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🌳side
正直に言えば最初は安心してた。
ゆうまが少し落ち着いたから。
前みたいに無理に笑わない。
無理にテンションを上げない。
疲れたらちゃんと黙る。
hd「大丈夫?」
そう聞くとゆうまは少し考えてから答える。
ym「……うん」
「今は、平気」
その隣にはいつもしゅうとがいる。
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しゅうとは目立たない。
引っ張らないし仕切らないし指示もしない。
ただ、ゆうまが動かないとき一緒に動かない。
ゆうまが座ると隣に座る。
それだけ。
なのにいつの間にかゆうまの基準がしゅうとになっていた。
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hd「最近しゅうとと一緒だよね」
何気なく言っただけだった。
するとゆうまの表情が一瞬固まる。
ym「……だめ?」
責める声じゃない。
でも怯えが混じってる。
hd「いや、そうじゃなくて」
「ただ……心配で」
そう言うとゆうまはすぐに首を振った。
ym「大丈夫」
「しゅうとは何もしてない」
——何もしてない。
その言い方が妙に引っかかった。
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ある日ゆうまが珍しく笑っていた。
久しぶりに昔みたいな笑顔。
hd(戻ってきた?)
そう思った矢先。
しゅうとはゆうまの方を見て静かに言った。
sht「今日はちょっと無理してる?」
声は優しい。
ゆうまははっとした顔をしてすぐ視線を落とす。
ym「……ごめん」
その瞬間胸がざわついた。
——なんで、謝る?
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後でしゅうとに声をかけた。
sht「ゆうま、最近どう?」
本当に世間話のつもりだった。
しゅうとは少し考えてから答える。
sht「今が一番落ち着いてると思う」
hd「でもさ」
「元気そうなときあったじゃん」
その言葉にしゅうとは首を傾げた。
sht「元気、って」
「無理してる状態でしょ?」
穏やかで、正論みたいな口調。
sht「今の方が自然だよ」
反論できなかった。
——でも納得もできなかった。
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決定的だったのはある夜。
ゆうまが体調を崩して早退した日。
hd「誰かついて行く?」
そう言うとゆうまは即座に答えた。
ym「しゅうとがいれば、いい」
迷いがなかった。
その言い方がまるで選択じゃなくて条件みたいで。
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あとで二人きりになったとき ゆうまに聞いた。
hd「……しゅうとがいないとだめ?」
ゆうまは少し困ったように笑う。
ym「だめ、じゃないよ」
「ただ……」
言葉を探して小さく続けた。
ym「いる方が、楽」
楽。
それが一番危ない言葉だと思った。
苦しくない場所。
考えなくていい場所。
そこに慣れたら戻れなくなる。
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しゅうとは今も変わらない。
引き止めない。
命令しない。
否定しない。
ただ、ゆうまが戻ってくる場所であり続ける。
だから誰もはっきり「おかしい」と言えない。
だって本人は前よりずっと楽そうだから。
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今日もゆうまはしゅうとの隣で静かに座っている。
逃げているのか、
選んでいるのか。
外から見ているだけの俺たちにはもう区別がつかなくなっていた。
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