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『』せりふ 「」こごえ ()こころ
桃 side .
すち の 腕の中 は 、 いつだって 世界 で 一番安全 な 場所 だった 。
『大丈夫だよ 、 らんらん 。 俺 は 絶対 に 、 らんらん の 前 から 居なくならないから』
耳元 で 囁かれた その 低い声 を 思い出す だけで 、 高鳴っていた 心臓 が 嘘 のように 静まっていく 。
俺 は 通学路 の 途中 で 、小さく 息 を 吐き出した 。
社会人 として 働く すち は 、 高校生 の 俺 よりも 少しだけ 大人 だ 。
でも 、 俺 の 前 にいるときは 、 いつも 俺のこと だけ を 見て 、 俺のこと だけ を 最優先 にしてくれる 。
最近 、 学校 の 友達 や 知り合い が 、 まるで 煙 のように 次々 と 消えていく 。
連絡 も 取れず 、 学校側 も 「家庭 の 事情 に よる 転校」 などと 濁すばかり 。
世界 が 少しずつ 削られていくような 薄気味悪い 恐怖 の 中 で 、 俺 を 繋ぎ止めて くれているのは 、 すち の 「居なくならない」 という 約束 だけだった 。
(すち が いる 。 だから 、 大丈夫 だ)
そう 自分 に 言い聞かせながら 、 俺 は 学校 の 校門 を くぐった 。
けれど 、 教室 に 入った 瞬間 、 冷たい水 が 背中 を 駆け下りた 。
自分 の 席 の 斜め前 。
いつも 朝一番 に 『らん 、 おはよ !』 と 声 を かけてくれていた 、クラスメイト の 男子の席 が 、 ぽっかり と 空いている 。
机の上 には 何も 置かれていない 。
嫌な予感 が して 、 俺は 自分の胸 を強く 押さえた 。
嘘だろ 。
まさか 、 また 。
『あ 、 らん 。 おはよう 。 …… あいつ 、 今日 から 来ない ってさ』
別の クラスメイト が 、 困ったように 眉を 下げて 教えてくれた 。
『急に 親の都合 で 遠く に 引っ越す ことに なったらしくて 。 挨拶 も なしなんて 、 水臭い よな』
『…… 引っ越し 、 って 。本当 に ?』
『先生 が そう 言ってたから 本当 だろ 。 まあ 、 最近 こういうの 多い よな』
友達 は 軽い調子 で 席 に 戻っていった 。
エンドレス に 繰り返される 「不自然な消失」 。
俺 の 頭の中 は 、 激しい 警鐘の音 で 満たされていた 。
多すぎる 。
いくらなんでも 、 おかしすぎる 。
ここ 数ヶ月 で 、 俺の周り から 消えた人間 は これで 五人目 だ 。
最初 は 、 部活 で 一緒 だった 先輩 。
次 は 、 よく 通学路 で 一緒 に なっていた 他校の生徒 。
その 次 は 、 SNS で 頻繁 に 絡んでいた 他県のネッ友 。
そして 、 昨日 の 放課後 に 『らん 、 今度 の 日曜 空いてる ?』 と 遊びの誘い を してきた 、 斜め前の席 の 彼。
…… 待て 。
思考 が 、 ドクドク と 脈打つ 心臓の音 と 同期する 。
消えた 五人 の 共通点 。
それは 、 全員 が 「俺 と 親しく 関わっていた」 ということだ 。
しかも 、 斜め前 の 彼 にいたっては 、 昨日の放課後 、 俺 に 楽しそう に 笑いかけてくれた ばかり だった 。
(俺 だ 。俺のせい だ …… っ)
確固 たる 証拠 なんてない 。
でも 、 直感 が 告げていた 。
俺 の 周り には 、 何か おぞましい 『呪い』 の ようなもの が 渦巻いている 。
俺 と 仲良くした人間 、 俺に 近づいた人間は 、 その 呪い に 巻き込まれて 世界 から 消し去られて しまうんだ 。
激しい 罪悪感 と 、 得体 の 知れない 現象 への 恐怖 が 、 俺の身体 を ガタガタ と 震わせた 。
俺 が 誰か と 関わるだけで 、 その人 の 人生 が 壊れてしまう 。
もし 、 このまま 俺 が 誰か と 一緒 にいたら 、 次 は 誰が 消える ?
その瞬間 、 頭に浮かんだのは 、 世界 で 一番 大好きな人 の 顔 だった 。
―― すち 。
心臓 が 、 恐怖 とは 違う意味 で 激しく 跳ね上がる 。
すち は 俺の恋人 だ 。
世界 で 誰より も 俺の近く にいて 、 誰よりも 俺 と 深く 関わっている 。
もし 、 この 『呪い』 の 手 が 、 すち に まで 伸びてしまったら ?
俺 を あんな に 愛して 、 絶対 に 居なくならない と 笑ってくれた すち が 、 明日 、 跡形 も なく 消えてしまったら ―― 。
(それだけは 、 絶対 に 嫌だ 。 すち が いなくなったら 、 俺 は 生きていけない)
放課後 。
スマホ が 震えた 。
画面 には 『すち』 の 文字 。
いつもなら 、 飛び上がる ほど 嬉しい 大好きな人 から の 着信 。
『らんらん 、 仕事 終わったから 今から 迎え に 行くね』
送られてきた 優しい メッセージ を 見つめながら 、 俺の目 から ボロボロ と 涙 がこぼれ落ちた 。
すち に 会いたい 。
すち の 腕に 飛び込んで 、 怖かった と 泣きつきたい 。
でも 、 今の俺 が すち に 近づけば 、 すち を 消してしまうかもしれない 。
大好きな人 を 守るためには 、 俺が すち から 離れるしかないんだ 。
「 …… ごめん 、 すち 。 ごめん …… っ」
俺は 震える指 で 、 初めて すち からの メッセージ を 既読スルー した 。
そして 、 スマホ の 電源 を 完全に切る 。
今の俺 は 、 誰とも 関わってはいけない 。
大好きなすち を 、 俺の呪い から 守らなきゃいけない 。
俺は カバン を 強く 抱きしめ 、 すち が 待っているはず の いつも の 待ち合わせ場所 とは 、 真逆 の 方向 へと 走り出した 。
すち を 失うくらいなら 、 世界中 で 一人きり の 孤独 に 震えるほう が マシ だ 。
涙 で 視界 を 滲ませながら 、 俺 は ただ 、 大好きな人 を 守るため に 走り続けた 。
まさか その瞬間 、 すち が 待ち合わせ場所 の 車の中 で 、 冷え切った 目 で スマホ を 見つめ 、 らん を 孤立 させるための 「次の計画」 を 練っている だなんて 、 夢 にも 思わずに 。
【た】
episode 1 . fin_
コメント
1件
いやあ、めちゃくちゃ切なくて胸がぎゅっとなりました……。「すちの腕の中は安全な場所」っていう冒頭の一文がもう、その後の孤独との落差で刺さるんですよね。自分に呪いがあって、大切な人を守るために離れなきゃって走り出すランの心情、丁寧に描かれていて感情移入しちゃいました。最後のすちの“次の計画”みたいな一文、ゾッとしつつ続きが気になりすぎます!この不穏な空気、すごく好みです🤍
りおん@🎼💚💛愛してる
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