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「っ!下がれ!」
風夜が前に出て扇を構えた。
「吹き飛べ!!」
ドオッ!
爆風がモンスターを沼の方に押し返す。そして少し足元がふらついたモンスターに渾身の体当たりを喰らわす。
「お……らぁっ!!!」
ドンッ!
ガラガラッ
モンスターが立っていた所が崩れ、谷底に落ちてゆく。
『ヴォォォォ……』
「あ”ぁぁぁぁッ!?」
「風夜!」
「風夜くん!」
ブラックとすまない先生が手を伸ばすが当然間に合わない。
「「うわぁぁぁぁぁ!!」」
届かないと分かってもすまない先生とブラックは絶叫をやめられなかった。
「ッ……ここは……沼に落ちたのか」
風夜は泥を掻き分けながらゆっくりと進む。
「ほんとモンスターだらけだな……」
風夜は爆風を起こす。
ドオッ!
辺り一体のモンスターが吹き飛ばされ壁に激突し、不定形の泥となって消えた。
ゴポリ……
「……?」
後ろを振り向くと人間サイズの人間の形をしたモンスター(?)が立っていた。
「ッ……」
風夜は扇を構えるが相手は立ったまま動かない。足元の泥が蠢いているため操る力を持っているのだろうがそれを使って襲って来る様子もない。
「……?」
(どうして襲って来ないの……?)
「襲って来ないなら……消させてもらうよ」
風夜は扇を構えるがその時初めてモンスター(?)が動いた。ゆっくり、ゆっくりと風夜の方に近づく。
「ッ……」
風夜はじりっと後退りする。モンスター(?)の顔にある泥が取れ顔の一部が顕になる。
「……僕……?」
光加減によって赤にも紫にも見える瞳に黄緑色の髪。まさに風夜そのものだった。そのモンスター(?)がすっと手を上げると足元で蠢いていた泥がビュッと伸び、風夜の手足を拘束した。
「ッ……くそッ……離せ……離せよ!」
ジタバタ足掻いてふと気がついた。この泥に触れると激痛や触れたところの麻痺、最悪死に至るはずだが、死んでないし麻痺どころか痛みも感じない。
(……痛くも痒くもない……?)
風夜はそっと目の前の自分そっくりなモンスター(?)に近づいた。そしてそっと触れてみる。やはり痛みも何も感じない。その時。
ドロッ……
風夜が触れた所からモンスター(?)の体が溶け始めた。
「っ!?何何何!?」
そう騒ぐ間にもモンスター(?)の体は溶け、後には小さな水晶の欠片のようなものだけが残された。風夜はそっとそれを拾う。触れた瞬間その水晶から膨大な光が生まれ、視界を覆い尽くした。
「……大丈夫かな……風夜くん……」
「死にはしないでしょうけど……麻痺くらいはするんじゃないでしょうか」
取り残されたすまない先生とブラックはそう話していた。いつまで経っても音沙汰無しなので少し心配になって来た頃。
トッ
微かな音が聞こえ顔を上げた。
「遅くなって悪かったね。ただいま、すまないくん、Mr.ブラック」
「「風夜……?」」