TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

少女レイ(完結済)

一覧ページ

「少女レイ(完結済)」のメインビジュアル

少女レイ(完結済)

2 - 第2話_踏切へと

♥

32

2022年02月19日

シェアするシェアする
報告する

続き書いていくよん



夏休みを挟んだ九月一日。

いつものように、当たり前に鳴る学校のチャイム。

7月に少し壊れたからか、ノイズが混じったチャイム。

その中で目に付いたのは、

哀……標的の席の百合の花瓶。


仕掛けたのは私だった。


そう、哀が悪いんだよ。

私だけを見ててよ


そこから哀のいじめが始まった。

机の落書き、靴箱にゴミ、

陰口なんて頻繁だった。

哀のジャージを切り裂いたこともあった。


ガラッとドアを開け、教室に入る。

その瞬間、冷水をあびる。

もうこんなの慣れたものだと思いたいが、

全身に受けた冷たさと、周りの嘲笑で泣きたくなる。

思い切って教室を抜け、中庭に行く。

肩を小刻みに震わせながら泣いていると、誰かのスカートが目に留まる。

立ち上がってその顔を見る。

___渚だ。

私の元に来ると、

「大丈夫?」

そう言いながら、私の背中をさする。

それが嬉しくて、誰も救ってくれなかったこの背中が報われた気がして、嬉しかった。

「……ねぇ、哀__。」

渚が私に声をかける。

ふんわりとした穏やかな微笑みの中で、

渚は、


「助けて、欲しい?」


そう言った。蝉の声と、微かな秋の風の微睡みの中で。

今まで闇に包まれていた私の中に、一筋の光が現れたような気がして。

唇を開いた。


「助けて、欲しい?」

そう言った。私のせいで泣いている哀の前で。哀は驚いたような目で私を見つめる。

強い風が吹き、哀の黒髪が揺らめく。

そして、哀はそっと、唇を開いて


「ッ……っ助けて__」


雀のような声で、確かにそう言った。

そう、哀の苦しみ

助けが欲しいんだろう。


哀が私の手を握る。

深海に沈んだような哀の其の手に

そっと口吻(Kiss)をした。



放課後

破れた教科書を、キーホルダーがついた鞄にしまっていると

「ねぇ、哀」

そう言って渚が来る。

「どしたー?」

冗談交じりに返事をすると、


渚が自分の鞄からカッターを取りだした。

「なにしてんの?」

そう言っても返事はない。

途端に、渚が薄笑いを浮かべているのを目にし、英語の教科書を落とす。


瞬間、渚がカッターを振りかざす、

なびいた私と渚の、不揃いのスカート。


ザクりと言う鈍い音。

白い腕から血がにじみでる。

私と哀以外誰もいない教室で

夏の静寂を切り裂くような悲鳴が

こだました。

哀は私の唯一の友達。

だから、哀が私のものにならなきゃ、私の居場所なんて無いんだよ__。



透き通った世界で愛し合えたら__。




さんざめく波音の中で。

かつて私が着けたカッターの跡の腕を掴む。

「__ごめん。」

そう言って、哀は私の元から消え去った。

かつてのその踏切で。

哀が消えた時の思い出がフラッシュバックする。

あの時の蝉の声に

千切れていったような、哀とお揃いのキーホルダー。

夏にいなくなった白い肌の幽霊に

“哀”しいほど、取り憑かれてしまいたかった。

1度、強い風が吹いた。

もう一度踏切を見ると、


哀が立っていた。


膝から下は透明だった。

けど、

白い腕についたカッターの傷跡は、哀自身のもので。

哀が私を指さしていて。

私は、スカートをなびかせて、


踏切へと飛び出した。

この作品はいかがでしたか?

32

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚