすくむグフトマと配下のホブゴブリン達を、最長老が掛けた声が正気へと戻す。
『ほれ、のんびりしている場合ではなかろう、ここが崩れ去る前にそれぞれが為すべき事をせねばなるまい、のう?』
「はっ、そう言えばお付の方々はどうしたんですか? 最長老様も急にお元気になられて…… 一体何が?」
最長老は一層爽やかな笑顔を浮かべ活き活きとした言葉で応える。
『元気、と言うかあの老いぼれた体から解放されたんじゃよ♪ お付の子等には可哀想じゃったが、まあ、コレも一種の寿命じゃろうて』
言葉のやり取りにおいて異常に勘が良いレイブが反応良く返す。
「体からの解放に可哀想って、ま、まさか?」
『ああ、最初の揺れで崩れた岩でペチャンコじゃぞい♪ ワシはアートマンが出来てた様でこの通り、お付達はブラフマンとして新たな命の糧となる事じゃろうて』
「えええっ! そ、そんな…… ウチのバッタがとんでもないことを…… ほらっ、テューポーンさんも謝らないとっ! 何うっとりした顔で浸かっているんですかっ! 出るの、出る出るっ!」
『ギ?』
慌ててテューポーンに叫んだレイブであったが、最長老は落ち着き払った声で一堂を見回しながら言葉を続ける。
『まあまあ、死なんて物は一つの状態に過ぎんのじゃ、そう目くじら立てんでも良いわい、それより若いの、確か王丹と言ったかな?』
「あ、いえ、俺の名前だったらレイブですけど」
『あれ? 昨日会った時には――――』
「あっすんません、昨日は大分耄碌して見えたんでテキトーに答えちゃったんですよ、改めましてレイブ・バーミリオンです、本当すんません」
『なんだ、年寄り扱いだったのか…… 本当に王丹君と同じ名前だと思ったよ』
この辺が老人性の痴呆症の恐ろしい所だと言えるだろう。
全部じゃないのだ…… それはもう恐ろしい程の頻度で真偽が入り混じっていたりしているのである。
レイブは戦慄しながらも頭を掻く素振りで誤魔化している。
最長老の言葉は続く。
『んじゃレイブ・バーミリオン、お前がリーダーで良いのかな?』
この何気無い言葉に、責任の所在的な煩わしさを察知したのか、異常に依存性が高いギレスラとペトラは即座に一歩退いて、大きな体をレイブの影に隠そうと身を寄せ合っている。
レイブは仕方なく右手を弟妹に取らせたままで答えるのだ。
「あ、はい、そうすね、実力的にはバッタ、いえテューポーンさんなんでしょうけど、見ての通り今虫なんで、俺で問題ないと思います」
ちらりと目をやった先の泉では、風呂上りっぽく体を震わせて水気を掃っている緑のヤツ(身内の方)が頷いているのが見えた。
『そうか、じゃこれワシの分のコイン、ほれ、手を出すのじゃ』
そう言って光り輝く金貨を取り出した最長老。
レイブは警戒を丸出しにした横目のままで確認だ。
「なんです? くれるんですか? あれですよね、武器とか装備が買えるやつでしょソレ?」
『うん? 一般的なコインとは違うんじゃがのう…… まあ、集めればそこらの装備より余程頼りになる事は間違い無いわい、ほれ、受け取るが良いぞ』
「はあ、んじゃ遠慮無く…… って痛ーっ! 痛痛痛痛痛痛ったーっ!」
『ほれグフトマ、お主のコインも渡さんかっ! と言うより苦しんでいる内に渡してしまえ、はよせいっ!』
「判りました! すまんレイブ、それっ!」
最長老に続いてグフトマも胸元から取り出した金色のコインをのた打ち回っているレイブの上に落とし、許しを請うように手を合わせて拝み始めた。
「んぎゃーっ! 痛痛痛痛痛、痛痛痛痛痛ーっ!」