走り続けた俺は森で覆われた場所に辿り着く。人気がいない方へと進んだはいいがこの先は足場が悪く進めそうにない。
sh「…っ!」
立ち止まっていると足裏の痛みが急に襲ってきた。俺はその場に座り込み足の傷を確認する。
sh「くそ…これじゃ走れない。」
ボロボロの足を見てさすがに走る事を諦める。辺りを見渡すが八方塞がりだ。
sh「何で、何で俺が…。」
我慢していた涙が目から溢れ出す。しばらくその場で俺は泣き続けていた。
すると、微かに誰かの足音が聞こえる…。
最悪の状況だ…俺にはもう逃げる力も残っていない。足音が近くなる…。
ザッ
?「ねぇ、何してるの?」
sh「へ?」
その声は明らかに子供の声だった。俺は緊張が解けて情けない声をあげてしまう。
?「うわ…その傷ヤバいね…。あ!そうだ、俺の家においでよ。」
sh「……行かない。」
?「何でだよ!こんなとこに居てたら風邪引くし危ないって。」
sh「俺の事は放っておいていいから…」
?「嫌だね!」
すると俺の両腕を肩に回して俺をおぶろうとする。“嫌だ”と言っても今の俺には抵抗する程の力は無い。されるがままに俺はその子におんぶをされる。
?「こっからちょっと歩くだけだから、もう少しの辛抱な!」
sh「……。」
きっとこの子の親にもまた他の大人達と同じ顔をされるのだろう…。俺にはハッキリとその状況が頭に浮かび上がり涙を流した。
?「何か嫌な事あった?」
sh「ふ……うぅっ…」
?「そっか。そんな時は歌でも歌うか!」
俺はずっと泣いているのに、そんなのはお構いなしに歌を歌っている。でも、なぜだろう…背中から伝わる体温も相まってか少しだけ気持ちが落ち着く…。
歌を聞きながらしばらく森の中を歩いていると綺麗に整備された道が見える。花や木々が立ち並びその中心には大きな建物が見えた。
?「ここが俺の家!」
sh「…ここが?」
?「そう。“ホテル”なんだって。」
sh「“ホテル”?」
?「色々なお客さんを泊めてるんだってさ。」
俺は今まで見た事のない大きさの建物に見惚れて辺りをキョロキョロと見渡す。 正面玄関は通らないようで別の方向へと歩き出す。
?「あっちはお客さんが使う所で俺はいつも別の出入り口から入ってんの。」
説明しながら小道の先にある扉に着く。ポケットから鍵を取り出して中に入ると長い廊下が続いていた。
?「俺の部屋はここー。」
部屋の扉を開けて中に入ると広い室内が見える。俺は正面にあったベッドの上に降ろされる。
?「まずは足の怪我どうにかしないとだよな…。救急箱取ってくるよ。」
そう言うと手に飲み物を渡されて『それでも飲んで待ってて』と部屋を出て行ってしまった。俺は渡された飲み物に口つける。しばらく外にいたからだろう、温かった飲み物は少しぬるくなっていた。
ガチャ…
?「お待たせー。ほら、足見せて。」
俺は言う通りに足の裏を見せる。足の下に大きな器を置いて救急箱と一緒に持ってきていた水を足にかけられる。
sh「いっ!」
?「しみるよな…でも少し我慢な。」
慣れているかのような手つきで足の傷の消毒をしていく。時折痛みに顔を歪めるも『我慢、我慢。』となだめられていた。
?「よし、こんなもんじゃない?」
sh「…あの、ありがと。」
?「いいって事よ!あ、俺はna。君は?」
sh「俺は…sh。」
na「shね!よろしく。」
目の前に手を出されて俺は恐る恐るその手を握る。上下に勢いよくブンブンと振られ俺はバランスを崩してベッドに横たわってしまった。
na「あはは!何してんの。」
naの笑ってる顔を見てなんだかさっきまでの出来事が嘘のように思えて、この感覚がずっと続けばいいのに…なんて淡い期待を抱いてしまっていた。
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