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余命1年の君と結婚したい。

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余命1年の君と結婚したい。

16 - 第16話 俺の前で他の男を褒めたな。許さん。

♥

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2025年06月09日

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「日陰!」

扉が開いたと同時に、に警官と緋色さんが入ってくる。

男達に取り押さえられている私は解放された。

「緋色さん! 私、助かったの?」


「ワインと水を調べてください。毒が入っています。小笠原陽子が白川日陰を拉致し殺そうとしました」

ボコボコにされた綾野先輩が立ち上がりながら言った言葉に怖くなった。


私はやはり殺されそうになっていたということだ。

そして、綾野先輩も途中までは私が陽子に殺されることを容認していた。


私自身は綾野先輩を害したことは1度もない。

彼を好きになったことで、結局は傷ついてばかりだ。


綾野先輩は私が出会って大好きになった時とは、まるで別人になっていた。

(人は環境でこんなに変わるのね⋯⋯もう、これ以上失望させないで欲しかったわ)


「違います。私、彼女を殺そうとなんてしていません。弁護士を呼んでください」

動揺した陽子は、抵抗しながらも警察に連れて行かれた。


警察に行き、私も状況を説明する。

どうやら、私の通話は勇と繋がったままで勇はその音声データをネットにあげていたらしい。


そのお陰で小笠原陽子は弁明できない悪事をやっているのが明るみになった。

そして勇は私が拉致されたことを緋色さんに伝えて、スマホのGPSから場所を割り出したとのことだった。


実家の力で社会的に圧倒的強者だった陽子のやりたい放題は今まで隠されていたが、公になる時がきた。

(裏口入学、暴行事件、やっと彼女がやってきた悪事が白日の元に晒されるのね⋯⋯)


「緋色さん、会いたかったです。早くひなたの元に帰りましょう」

人の目があるのに緋色さんに思わず抱きついてしまう。


抱き返してくれる、緋色さんの体温が温かくて涙が溢れそうになった。


「日陰、危ない目に合わせてごめん。あの緊急電話も罠だったんだ。まんまと引っかかってしまうなんて自分でも情けない⋯⋯もう君を絶対離さない」

「そんなことないです。守ってくれたじゃないですか」


情けないのは私の方だ。


もっとしっかり、綾野先輩に手を引かれた時に抵抗すれば良かった。

(彼が信用できない相手だと分かっていたのに、どこかで私の手を引いてくれた出会った頃の綾野先輩を重ねてしまったんだわ)


♢♢♢


「ただいま、ひなた!」

「ママ、パパお帰りなさい」


取り調べもあり、すっかり遅くなってしまった上に買い物もできなかった。


「すみません、今からあるものでご飯作りますね」


「日陰、今日は俺が作るよ。その代わり今晩は君を食べさせてくれ」


「すみません。親父ギャグにどう返事をして良いのかが分かりません」


「3歳しか違わないのに、なんで親父扱いしてくるんだ」


私を小突いてくる緋色さんが可愛らしい。

綾野先輩が自分と緋色さんが似ていると言っていたが、確かに2人は強引な所は似ている。


しかし、緋色さんは一緒にいると温かい気持ちにさせてくれる人だ。


(綾野先輩は最終的には私を守ってくれたけれど、やっぱり裏切りを許す気にはなれないわ)


「僕も料理したい」


緋色さんがキッチンに行くと、ひなたが自分もやりたいと言い出した。

(2歳で、できることって何だろう。包丁はまだ危ないだろうし⋯⋯)


「じゃあ、ひなたはオニギリをママと一緒に作ろうか」

「うん、作る」

ひなたの小さな手に自分の手を重ねておにぎりを握る。

(なんて幸せなんだろう、こんな毎日を過ごすことができたら良いのに)


「ママ、今日もママとパパと一緒に眠りたい」

「もちろん、今日も一緒に寝ようね」


ひなたの可愛いお願いに笑顔で返した後、何だか不思議な気分になった。

(今日は、私、緋色さんに抱いて欲しかったかも⋯⋯)


私は、ひなたを前にはしたないことを考えたことに自分で驚いてしまった。


そっと、緋色さんを覗き見ると明らかにがっかりした顔をしていた。

(緋色さんも私と同じこと考えていたみたい。まあ、私たち時間はあるよね⋯⋯きっと)


♢♢♢


ベッドの上で、真ん中にひなたを挟んで川の字になる。


「緋色さん料理もできたんですね」

「日陰みたいに上手ではないけれどね」

「いえ、すごく美味しかったです」


私は父の料理を思い出していた。


私が1歳の頃に母が出ていってしまったから、父が料理をするところをよく見ていた。

(私の存在が望月夫婦を引き裂いたようなものだわ⋯⋯2人は会えたかしら)


「今、よくないことを考えているだろう。顔で分かるぞ」

「そんなことありませんよ。それから重いです。自分の場所に戻ってください」


気がついたら、ひなたは爆睡していた。

緋色さんが私の上に乗っかっていたので注意する。


「今日はもう少し日陰の顔を見てから戻る。君を失うかと思って本当に怖かったんだ」


私の顔を撫でる彼の手に、思わず頬擦りをした。


勇から連絡を受けて私が拉致されたということに焦って、私を1人にしたことを後悔した彼が想像できた。


不穏な音声データが勇の手によってネットにあがっていたし、それを聞いた緋色さんも恐怖しただろう。


「私も怖かったです。ひなたや緋色さんに会えなくなるかもしれないと思うと本当に怖かった⋯⋯」

言葉を紡ぐと共に、自分が恐怖で震えているのがわかる。


あの時の陽子は本当に殺しをしそうなくらい、異常な目つきをしていた。


「精神鑑定になるだろうな。流石に、小笠原陽子は逮捕されることになるだろう。流石に言い逃れができない音声データが流れてしまった。須藤玲香の死についても調査が入ると思う。20年近く前のことだから、小笠原夫人の罪についてはどうなるかは分からない」


小笠原夫人も陽子も精神的におかしい人ではない。

その事は20年以上付き合ってきた私が1番良く知っている。


ただ彼女達は自分達は特別だと思っていて、他の人間の存在を軽視しているだけだ。


しかし、婚約パーティーで2人の精神疾患について小笠原社長が言及しているし精神鑑定になるだろう。


「小笠原社長は何か罪に問われないのでしょうか。須藤玲香の死について犯人隠避に問われたりはしないのですか?」


「おそらく夫人や陽子を切り捨てても、自分は無傷でいるだろう。会社の株価は下がるだろうが、すぐに元通りだ」


「最悪ですね。あの人が父親なんて本当に嫌です」


「日陰は確かに望月さんの方に似ているところがあるな。抜けてる所とか、素直な所とか」


「私、抜けてますか? えっと、父の望月健太を見て鈍感なバカだと思ってしまいましたが、私も緋色さんから見てそんな感じですか?」


「鈍感なバカって、結構、毒舌だよな日陰は⋯⋯」

緋色さんが笑いを必死に堪えているのがわかる。


「そういえば、音声データをネットにあげるなんて勇は凄いですね。私、昔から陽子に陥れられていたので、陽子との会話は録音しろと言ってきたのも勇なんです」


「元彼の言うことを聞いて、まめに音声を録音したりしてたのかな? 日陰は、本当に素直で良い子だな。これからは夫の言うことも聞いてくれると嬉しいな」


私の頬を引っ張りながら子供に諭すように語る緋色さんは、少し不機嫌になった気がした。


「勇の話をされるのは嫌ですか?」

「嫌というか、彼の愛が深くて日陰を取られないか心配なだけだ。それと、俺と似ているとかいう綾野先輩とかいう奴まで登場するし心配になる。早く日陰を俺のものにしたいと焦っているのかもしれないな」


緋色さんの言葉に勇のネットにあげた音声データが、バーに入って直ぐの会話からのだったと気がつき恥ずかしくなる。

(なんで、私は世界中に自分の男性遍歴を晒されているの? すごく嫌)


「緋色さんは綾野先輩と似ていないですよ。私の好きなタイプが強引な男だとか勘違いだけはしないでください!」

「いや、見た目が似てるとかそういう話だと思っていたんだが、強引な男が好きなのか?」

「違います。緋色さん、これ以上は絶対強引にならないでください。緋色さんの強引さは既に限界値です」


緋色さんは出会ってすぐに私にプロポーズしてきたり、キスしてきたり強引な方だ。


はっきり言って見た目が良いから許されているところがあるが、別の人が同じことをしていたら通報していたと思う。


私はこのままひなたの隣で強引に迫られる気がして、緋色さんの胸を押した。


緋色さんはそんな私を笑いながら見ている。

私は、より力を入れて緋色さんをもう一度押したがびくともしなかった。


私の動作を見て、緋色さんが笑いそうになっているのが分かった。

(ひなたが起きたらどうするのよ! 早く私の上からどいて、正しい川の字の定位置に戻って)


何だか良いムードになってきている気がする。


緋色さんのような良い男は、すぐ良いムードに持っていけるスキルがあるのだろう。

私はそのムードを打ち破るべく、元彼の話をすることにした。


「勇のことを私は甘く見ていた気がします。彼、結構良い男だったみたいですね」

私は勇と10年以上付き合ってきたが、彼を地味で安全な男としか見ていなかった。


彼の深い愛情にも、何かあった時の行動力にも全く気がついていなかった。

(確かに、私は父と同じくらい鈍くて抜けているかも⋯⋯)


「俺の前で他の男を褒めたな。許さん」


緋色さんが突然くすぐってきてびっくりする。

(良いムードを崩すことには成功したけれど、これはこれで無理⋯⋯)


「くすぐりの刑って昭和ですか!!」

「俺は君と同じ平成生まれだ。なんでいつも親父扱いするんだ」


私はとにかく、ひなたを起こさないようにくすぐりに耐え続けた。


余命1年の君と結婚したい。

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