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ロボロが笑う。
「なぁゾム、これって小さい頃の話? うっわ、俺そんなことしてたん? 最悪やな~笑」
笑いながら、オレのことを軽く叩いてくる。
「お前言うたれや!“アホちゃう”って」
オレは―― 笑った。
口元を引きつらせて、俯きながら。 ちゃんと、演技してみせた。
「ほんまやで、お前昔からしょうもない奴やったわ」
ほんまはちゃう。 ほんまは、あの時の記憶を抱えとんのはオレだけで、
あの夜の帰り道、声をかけたら――
『え? ……どなた、ですか?』
その一言で、全てが壊れた。
あの時のロボロの目、忘れられへん。
怯えたように眉をひそめて、オレを“知らん他人”として見る目。
その瞬間、何かが胸の奥でバキッと折れたんやと思う。
⸻
それから、オレは夢を見るようになった。
というか、見さされるようになった。
目の前でロボロが泣きながら「助けて」と手を伸ばしてくる夢。
けどオレの手は空を切って、届かん。
ロボロの記憶の中から、オレの存在だけが消えていく夢。
何度も目ぇ覚めて、息が詰まって、手ぇが震える。
夜中、スマホの画面つけて、何回もロボロの写真見て安心しようとする。
……情けないと思う。でも、やめられへん。
大切な友人を無くしてしまったのかもしれない。と言う思考が頭の中をぐるぐる駆け巡る。
その度に俺はまだ大丈夫と根拠もない言葉で自分に言い聞かせる。
⸻
高校に入って、シャオロンが間にいてくれたから、なんとか話せるようにはなった。
シャオロンとは中学から一緒でロボロともよく絡んでいたが、あの頃の俺はあの輪に入る勇気がなかった。
けど、まだ怖いねん。怖いってのが無くなったわけやない。
またあの時みたいに、「誰?」って言われるのが。
ロボロと少しずつ、クラスの中で話すようになって、 ちょっと笑い合う時間も増えてきて、
でもこの距離感を自分から壊すのが、怖すぎる。
繋がりが“0”やなかったから、まだマシや。
けどもし、全部がまた壊れてしもたら――
シャオロンが作ってくれたこの“薄いつながり”が消えてまうのが、
怖くて、中々言い出せずにいる。
⸻
「いつか、そんときが来たら、言えるかな」
その“いつか”が来るのを、ただ願ってる自分が、
どこかで情けなくて、みじめで、でもそれしかできへん。
ロボロは今日も笑ってる。
無邪気に、シャオロンに身長いじられて、声デカくて、ピアノ弾いて。
記憶の中のロボロと、目の前のロボロが、重ならへん。
それが、ただただ、つらい。