少し長いです。
橙色の照明がベッドサイドのテーブルの上で光る。部屋全体を照らすには心許なく、せいぜいベッド脇を照らせるぐらいだ。肝心の人がいるベッドの上は薄暗く、互いの表情も見えづらい。
平均より大きな2人をのせたベッドは身動きを取るたびに軋んで、ギシリと音を立てる。
「緊張してる?」
『してない。別に、全然平気だし。』
薄明かりの下でもわかってしまうほど奏斗の顔は緊張して強張っている。見慣れているセラフの顔を見ることができず、視線は左右へ泳いでいる。すると、真上にあったはずのピンクブロンドの髪が奏斗の顔のすぐ横まで来たと思えば、次に長い腕がベッドと背中の間に入り込んで、ぎゅっときついぐらい抱きしめられた。
「…ね、俺さ、緊張してるんだ。わかる?心臓早くなってんの」
抱きしめられているせいで密着したセラフの胸からドクドクとたしかな心臓の拍動が奏斗の方へ伝わってくる。
「奏斗も心臓早いね」
『…ん……』
気恥ずかしくて、言葉がのどにつっかえて出てこず、返事の代わりにセラフの背に腕を回して同じように抱きつく。程よく鍛えられた肩に額を寄せると、奏斗は自分とセラフの心拍を感じながらただただじっと待った。
『っ、あ…、……』
すると、背中に回されていたセラフの手が、服を捲りあげ、直接奏斗の肌へ触れてくる。思わず気の抜けた声が出てしまう。筋張った指は少し冷たくて、本当に緊張していることが読み取れる。
背中から仙骨部までゆっくりと手が動き、撫でられる。そのたびに肌がぞくりと粟立つような感覚がして意図せず足が小さく跳ねる。
「びっくりしちゃった?ごめんね、手ぇ冷たくて」
耳元で囁くように喋るセラフの声はいつになく優しくて、これからされるであろうことを想像させるに易かった。
背中を撫でていた片方の手が奏斗の胸までたどり着き、先端にある乳首を柔く指先で押しつぶす。ふにふにと何度か感触を楽しんだセラフは頭の位置を奏斗の胸元まで下げ、ふっくらと主張するそれに、ちゅっ、とわざと音をたてて吸い付く。
『ひっ…ぁ…、うぅ゛ー……』
淡く痺れるような感覚に奏斗が拒否をするように体を縮めても、それに構うことなくセラフはさらに手と口で胸元への愛撫を続ける。指先で捏ねたり摘んでみたり、吸うだけではなく舌先で舐めてみたり。器用に緩急をつけて可愛がっていると、奏斗の太腿が内側へ寄せられもじもじと動いていることに気がついた。
セラフは頭の中で1つの仮説を立て、背中を撫でていた手を奏斗のズボンの中まで滑り込ませ、尻へと愛撫の標的を変えてみた。
『ん、ぁうっ!?…ちょ、っと、急にそっちはやめてよ、えっち!』
「ふふ、触って欲しそうだったから触っちゃった。」
普段の声からは想像がつきにくいぐらい高めな声が奏斗の口からあがる。仮説がうまくいったという嬉しさを隠すことなくセラフは奏斗へ笑みを向けると、頭を軽く叩かれた。が、臆することなく再び奏斗の耳元まで近づき、
「これからもっとえっちなことするのに大丈夫?」
と、囁いた。反応を待たず、愛撫を続けると何回か奏斗から抗議の声が飛んでくるが、気にせず下準備へ勤しむ。決して決定的な刺激は与えずに、且つ、ほどよく気持ちよくさせるという高難易度なミッションだがセラフは順当にこなしていく。尾骨周囲をくすぐるように手を滑らせ、臀部の肉を揉み解していく。
「気持ちいいねぇ」
『う、ん…っ、あ…セラ、』
「ん?どしたの」
『………も、いれて、…っ』
「だーめ、まだ。」
セラフが奏斗と目を合わせると、ぐっと目に力が入って潤んだ瞳から涙が溢れてきそうだった。すんでのところで耐え、セラフを睨む奏斗。正直今の奏斗に睨まれたところで怖くはない。
おそらく身体の中に快感が溜まるだけ溜まって、外に出せないのが嫌なのだろう。腰が浮いて、果てたいと揺れ動いている。
「一回イっていいよ。気持ちいいのいっぱいだもんね」
『あッ…!ぅあ、…んん゛っ…!ぁ、ぃ……ん゛ぃ、〜ッ!』
突然今まで放置気味だった陰茎がセラフの大きな手に包まれ、擦られ、奏斗の腰が跳ねる。そしていくらも経たずに白濁が陰茎から飛び出すと奏斗はくたっとしてベッドへ沈む。
セラフは奏斗の腹部に飛び散った白い体液を指で掬って、ぺろりと舐めてみる。柑橘に似た苦味と生物特有の若干の生臭さが口の中に残り、美味しいものではないなと思った。
「苦っ」
『なんで舐めてんの…ばか……』
完全にベッドへ体を預けて弛緩していた奏斗が手の力だけでセラフの頭を軽く叩く。2回目だ。しかし、今度は叩いて終わりではなく奏斗の手はセラフの髪を撫で、頬を包むように添えられた。セラフは頬に当たる温みに、甘える子犬のように擦り寄った。
『ふふん、犬みたい、セラフ。…僕のペットだ。』
「俺、ペットなの?じゃあ、噛まれないように気をつけなきゃね、ご主人サマ」
頬に当たる奏斗の手を取り、掌へキスをする。さほど驚く様子もなく奏斗は手近な場所へ準備した避妊具を取った。
『あのねぇ、セラフ。僕、自分でしてきちゃったから、もういいよ。』
「え?自分で、してきたの?」
『そう!……だから、もう、準備できてる、から、い、れて…いいって、言ってんの…』
だんだんと歯切れの悪くなっていく奏斗の発言にセラフは驚かされ、一度動きを完全に止めざるをえなかった。じわじわとお互いに顔が赤くなっていくのを感じて、目を逸らしてしまう。
「奏斗、確認してもいい?」
『へ?…い、いいけど…別に……』
どこから取り出したのかセラフは自身の手にローションを垂らしながら問う。そして、奏斗にうつ伏せになるように促して、纏うもののないもっちりとした尻がこちらを向く。と、他には目もくれず、後孔へ指を突き立てると反発力は感じるものの、難なく入っていく。中はすでに柔らかく、とろりと蕩けてしまいそうに温い。入れた指を少し動かすだけで大げさなまでに奏斗がびくつく。
「本当に準備してきたんだ、やわこい」
『んっ…、そうだよ……ぁッ、っ、』
「ふーん……。」
奏斗には今セラフがどういう感情なのか読み取れなかった。うつ伏せになったせいでセラフの顔は見えない。そもそもこの男の感情は分かり辛いのだ。
当のセラフは柔い中から一度指を引き抜き、奏斗の手から、持ったままにさせた避妊具を取ると包装を破いて、自身へと被せようとしていた。ところがサイズが合わない。
「…奏斗ー。これちっちゃぁい」
『え?あ、待って、じゃあ買ってこよ、待ってて…』
「行かないで。…このままじゃだめ?」
『このままって……』
ベッドから降りようとした奏斗が呆気に取られ、ぽかんとしている間にセラフは奏斗へ伸し掛かり首根っこを捕まえる。危機感を覚え、奏斗が逃げようと身動ぐがもう遅い。
ぴたり、と先端と後孔の照準が合わせられ、ゆっくりゆっくりと濡れた媚肉を押し広げてセラフ自身が進んでいく。
『ッふゃ、あ゛っ?!あっ、あ、だめ…ッ!』
「すご……」
まるで底なし沼にでも踏み入れたかのようにずぶずぶと奥へと入っていく自身を眺めるセラフ。だが、沼と違うのはここには入ってきたものをぎゅうっと締め付けて離さないというギミックがあった。
べしゃりとその場に崩れ落ち、シーツに強くしがみつく奏斗の最奥まで容赦なく挿れていくセラフ。とんっと確かな感覚が先端に伝わるとようやく動きを止める。
「あー…入っちゃったねぇ」
『はっ…は、ぁ……はッ、…』
腹部が圧迫され呼吸がうまくできず、必死に酸素を吸おうとやや過換気気味になっている奏斗。呼吸の度にセラフ自身をきゅう、きゅうと締め上げてくる。すぐに動いてしまいたくなる衝動を抑え、セラフは奏斗の首元から後頭部を掴み直し、キスをするために顔を自分の方へ向かせる。
「苦しい?」
『は、ひ…っ、くる゛、しいに、きまってんだろ…ッ!……ん、んむ゛ッ…、ぅ…』
「ん〜……んっ、ふ…、」
舌と舌を絡み合わせ、お互いの唾液が口内で混ざり合う。セラフが唇で奏斗の舌を食むと仕返しとでもいうように深く口付けられる。興奮していくほどに粘度を増し、長くなっていくキスを終えると、どちらのものともつかない唾液が口の端へ垂れる。濡れて、艶のある奏斗の唇を指で拭いながらセラフは言った。
「きもちよさそーな顔。キス好き?」
『ふぁ…、ん…せらの、やさしいから好き……』
セラフは奏斗の顔を両の手で包み、またキスをすると為すがままに受け入れられた。ちゅっ、と軽いリップ音がしたかと思えば深く口付ける。そうやってしながら、セラフは腰を動かし始めた。あくまでゆっくりと、決して激しくはしないように。
『……ん゛っ?!ま、まって、せら、まっ…ぅ゛む…ッ、ぅ、〜〜っ!』
それでも突然の刺激に奏斗は驚き、一度セラフから口を離す。が、頭ごと引き戻され再び息まで飲み込まれてしまいそうなぐらい深いキスをされる。合間にくぐもった声が漏れては消えていく。
しばらく上からはキスをされ、下からはゆったりとした律動を繰り返され、初めてのことに奏斗は混乱していた。頭の中が真っ白になってしまいそうな時、ようやく上が解放された。その代わり下からくる律動が幾分か強くなり、押し出されるように奏斗の口から控えめな喘ぎ声が出る。
『あぅ、う…っ、ん゛…、んぅっ…ぁ、あ……ひ、っく…』
とろりと溶けた青の瞳はセラフを映していない。釘付けになったかのように結合部を見てしまっている。自分の技術に夢中なっているといえばそうだが、こうなってしまうのはセラフ本人としても面白くはない。
奏斗の奥まで自身を埋めるとぴたりと動きを止める。
「奏斗、こっち見て。俺のこと見て。」
『へ……?せら、…なに、ど、ゆこと……??』
意味がわかっていない奏斗に構うことなくきつく抱きしめ、うなじや鎖骨、胸などにキスをする。わざと強く吸い付き、痕を残して。
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