____2記臆と目覚め
記憶が途切れた後、夢を見た。四人で仲良く話している夢。
中学に入って初めてできた女友達。人見知りが出てしまって孤立していた私に
話しかけてくれたのが佳奈。明るくて優しい性格でみんなから人気がある女の子。
自慢の友達だった。それから、佳奈の紹介で依織ちゃん、涼香ちゃんとも仲良くなった。
佳奈と依織ちゃんは小学校からの仲で大の仲良しなんだそう。
一緒にお昼を食べて。帰りには四人で寄り道してクレープを食べたり。
とにかく楽しかった。そこで幸せだった時の夢は終わった。
重いまぶたを擦り、目を開ける。見覚えのない白い天井。
自分の吐息の音すら大きく聞こえるほどに静まりかえった部屋。
カチ..カチ..という冷たい音だけが響く。
よろめきながらもなんとか立ち上がり、淡いピンク色のレースカーテンをひらいた。
「ああ」
と思わずため息が出る。時計は17:02を指していた。
確か倒れたのは教室で話した時だ。ずいぶん長いこと眠ったらしい。
救急箱や消毒液の入った棚、教師用のデスク…あたりを見渡して保健室かと脳内で納得する。
ソファの上には自分のものであろうリュックと上着、置き手紙が置いてあった。
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三上さんへ
疲れは取れましたか?先生は午後から会議で居ないので、
荷物を持って帰ってください。保護者の方には連絡をしています。
朝倒れたのは疲労と貧血だと思います。大事をとって明日は休むように。
竹内より
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明日が休みだと思うと少し気が楽になったかも。
上着を着てリュックを背負い、保健室を後にした。
夕暮れ時の玄関はオレンジの夕日に照らされていて、運動場ではサッカー部が、
少し離れたコートからはテニス部の掛け声が聞こえてくる。
いつもはホームルームが終わってすぐ帰るからあまり見慣れない光景だった。
道行く人とすれ違いながら帰路につく。自転車には乗る気になれず押して帰った。
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