テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ぷち
24,790
#ベリアン・クライアン
ぷち
296
番外編112『終わりの始まり』中編
※メイスト7章のネタバレです。捏造含みますので苦手な方は🔙お願いします。このお話は番外編104。105を改編してあります。
宮殿の外
『麻里衣…その傷は…。』
フィンレイ様が私の包帯の跡を見て凝視する。
『かすり傷ですわ。これくらいなんとも…。』
『全く…いくら君の剣の腕が立つといっても君は女性だ。無理をしないで欲しい。』
『でも…私は彼らの主です。それに、約束しましたから。ユーハンと…。』
『君をそこまで無理させるのは…やはり彼らの存在が大きいんだね。』
『……。』
私はしばらく黙り込み、ニコッと微笑む。
『…えぇ。もちろん。私には使命があります。必ず…執事のみんなと平和な世界にするって。』
『主様……。』
『お姉ちゃん……。』
『ルカス、主のことは私たちに任せてくれ。君はフブキの所へ。』
『フィンレイ様…。』
『かしこまりました…。主様達をお願いします。』
ルカスは武器を抱えて宮殿へ走っていく。
宮殿 本殿
『うぐ……っ。』
フブキの首を掴み床に叩きつける。
ダンッ!!
『かはっ…っ!』
『はぁ、はぁ…死ね。サルディス・フブキ。』
私はぎゅうっとその手に力を込める。
『ぐ…っ。』
『ユーハンさん、いけません…!』
ガシッ!
『っ、ベリアンさん……離してください…っ。』
『ユーハンさん。憎しみに染まったその瞳は素敵ですが…美しくはありませんよ。』
(このユーハンさんの様子……ラト君の時と一緒です。理性が残った状態の悪魔化…。)
『ふふ。ラトさんが教えてくれたのではないですか。怒りに身を任せて…と。』
『…今の貴方を見たら主様が悲しみます。主様を悲しませるのは許しませんよ。』
『この男は…私の家族の仇…この手で、この手で終わらせないと気が済まないのです!』
『それでも私は…私達はユーハンさんを止めます。それが、主様の願いですから。』
『主、様の……?』
ユーハン。私は貴方に十字架を背負わせたくない。約束は約束だけど、貴方の絶望を、さらに上塗りすることはしたくない。サルディス・フブキは法の下で罰する。どんな手を使っても、もう逃がさない。
『っ、あああああっ!』
私は剣を振るって暴れ回る。
『ユーハンさん…っ。』
『葛藤しているんだ。己自身と。』
ダッダッダ…!
『悪魔執事!』
『憲兵の方…。サルディス・フブキはここです。もう手負いの身です。もう逃げ出すことなどないでしょう。』
『く…っ。もはや、ここまでだな。』
『拘束しろ!』
『…ユーハンに伝えておけ。先に地獄で待ってるとな。』
『っ……!』
サルディス・フブキはニヤリと笑い連れてかれる。
ジャキッ。
『行くぞ。テディちゃん。俺達でユーハンの目を覚ますんだ。』
『はいっ!!』
数分後。
『っ、お姉ちゃん、あれ……。』
『!サルディス・フブキ……。』
『悪魔執事の主……ふっ。貴様らの命運もここまでだ。奴は悪魔化して、そのまま死ぬ。もう手遅れだな。』
『……そんなことはさせないわ。』
私は立ち上がりサルディス・フブキの前に立つ。
『麻里衣……!』
バシンッ!!
『っ……!!』
『必ず…私達がユーハンを助ける。これは…私の分。』
グイッ!
胸ぐらを掴んで啖呵を切る。
『罪人は罪人らしく…怯えて、苦しんで死ねばいい。貴方には死よりも苦しい罰を与えるわ。私達が。』
ゴスッ!
頭突きをして地面に押し倒す。
『ぐ……っ!』
『今のはユーハンの家族の分。そしてこれが……ユーハンの分。』
ゴスッ!ドスッ!
鳩尾に蹴りを入れる。
『ごほっ!がはっ!』
『こんなんじゃ足りないわ……ユーハンの痛みはこれよりさらに痛いのよ…っ!』
『お姉ちゃん……っ。』
『フィンレイ様。妹を頼みます。そして、この屑には相応なる罰を。それが私の、私達の総意です。』
私は剣を持ち宮殿の中へと向かう。
『く……っ!悪魔化したユーハンはいつもよりこえぇな。だが…剣の動きやキレはいつもと変わらねぇ。悪魔化したからって俺には勝てねぇよ。』
『っ…。ハナマルさん…っ。』
『ユーハンさ――』
『っ、下がれ!テディちゃん!』
『え……。』
ユーハンさんの剣が髪を掠めた。
パラパラ…
『私の狡猾さは健在ですよ。さぁ、私を止めてみてください。私は負けませんよ。』
『チッ。いつもより厄介だな…。テディちゃん、俺達が無力化したら後は主様に任せよう。それまで頑張れるか。』
『もちろんです!』
ガタッ。
『主様……っ。』
『お待たせ、ムー。怖い思いさせてごめんね。』
箱の中のムーを抱きしめる。
『主様こそ…。っ、その怪我は…』
『平気よ。大したことは無いわ。ムー。ユーハンが悪魔化したの。一緒に来てくれるわね?』
『は、はい!』
ムーを抱き締めて本殿へ向かう。
『ぐ、うぁ……っ。』
ドサッ。
ユーハンは力尽きたのかその場に倒れ込む。
『っ、やっと、か…。』
『ハナマル君!テディ君!』
『後は、お願い、します…。』
2人は気を失う。
『ベリアン!ルカス!』
『主様!今、ハナマルさんとテディさんがユーハンさんを無力化しました。主様。』
ベリアンは私を見つめる。
『えぇ。分かってるわ。ムー。』
『お願い…ユーハンを、救って…。』
『えぇ。もちろんよ。』
ユーハンの手を握り目を閉じる。
ユーハンの心の中
『ここが、ユーハンの心の中…。』
『…なさい。ごめん、なさい…』
(泣き声…?この声は…。)
『父上、母上…っ。村のみんな…。私のせいで…みんなまで…。』
(ユーハンの過去だ…。サルディス・フブキのことを探ろうとして、忍び込んだ際、フブキに見つかって…家族や村のみんな、故郷でさえも燃やされた。これが、彼の絶望…。)
『ユーハン…。』
ユーハンに歩み寄ろうとした時だった。
『彼に触れないで。』
『……!!』
後ろから声をかけられる。後ろを振り返るとそこには幼少期のユーハンらしき少年がいた。
『彼はもう手遅れ。助けても意味はない。そのまま死ぬだけ。』
(ベリアンの時も幼少期の姿で現れた。つまり、これは……。)
『マルコシアスね……っ!ユーハンの契約悪魔…。』
『……クスッ。流石ね。悪魔執事の主。』
幼少期の姿からおぞましい悪魔の姿へ変わった。
『彼の心はもう私のモノよ。悪魔化したらもう助けられないの。このまま死なせた方が彼の為なのよ。』
『まだよ、まだ、彼の心は死んでない。勝手に殺さないで。』
『悪魔の私に随分な態度ね。死を恐れないと見えるわ。』
『…死んでも構わないもの。私は。』
『なに……?』
『ユーハンの為なら、死んでもいい。』
私は悪魔に背を向けてユーハンに語りかける。
『ユーハン、ユーハン…聞こえる?』
『あるじ、さま…?』
『帰ろう?ユーハン。』
『主様……いけません。帰れませんよ、私は。また…大切なものを失ってしまいます。貴方という…大切な存在を。』
『ユーハンのせいじゃないわ。悪いのはサルディス・フブキだもの。奴はもう捕まえた。私がフブキに制裁を加えておいた。あれじゃ足りないけどね。』
『フブキを…捕らえた…?』
『えぇ。貴方の仇は取ったわ。だから…生きて。ユーハン。』
『っ……主様…っ。』
『…っ、彼の心が……っ。』
ジャラジャラ…!
『くっ、鎖が…!』
『マルコシアス。私は主様が傍にいる限り負けません。もう、あなたに私の心は渡しません。』
『ふ、ふふふっ。いいわ。それなら、主が死ぬ時まで待ってあげる。シノノメ・ユーハン。あなたの心はいずれ私のものになるのよ。あははっ!』
鎖に飲まれ、マルコシアスは闇へと消えていった。
『主様。』
ユーハンは私に跪く。
『ご心配をかけて申し訳ございません。このシノノメ・ユーハン。生涯、貴方の傍を離れないと誓います。』
チュッと指先にキスをする。
『えぇ。離れたら許さないわ。』
『ん…っ。』
『良かった…目が覚めて……。』
『皆さん…申し訳ございませんでした…。』
『ほんとだよな。俺にこんな怪我負わせて。』
『ハナマルさん、気がついたんですね。』
『すみません、ハナマルさん、テディさ――』
ギュッ!
『ぐすっ、ユーハンさぁぁん!泣』
『て、テディさん……っ。』
『もう、俺、凄く心配したんですからね!』
『す、すみません…。あの、苦しいです……っ。』
『ぐすっ。ぐすっ。』
『ユーハン。帰ったら説教な?それと、しばらくあんまんを俺に献上しろよ?』
くしゃくしゃとユーハンの頭を撫でる。
『ちゃっかりしてますね…。分かりました。説教もその望みも受け入れますよ。』
『偉そうに言うなよな…ったく。』
『ふふっ。』
『クスッ。別邸のみんなはこうでなくちゃね。』
『……ふん。』
『ご主人サマ、怪我してるんだしもう無理しちゃだめだよ。さ、帰ろう。』
『えぇ。そうね。』
と、その時――。
『『あああああああああああっ!!』』
『!?』全員
ゴゴゴゴ……っ!
耳を劈くような悲鳴と地鳴りがする。
『この声は、ロノとバスティン…!?』
私達は宮殿の本殿を出て神聖の間へ向かう。
宮殿 神聖の間
『ロノ!バスティン!何が……っ。はっ…!』
目の前にいるのは大きな白い羽根を生やし、こちらを見つめる天使。
『『……っ!!』』
ベリアンとべレンの血の気が引く。
(違う、あれはゴエティアじゃない。雰囲気も、声も何もかも違う!)
(顔がそっくりです…何故、天使とゴエティア様がそっくりなんですか…?まさか、本当に……?)
『やめろ、来るな、俺は…っ!』
『やめろ、ジェシカ、そんなこと言うな…ああっ!!』
『お二人とも、一体何が…。』
『簡単なことだ。私の力だ。私の能力は、悪魔執事の絶望を甦らせること。』
『……!?』
主と執事の前に現れた新たな脅威…一体どうなってしまうのか…次回、後編へ続く…
コメント
1件
今回のエピソード、めちゃくちゃ重くて苦しかったけど、麻里衣ちゃんの「ユーハンの為なら死んでもいい」って言葉が胸に刺さったよ…。ユーハンの中の悪魔と対峙するシーン、自分の意思で取り戻そうとする姿が切なくて。最後の天使の出現も衝撃的すぎる…次回どうなるんだろう、気になりすぎて待てないよ🥀