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#シークレットベビー
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夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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西原衣都
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猫塚ルイ

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昴はその様子を横目で確認しつつ、無言で盗聴器を摘み上げると指先に力を込める。
すると小さく、ミシッという音と共に内部の機械の砕ける音がした。
それから、ぬいぐるみと壊れた機器をテーブルに置いた昴は静かに問いかけた。
「……このぬいぐるみは、どなたからいただいた物ですか?」
羽衣子はピクリと肩を震わせ、視線を落として唇を噛み締めた。
言いにくい――そんな躊躇いがはっきりと見て取れた。
それでも、やがて観念したように小さな声で口を開く。
「……先日、兄から……」
その言葉を聞いた瞬間、昴の表情が僅かに曇る。
「…………そうでしたか」
ぽつりと零れたその一言には何とも言えない気まずさと、重い含みが滲んでいた。
重たい沈黙が部屋の中に落ちていき、時計の針の音だけがやけに大きく響く中、その静寂を破ったのは羽衣子だった。
「あの……京極さんのお知り合いに、盗聴器を探すことを専門としている方が、いらっしゃるんですよね?」
恐る恐るといった様子で紡がれた言葉に、昴は視線を上げる。
「ええ、まあ」
「その方に……来て貰えないでしょうか? あ、今日はもう遅いですから、もちろん明日以降で……。もしかしたら他にも仕掛けられているかもしれないので、一度、調べて貰いたくて……」
そんな不安を押し隠しきれない声で話す羽衣子の気持ちを汲み取るように、昴は間を置かずに頷いた。
「分かりました。でしたら今すぐ呼びましょう。ハッキリさせておかないと暮らすのに不安でしょうからね」
「え? で、でも……」
「大丈夫です、時間は気にしなくて。私が頼めばすぐに来てくれますから」
一切の迷いのない言葉に羽衣子は目を瞬かせた後、少しだけ肩の力を抜いて深く頭を下げた。
「……すみません、ありがとうございます」
「いえ。では今から連絡を取りますね」
言って昴はすぐにスマートフォンを取り出し、ある人物へと電話をかける。
「悪いな、今から一件頼みたいんだが――」
そして短い要件を的確に伝えると通話をすぐに終えた。
「これから来てくれるそうです」
その言葉に、羽衣子は安堵と緊張が入り混じったような表情で頷いた時、思い出したように顔を上げる。
「すみません、あの……希海くんのこと、お迎えに行かなくて大丈夫でしょうか? ここは私一人でも大丈夫ですから……」
気遣うようなその言葉に昴は穏やかに首を横に振る。
「大丈夫です。先程メッセージが届いていて、乙哉の用が済んだみたいなので迎えを頼んでありますから。それに、吾妻先生お一人では不安でしょう」
「京極さん……ありがとうございます、助かります」
昴の気遣いに感謝をしつつ、盗聴器が発見されて以降羽衣子の中にあった恐怖が少しずつ薄れていくのを感じていた。
そのやり取りからほどなくして、インターホンが静かに鳴り、昴の知り合いである水無瀬 亨が到着した。
室内に入ると、亨は無駄のない動きで調査を始め、手にした専用機器を使いながら家具の裏や壁際、コンセント周り、更には僅かな隙間に至るまで丁寧に確認していく。
その様子を羽衣子はソファに座ったまま固唾を呑んで見守っていた。
やがて一通りの確認を終えた亨が静かに口を開く。
「……一通り見ましたが、見当たりませんね」
その一言に羽衣子の肩から一気に力が抜けた。
「本当ですか……?」
「ええ。心配しなくても大丈夫ですよ」
安心を促すその声に羽衣子の表情にもようやく安堵の色が浮かぶ。
「悪かったな、いきなり呼び出して」
「いえ、昴さんの頼みですから」
やり取りを見ていた羽衣子は遠慮がちに口を挟んだ。
「あの、代金はおいくらでしょうか?」
「昴さんの知り合いの方から代金なんていただけませんよ!」
「え? で、でも……」
「吾妻先生、彼の言う通りです。金銭の心配は要りませんから」
昴が穏やかにそう言い添えると、亨も軽く頷いた。
「それじゃあ、俺はこれで失礼しますね」
「あの、本当にありがとうございました」
結局、料金の支払いは必要ないまま亨はその場を後にした。
再び部屋には羽衣子と昴の二人きりになる。
「……すみませんでした、こんな時間まで付き合ってもらってしまって……」
時刻は既に夜の十時を回り、申し訳なさから羽衣子は視線を落とした。
しかし昴はいつもと変わらない柔らかな笑みを浮かべている。
「そんなこと気にしないでください。ひとまず、他には仕掛けられていないことが分かって良かったです」
その言葉で羽衣子の胸がじんわりと熱を帯びた。
(京極さんは……どうしてこんなに……)
言葉にできない感情が静かに込み上げてくる。
「それでは、私はそろそろ」
「今日は本当にありがとうございました」
玄関まで見送りながら羽衣子は深く頭を下げる。
扉を開けたところで昴はふと振り返った。
「……疑いたくはないですが、実際に盗聴器が仕掛けられていたのは事実です。金曜日に限らず、お兄さんと会う際や連絡が来た時は、くれぐれもお気をつけください」
「……はい」
「それでは、また明日」
扉が閉まる音が、やけに大きく響く中、羽衣子はその場に立ち尽くす。
「……盗聴器を仕掛けるだなんて……理由があったとしても、やっちゃダメだよ……」
震える声が、ぽつりと零れる。
「どうしてなの? お兄ちゃん……」
答えの返ってくるはずのない問いだけが静かな部屋に残り続け、羽衣子は暫くその場から動くことが出来なかった。
コメント
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うわ……ついに盗聴器の主が兄さんだったのか。羽衣子先生の「どうしてなの、お兄ちゃん」が切なすぎるよ……。でも昴くんがすぐに亨さん呼んで、先生の不安をちゃんと取り除いてあげたの、すごく優しいし頼りになるなって思った。兄妹っていう近い存在だからこそ、裏切られた時の傷は深いよね。この静かな余韻がたまらないです🥀