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42 ◇時すでに遅し
景子とは結婚後2年経っても3年経っても子ができなかった。
5年目に検査をしてみると景子の方が不妊症であることが分かった。
元々景子は子供が苦手だし、仕事のことを考えるといなくていい、
欲しくないというスタンスではあった。
けれど実際に妊娠して胎動を聞くようになれば子への気持ちも
変わると、俺は勝手に思い込んでいた。
それは前妻の亜矢子が息子をとてもかわいがり大切にしていたのを
見ていたからだ。
検査の結果にも全く動じる様子がなく、俺は徐々にこの辺りから
景子に対して強い不信感を持つようになった。
もしかしたら彼女は結婚前から自分の不妊のことを、実は知って
いたのではないか……ということに。
知っていながら俺には意図的に隠していたのではなかろうか。
知っていて隠していたのなら、それは俺に対して不誠実なことでは
ないのか。
検査をした当時より今のほうがよけいに腹立たしく感じるのには
理由がある。
42-2.
再婚当初、自分の子がひとりいることもあり、子供ウンヌンは
そんなに大きな問題とは捉えてなかった。
はっきり言えば、子供のことなど気にも留めていなかったのだ。
なのに、いざ景子の不妊症が分かると気持ちに変化が出てきた。
結婚して数年後、周りの既婚の同僚たちからよく娘や息子の話題を
聞かされるようになったこと、そして現在アラフォーに突入したことなど、
ひとつのことではなくていくつかのことが重なり、子供というキーワードが
頭から離れなくなっている。
今の妻との間にはもう子供は望めない、そう思うと離婚して亜矢子の元に
置いてきた子のことが気に掛かってしようがない。
だがそれも時すでに遅しの感が半端ない。
自分は何と愚かな7年を過ごしてきたのだろう。
元妻が息子にとってあなたはいつまで経っても父親なんだから
私のことは気にせず会ってやってほしいとあんなに再三に亘り
お願いされていたのに。
俺はいつでも会いに行ける気軽さと、子供にかき回されずに
済む今の妻との生活に夢中で、一度も会いに行っていない。