こっちではボツとなった作品を投稿します!
それではどぞ!
黒×水
「なあ、あんた……誰?」
放課後の人気(ひとけ)のない教室。
窓際の席に座るその子は、紺のセーラー服を着て、柔らかい栗色のウィッグを被っていた。
でも、俺の目は騙されへん。
その子が誰か、ひと目でわかった。
「……俺や、あにきや」
声をかけると、その子はびくりと肩を震わせて振り返る。
見間違えるわけがない。
長い睫毛の下、伏せられた瞳。少し上がった口角。
──ああ、やっぱりほとけや。
「……あにき、なんでここに?」
「先生に呼ばれて、忘れ物届けに来ただけや。……それより、なんやその格好」
俺がそう言うと、ほとけは黙って視線を逸らした。
制服のリボンをぎゅっと握り締めて、小さく息を呑む。
そして、ぽつりと答えた。
「文化祭の出し物で……女装カフェ、やるんだ。で、僕はモデルに選ばれて……練習、してた」
「……そっか。でも、ひとりでこんなとこで……寂しないか?」
「誰かに見られるの、ちょっと恥ずかしくて……。でも、どうしても、ちゃんとやりたかったんだ」
ほとけの言葉は、まっすぐで。
その姿は、たしかに女の子みたいやった。
けど、そこにおるのは紛れもなく「ほとけ」で──
俺の大事な、幼馴染や。
「……似合っとるな」
気がつけば、そんな言葉が口から出てた。
ほとけは、驚いたように目を見開いて俺を見つめた。
「……ほんまに、よう似合っとる。キレイや、って思った。……最初、ほんまに女の子か思ったし」
「……嘘、だ。そう言えば、僕が喜ぶと思って……」
「ちゃう。嘘ちゃう。マジや」
俺は前に歩み寄って、ほとけの正面に立った。
そして、そっとその頬に触れる。
「ほとけは、男や。でもな……女装してても、してへんでも、俺にとってはずっと──」
そこで、言葉が詰まった。
ほとけの瞳が、まっすぐ俺を見てたから。
「……あかんな、俺。ほんまに、お前に惚れてまうとこやった」
「……惚れちゃ、ダメなの?」
その言葉は、小さい声やった。
けど、耳元で囁かれるよりも強く、心に響いた。
「僕、男だよ。こんな格好、ただの文化祭のためだし……。でも、あにきが僕を“キレイ”って言ってくれたの、嬉しかった」
「……ほとけ」
俺は、ぐっと拳を握る。
気持ちを、確かめるように。
「俺はな、ずっと分からんかった。お前といると、なんや胸がぎゅってなる。笑ってくれるだけで、嬉しなる。けど、これは“好き”なんかって、ずっと悩んでた」
「うん……」
「けどな、さっき見た瞬間に分かったんや。俺、お前に──惚れてるわ」
静かに、空気が震える。
ほとけの頬が赤くなり、ウィッグの下で耳まで染まっていくのが分かった。
「……僕も、あにきが好き」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がぱんっと弾けた。
ああ、やっと分かった。この気持ちは、恋や。
俺はそっと、ほとけの肩に手を伸ばす。
「ちょっとだけ、目ぇつぶってくれへん?」
「……うん」
ほとけが瞳を閉じた瞬間、俺はその唇にそっと触れた。
柔らかくて、あったかくて。
女の子やない、“ほとけ”のキスやった。
「これでええか?」
「……うん。ありがとう、あにき」
教室の外には、夕日が差し込んでいた。
セーラー服に包まれた姿のまま、ほとけは俺の胸にすっと身体を預ける。
俺はその肩をそっと抱き寄せた。
女装なんて、関係ない。
ほとけは、ほとけや。
そして──俺の、大事な恋人になる人や。
ほら、やっっぱりだめ作…
最近やばい…それでは!
コメント
2件
えまって💎くんが女装してんの絶対かわいいじゃん......w