テラーノベル
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例の男への対応も終わったところだし、時間もちょうどいい感じだからボビーと一緒に買い物に行く。あそこまで怯えた様子であればもう大丈夫なはずだ。弐十ちゃんに近づくことはおろか見ることすら許さない。あんなことをしたのだから当然の報いだ。本当であれば社会的にではなく、この世からおさらばさせたかったけど、まぁ、警察のお世話になるわけにはいかないしこのくらいだろう。
弐十ちゃんの着替えを持ってくるのを忘れてたしまったから、昨日キルと行ったところではなく、少し遠いところにある。大きめの百貨店に向かうことにした。
キャメに何か必要なものはあるかどうか連絡を送る。
「なぁ、ニキ——」
ボビーがやけに深刻そうな顔で口を開く。
「弐十ちゃんの着替えって、俺が選んでええよな?」
「……うん、いいんじゃない?」
心配して損した。うすうす感じとってはいたが、ボビーは、たぶんだけど弐十ちゃんの容姿が結構好きなのだと思う。酒に酔うといつも弐十ちゃんのあの、何とも言えないファッションセンスに対して”もったいない”と嘆いているのを見かける。
「お!キャメから連絡来た。えーと、弐十ちゃんはバイ〇9でキルは甘い物、キャメは飴だって」
「バイ〇って、弐十ちゃん、」
「次の配信でやりたいんじゃない?」
「配信、できんかな、」
「できるよ」
「せやけど、炎上とか、他にも、」
「できるよ。それを弐十ちゃんが望むんだったらね」
そう。弐十本人が望むんだったらそれができるようにする。俺たちの当分の役割はそれだ。
その為にまずは一旦長期間の休みを全員でとって、再起できるようにする必要がある。
「ボビー、3カ月くらい休もっか、全員でさ」
「全員で?18とか、はとねも?」
「うん」
「どこまで、ちゃんと説明するん?」
ずっと、考えていたことだ。視聴者には機材トラブルで済ませられても身内にはそうはいかない。実際、18やはとねんから連絡が大量に来ている。勿論、シードやりいちょからも詳しい説明を求められている。
本当のことを伝えるつもりは、ない。だから——
「ねぇボビー、」
「おん?」
「俺たちは昨日、”強盗”に襲われた弐十ちゃんを助けに行ったよね」
「え、いや、あ、……せやね。俺たちは強盗にあった。弐十ちゃんの家に強盗が入った」
「そう。だから後で他のみんなにもそう伝えなきゃね」
そう、昨日弐十ちゃんの家には配信中に強盗が入り、それに気が付いたキルちゃんと俺たちが助けに向かった。キルちゃんはその強盗を殴っちゃったから手にけがをしたし、少しだけ警察に注意を受けてしまった。ただそれだけだ。
店に入ってすぐ服屋を探すボビーに安心する。昨日は若干ばぐった挙動をしていたが、今日はもう通常通りに見えた。
「なぁ、ニキこれどう思う?」
見せられた服は確かに弐十ちゃんに似合うだろうが、だいぶボビーの趣味によっていることは明らかで、
「いや、弐十ちゃんならこっちのほうが似合うでしょ」
「お前それ、自分の趣味に寄せすぎなんとちゃう?」
「いや、お前が言うなよ!」
なんて軽いやり取りをしながら結局決まらなくてどちら共かごの中に入れる。そこからはもう各々が弐十ちゃんに来てもらいたい服を選んでかごに入れる。
「結構な量になっちゃったね、」
「まぁ、ええか」
まだ買い物は始まったばかりだというのに両手に持つはめになった袋を見てそう呟く。
階を移動してみんなに頼まれたものと看病に必要なものをボビーに聞きながら買っていく。キルは板チョコで、キャメの飴は特に指定がなかったためいろんな果物の入ったやつにした。
ホテルに戻ってドアを叩く。
「わぁお、随分と大荷物だね」
「まぁ、だんだん楽しくなっちゃった」
キャメの大して驚いてもいない声にそう返して弐十ちゃんの元にずかずかと進む。
「あ、弐十ちゃん寝てる?」
「うん、少し前まで起きてたんだけどね」
声を落としてそう聞くとそう返ってきた。ちょっと残念だけどちょうどいい。
「昨日弐十ちゃんの家に強盗が入ったじゃん」
「…….は?……あぁ、そうだね」
「そのことシードとかに言ってもいいでしょ?だいぶ心配してたみたいだし」
スマホの通知画面を見せる。キャメとボビーはともかくキルちゃんはまだ連絡を見ていないだろうから。
「通知えっぐ!」
「でしょ?キルちゃんのとこにもたぶん行ってるよ」
「マジ?うわ、ほんとだ」
なんも言わないキャメの顔を窺うと、
「そのことなんだけどさぁ、もちろんちゃんと強盗の”処理”したんだよね?」
「うん、ちゃんと”対処”したよ」
こっわ。顔が怖すぎて、てっきり何人か殺てきたのかと思うほど。
顔の怖いキャメとは違ってキルはもう何の感情も抱いていない、というかもうどうでもよさげに見える。きっと、そんな奴にかまっている時間よりも弐十ちゃんに何かしてあげることに時間を、感情を使いたいのだろう。それは、強くつながれた2人の手を見れば明らかだった。
パッパッとシードたちに連絡を返して買ってきたものをそれぞれに手早く渡す。そして、
「じゃーん!」
「何それ」
「弐十ちゃんの着替え買うて来たんよ」
「えー、2人とも自分の趣味に偏りすぎじゃなぁい?」
「でも、似合うでしょ?/や、でも、似合いそうやん?」
「いや、さすがに多すぎだろ」
いや、まぁ、それは確かにそうなんだが、でも、コーディネートっていうのは服まで含めてするものだし、ボビーに至っては合わせるアクセサリーまで選んでいる。けど!
「せっかくのチャンスやん?」
「何のだよ!」
「いつもダサイ弐十ちゃんに自分の選んだ服を着てもらう」
「ん、なんて?誰がダサいって?」
「あ、」
「もー、ニキとせんせーがうるさいから弐十くん起きちゃったじゃん」
「2人が来た時くらいから起きてたからいいよ」
さて、俺たちの中ではもうみんなで暮らすことは決定事項になっているが弐十ちゃんはそうではない。その話し合いの為にも弐十ちゃんにはもう少し眠っていてもらはなくては。
「ボビー、弐十ちゃんもう解熱剤飲んでも大丈夫だよね?」
「んー、ほんとはもうちょっと時間置いた方がええと思うねんけどな……」
ボビーにだけ見えるようにこっそりと花粉症用の薬を見せる。なんかの動画で見たが花粉症の薬と睡眠薬の成分はほとんど同じらしい。だったらこれは睡眠薬の代わりになるはずだ。
「……まぁ、そこまで強いやつやないし、ええか。ほな、弐十ちゃん口開けて」
「はーい」
弐十ちゃんが完全に眠ったのを見て、口を開く。
「ここにしよっかな、ってところがあるんだけどみんなはどう?」
1つの写真を見せた。
コメント
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みぅです🤍🥀 読み終えました……9話、めっちゃ良かった。 ニキとボビーが「強盗」って嘘で統一しようとするシーン、あれがもう、2人の間での暗黙の決意みたいに感じられてゾクッとしました。それぞれの“好き”で選んだ服が山になる買い物シーンは、そんな重さの合間にある優しさが泣けます。 最後の「ここにしよっかな」──もう戻れない場所に踏み出す覚悟がひしっと伝わってきました。 続き、静かに待ってます🌙
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