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続きです
翌日の朝。
昇降口で仁人が靴を履き替えていると、背後でひそひそ声がした。
モブ(主犯) 『ほんとに仲いいよね、あいつ』
モブ2 『イケメン4人に囲まれて、楽しそ〜(笑)』
モブ3 『媚売って疲れないのかなー(笑)』
……まただ。
聞こえないふりをして、仁人は靴は履き替えた。
たったそれだけのことなのに、胸の奥がざわっとした。息が詰まる。
その瞬間、背後から柔らかな声が落ちた。
『、、誰かー、今の聞こえた?』
振り向くと、柔太郎が穏やかな笑みのまま、女子たちを見つめていた。
その目は鋭くて冷やかだった。
『そういうの、聞こえても気分よくないよね。仁人のこと悪口言うのやめなよ』
穏やかな口調なのに、空気が凍りついた。
女子達は苦虫を噛み潰したような顔でその場を去っていった。
仁人は慌てて口を開く。
吉田 『……そんな言い方したらーー。』
山中 『……別に俺怒ってないよ。、、ただ、仁ちゃんを悲しませるのが嫌なだけ』
柔太郎はそう言って、いつもの優しい笑顔を見せた。
その優しさに、仁人は何も言えなかった。
昼休み。
モブ(主犯) 『ーーどうするのかな笑』
モブ2 『可哀想ー笑笑』
塩崎 『、、ねぇ、ーーー?ーー』
モブ 『ッ!……ーーー。』
……
購買でパンを買おうとしていた仁人は固まった。
入れたはずの財布がなくなっている。
『……最悪、、』
無意識に眉をしかめたその時、
後ろから元気な声が飛んできた。
『仁人!仁人の分もパン買ってきたよ!』
太智が両手にパンを抱えて走ってくる。
吉田 『え、なんでーー』
塩崎 『俺が食いたかったからついでに仁人の分も買ってきた!』
そう言いながら笑顔でパンを差し出す。
その笑顔はいつも通りだけど、太智の手の中には仁人の財布が握られていた。
仁人が気付いた瞬間太智は軽くウインクをして言った、、。
『まぁ、細かいことは気にしなーい!』
放課後。
靴箱の中にまた何かが入っていた。
仁人が手を伸ばそうとした瞬間、舜太がその手を掴んだ。
曽野 『ダメ!仁人、触らないで』
吉田 『ぅゑ!?』
舜太は中を覗き込んで、ため息をつく。
中には丸めた紙屑と小さな画鋲。
曽野 『やっぱり……酷すぎる』
舜太はその紙を全部出して、ゴミ箱に捨てた。
曽野 『仁人、こういうのあったら、ちゃんと俺らに言って、、』
吉田 『……別に大した事じゃーー』
曽野 『あるよ!』
珍しく舜太が声を張った。
曽野 『俺、仁人が傷つくの嫌だよ!』
その真っ直ぐな瞳に、仁人は思わず言葉を失った。
そして翌日。
誰よりも静かに、しかし確実に動いていたのは佐野勇斗だった。
放課後の廊下で彼は、嫌がらせをしていた女子に声をかけた。
『、、ねぇ』
モブ(主犯) 『佐野くぅん、なにか用ですかぁ♡』
『……仁人に嫌がらせすんのやめろ。 』
モブ2 『え〜!私達ぃそんなことしてませんよぉ』
『……次やったら、本気で許さないから。』
モブ3 『ッ……ーーー。』
それだけ。
穏やかな笑顔のまま、低く冷たい声で告げる。その笑みが余りにも冷たくて相手の女子達は震えながら逃げ出した。
その日の帰り道。
仁人の周りには4人がいて、まるで壁のように守っていた。
柔太郎は優しく肩を抱き、
太智は明るく笑いながら歩幅を合わせ、
舜太はずっと話しかけて気を紛らわせ、
勇斗は最後尾で静かに笑顔で見守る。
吉田 『お前ら、、過保護過ぎるだろ……』
仁人がぼやくと、柔太郎が微笑んだ。
山中 『そう?俺達にとっては普通だよ笑』
塩崎 『そうそう!』
曽野 『仁人を守るのが俺らの役目やから』
佐野 『、、その通りだよ笑』
4人の声が重なった。仁人は思わず下を向いた。
心臓の鼓動が、、うるさい。
『……マジで、お前らうるせぇな笑笑』
そう言いながら、仁人の口元には、ほんの少しだけ笑みが浮かんでいた。
END