テラーノベル
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放課後、一緒に帰るのが当たり前になった。誰かと帰るすみれを見ることは、もうなくなった。
私も、誰かと歩くことがなくなった。
廊下ですれ違う人の声が、どんどん遠ざかっていく。
ふたりの時間の外側にいる人間が、他人に見える。
「これって、変なのかな」
ある日、すみれがぽつりと呟いた。
「何が?」
「こんなふうに、毎日あなたに会わないと落ち着かないってこと」
私は笑ってみせた。
「……じゃあ、私も変だよ」
「じゃあ、ふたりでおかしいままでいようね」
それが、はじめて“同じ温度”で交わされた約束だった。
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