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耳に響いてくる愛おしものを見るような話し声でいざなが言う。
「オマエはずうっとオレのモンだからこれからも大人しくオレ に守られとけばいいんだよ」

そうぎゅっとあたしを抱き締めながら甘く呟くいざなの声は極めて優しく、目を瞑って聞いていると眠ってしまいそうなほどの安心感が漂っている。

いざなが言った言葉の真意は分からないが、いざなと一緒に居られるなら何でもいいし、なんだってする。守られとけと言われるならそれに従うまでだ。意味は分からないが。


「分かった?」  


『わかった!』


不安げに不安定に揺れるいざなの問いかけに、自信に満ちた快活な声でそう返す。


『あたしずっといざなのものでいる』


そう呟くと同時にあたしはギュッといざなの服の襟元を掴み、自身の顔といざなの顔をお互いの皮膚がぶつかるギリギリまで近づける。


「…○○?」


目の前にはきょとんと困惑しきったいざなの表情とその菫色の瞳には緊張を押し殺したように口元を固く結び、いざなの服を握る自分の姿。きっとあたし、過去一緊張している。

ドキドキと普段よりもずっと大きい音をたて羞恥心という攻撃で邪魔してくる自身の鼓動の音を無視し、グッと腕の力を込める。─そして軽く触れあうだけの口づけを落とす。

元々ガラス玉のような大きく綺麗な瞳が、驚きで上瞼を引きつらすように見開かれていく。


『…ちかいのキス。まえにえほんでみたの。』


すぐに唇を離し、弱弱しい声で言葉を紡いでいく。

シンデレラだったか、カエルの王子だったか。どの話だったかは思い出せないが、いざなが買ってくれた色々な色の表紙で飾られた絵本のなかにあった誓いのキスの話。



“死がふたりを分かつまで私は王子様を愛すことを誓います。”



そんな曖昧な記憶を辿りながら恐る恐る、表情を伺うように下から顔を覗き込む。だが、少しうつむき気味ないざなの髪で丁度よく表情が隠れているせいで上手く読み取れない。

やっぱりいやだったかな、嫌われちゃったかな、いざなに嫌われたらあたし、


「…いきなりすんなよクソ可愛いから。オレのこと殺したいの?大好き。」


『…ぇ』


自分がした行動の後悔に対しての不安が目尻に滲み、涙が沸きあがる私を勢いよく抱きしめるいざなに酷く掠れた声が零れ落ちる。何度も好きだと繰り返すいざなの声と、私を抱きしめる優しく強い力に「嫌われていない」という緊張が解け、安堵の吐息が洩 れる。



「…誓い、なぁ。…言質とったから。」

 


うっとりと恍惚に呟かれたその声は、あたしの耳に届くこともなく空気に溶けていった。

えいえんにふたりきりでいようね【黒川イザナ】

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