テラーノベル
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その日、麻衣は玲香の行動を注意深く観察した。
午後3時頃、玲香が席を外した隙に、麻衣は玲香のデスクに近づいた。
引き出しの中を素早く調べると、案の定、森川との連絡用の携帯電話が隠されていた。
「やはり……」
麻衣はその携帯の番号をメモした。
今度は確実な証拠を掴む必要がある。
夕方、麻衣は玲香が残業しているのを確認してから、一足先に会社を出た。
しかし、実際は会社の近くで玲香を待ち伏せしていた。
午後8時頃に、玲香が会社を出てきた。
麻衣は距離を保ちながら尾行した。
玲香は予想通り、高級ホテルのラウンジに向かった。
そして森川と密会を開始した。
今度は、麻衣はより慎重だった。
適切な距離を保ち、音声も録音できる位置を確保した。そして、玲香と森川の会話をすべて録音した。
「来月の入札資料、今回も頼むよ」
森川の声がはっきりと聞こえる。
「もちろんです。ただし、報酬の件……」
「心配するな。今回は100万だ」
完璧だった。産業スパイ行為の決定的証拠を掴むことができた。
しかし、麻衣はもう一つの計画も進めていた。健太との関係を守ること。
翌日、麻衣は健太に電話をかけた。
「健太、今度の週末、時間ある? 久しぶりにゆっくり過ごしない?」
「もちろん。君と過ごす時間が一番の癒しだよ」
麻衣は微笑んだ。今度こそ、健太を玲香に奪われないようにしなくては。
週が明け、麻衣は宮塚部長に面談を申し込んだ。
今度は、前回の失敗を踏まえてより慎重に行動した。
「部長、氷室さんについて重要な報告があります」
「何ですか?」
麻衣は準備した証拠を提示した。
しかし、今回は単純に告発するのではなく、戦略的に行動した。
「実は、私も最初は信じられませんでした。そこで、弁護士の友人に相談して、法的に問題のない方法で証拠を収集しました」
麻衣は弁護士から受け取った書類も同時に提示した。
証拠の収集方法が適法であることを証明する書類だった。
「さらに、警察にも事前に相談済みです。この証拠に基づいて、正式な調査が開始される予定です」
宮塚部長の表情が変わった。今度は逃げ道がない。
「分かりました。すぐに氷室さんを呼びます」
玲香が部長室に入ってきた時、その表情はいつものように冷静だった。
しかし、証拠を見せられた瞬間、初めて動揺の色が浮かんだ。
「これは……何かの間違いです!」
「氷室さん、この音声、確かにあなたの声ですよね?」
宮塚部長は証拠データを再生した。
玲香の顔が青ざめる。
「……これは……」
「氷室さん、会社を裏切った理由を聞かせてください」
玲香は長い沈黙の後、ついに白状した。
「済みませんでした……私は……借金があって……」
それは嘘だった。麻衣は玲香の真の動機を知っている。金銭欲と、他人を支配する喜び。人の幸せを奪う快感。
玲香は即日解雇され、警察に引き渡された。
産業スパイ行為は重大な犯罪であり、実刑は免れない。
麻衣は玲香のプロジェクトリーダーの地位を引き継いだ。
「佐倉さん、今度のプロジェクト、よろしくお願いします」
宮塚部長が言った。
麻衣は勝利を手にした。
しかし、これで終わりではない。
健太との関係を修復しなくては。
玲香が逮捕されたニュースは、健太の耳にも入った。
「麻衣、大変だったね。まさか氷室さんがそんな人だったなんて」
健太は麻衣を心配してくれている。前回の人生では、この時点で健太は既に玲香に心を奪われていた。
今回は間に合った。
「でも、君がそれを暴いたって聞いたよ。勇気があるね」
麻衣は健太の手を握った。
「健太、ありがとう。あなたがいてくれるから頑張れた」
二人の関係は前より深いものになった。
困難を乗り越えた絆が、より強固なものにしていた。
玲香の逮捕から一週間後、麻衣の元に奇妙な手紙が届いた。
「あなたの勝利は一時的なものです。真の戦いはこれから始まるのです」
差出人は不明。
しかし、麻衣は直感的に理解した。玲香には仲間がいる。
そして、その仲間が復讐を企てているのだろう。
翌日から、麻衣の周りで不可解な出来事が続いた。
パソコンがハッキングされ、重要なデータが削除された。
車のタイヤがパンクした。
自宅に不審な電話がかかってきた。
「誰かが私を狙ってる」
麻衣は警戒を強めた。
しかし、相手が誰なのかは分からない。
そんな中、意外な人物から連絡があった。
「麻衣、大丈夫? 何か困ったことがあったら相談して」
親友の由美だった。
前回のループでは、由美も玲香に騙されて麻衣から離れていった。
しかし、今回は玲香が早期に排除されたため、由美との関係は良好なままだった。
「実は、最近変なことが続いてるの」
麻衣は由美に相談した。
「それって、もしかして玲香さんの関係者かも? 彼女、逮捕される前に誰かと連絡を取ってたんじゃない?」
麻衣は玲香の交友関係を調べ直すことにした。
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