テラーノベル
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楽屋のソファで、二人は肩が触れるくらいの距離のまま並んで座っていた。
さっきまでのにぎやかさが嘘みたいに、部屋の中は少し静かで、空調の音だけが一定のリズムで聞こえる。
シューヤはペットボトルを両手で持ったまま、ぼーっと前を見ていた。
「……なんか、まだ頭の中ふわふわしてる」
「余韻ってやつやな。シューくん、今日もええ感じやったで」
「ふふっ……ほんと? タカシくんがそう言うなら、そうなのかも」
そう言って、シューヤは少しだけ体を傾けて、タカシの肩に軽く寄りかかる。
「ん……ここ、ちょうどいい」
「ほんと、シューくんはステージ降りたら甘えん坊さんやな」
タカシはくすっと笑いながらも、そのまま動かずに受け止める。
シューヤは満足そうに小さくうなずいて、しばらく黙り込んだ。
「楽屋ってさ、静かだと眠くなっちゃう」
「なるなる。急にスイッチ切れる感じするわ」
「だよねぇ……」
シューヤは目を細めて、瞬きを何度か繰り返す。
タカシはスマホをちらっと確認してから、またポケットにしまった。
「シューくん、目、半分閉じてるで」
「んー……そぉ?」
そう言いながら、シューヤはあくびを噛み殺すみたいに、口元を押さえる。
そのまま、またタカシの肩に少しだけ体重を預けた。
「……ちょっとだけ、目閉じる…」
「はいはい。集合かかったら起こしたるから」
「ぅん……お願い」
返事は少しだけ、間延びして聞こえた。
シューヤの呼吸は、さっきよりもゆっくりになっていく。
先程までステージ上で沢山の人を魅了していたシューヤの、気の抜けた可愛らしい寝顔に、タカシは顔が綻んだのを感じた。
「……ほんま、気ぃ抜けるわ……」
タカシは最初、ちゃんと起きているつもりだった。
でも、肩に伝わるシューヤの体温と、規則正しい呼吸につられるみたいに、まぶたが少しずつ重くなる。
――気づけば、二人ともそのまま眠ってしまっていた。
しばらくして、楽屋のドアがガチャっと開く。
「おーい、そろそろ――……って」
入ってきたメンバーたちが、ソファのほうを見て足を止める。
そこには、肩を寄せたまま、すっかり寝てしまっているボーカルふたり。
「……なにこの二人」
「寝落ち? しかも一緒に?」
「さすが相棒だわ」
超特急を、自分たちを、後ろから歌で支えてくれているふたりの特別な絆は、計り知れないものであるとダンサーたちも理解していた。
誰かがスマホを構えて、小さくシャッター音がする。
少しして、タカシが先に目を覚ました。
「……ん……?」
状況を把握して、周りの視線に気づいた瞬間、軽くため息。
「……もう。なんで誰も起こしてくれへんねん」
「んぅ……、タカシくん……おはよ……?」
まだ眠そうな声で、シューヤが目をこすりながら言うと、周りからくすくす笑いが起きる。
「仲いいねえ、お二人さん」
「ほんと……よかったね、タカシ。大切な相棒ができて」
タカシは少し照れたように視線を逸らして、シューヤはまだ半分夢の中みたいな顔のまま、きょとんとしていた。
「……なんでみんないるの…?」
「なんでもないで。 ごめんなあ 、起こしてもうて」
「んー?んふっ、大丈夫だよぉ…。やっぱり、タカシくんの隣は安心するね」
その幼さが残る表情に、一連の会話を見ていたメンバーも、「…かわいい」と呟く。
「そんなこと言われると、照れるわあ 」
「へへっ、うれし?」
「うん、うれしいよ」
タカシの大きな手が、セットされたシューヤの髪を撫でる。
満足そうにシューヤは笑った。
ステージの外でも、気づけば隣にいる。
そんな二人の距離感を、メンバーはもう、とっくに見慣れていた。
fin
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